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『適正値ゼロのリミィジュ』(完全版)  作者: 柑橘みかん


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第三十三話 秘密の図書塔

闇学園の学園長が動き始めた。


その情報は学園中に広がったものの、詳しい内容を知る生徒はほとんどいなかった。


だから表面上は普段通りの日々が続いている。


授業。


訓練。


友達との会話。


笑い声。


けれど、どこか皆が落ち着かない。


嵐の前の静けさのようだった。



「で、なんで私が呼ばれてるの?」


放課後。


ノエリアは本館最上階の廊下を歩いていた。


隣にはベル。


『ぼく知らない』


「絶対嘘」


『ほんとだもん』


怪しい。


ものすごく怪しい。



昼休みに突然伝令妖精が来たのだ。


【学園長室へ来るように】


という内容だった。


もちろんノエリアは慌てた。


何かやらかしたかと思った。


だがグレタも首を傾げていたので、そういうわけではなさそうだった。



学園長室。


ノック。


「入りなさい」


ゴードンの声。



中へ入る。


すると予想外の人物がいた。


エイミー。


アンナ。


ウィリアム。


そしてトレバー。


生徒会全員だった。



「え」


ノエリアが固まる。


「なんで私?」


アンナが笑う。


「うちらも聞きたいわ」



どうやら生徒会も同じように呼び出されたらしい。


ノエリアは少しだけ安心した。


怒られるわけではなさそうだ。



ゴードンは机から立ち上がる。


そして。


珍しく真面目な顔だった。


「ついてきなさい」



全員が顔を見合わせる。



学園長室の奥。


本棚が並ぶ壁の前。


ゴードンが杖を振る。


すると。


本棚が動いた。



「ええええ!?」


ノエリアが叫ぶ。


「隠し通路!?」


『王道!』


ベルが喜ぶ。



本棚の奥には階段があった。


下へ続いている。


誰も知らない秘密の場所。



エイミーですら驚いていた。


「初めて見ます」


「そうじゃろうな」


ゴードンは笑う。



全員で階段を下りる。


かなり深い。


石造り。


古い。


空気も違う。



やがて広い空間へ出た。


そこは巨大な図書塔だった。



「すご……」


ノエリアは息を呑む。


天井が見えない。


本棚が何十層にも積み上がっている。


光る本。


浮かぶ本。


妖精が管理する古文書。


まるで伝説の図書館だった。



「ここは」


ウィリアムが呟く。


「学園の禁書庫」



ゴードンが頷く。


「正確には記録保管塔じゃ」



十五年前以前。


さらに昔。


歴代グランドリミィジュ。


妖精界。


世界の歴史。


全てが保管されている。



ノエリアは圧倒されていた。


こんな場所が学園にあったなんて。



そして。


ゴードンはある場所で立ち止まる。


中央。


巨大な水晶。


その周囲には複数の古い肖像画。



一枚の絵。


そこには金色の衣装を纏った少女が描かれていた。


美しい。


優しい笑顔。



ベルが息を呑む。


『……』



ゴードンが言う。


「初代グランドリミィジュ」



ノエリアは見上げる。


なぜか。


胸がざわついた。



その少女の隣には。


小さな妖精。



ベルに似ていた。



「ベル?」


『うん』


ベルは珍しく静かだった。



ゴードンは続ける。


「グランドリミィジュとは何か」


「なぜ十五年間現れなかったのか」


「そして」


そこで。


ノエリアを見る。



「なぜお主が選ばれたのか」



空気が変わる。


ノエリアの心臓が跳ねた。



エイミーも表情を変える。


アンナも。


ウィリアムも。



ゴードンは杖を水晶へ向けた。


光が広がる。



映像。


古い記憶。



そこに映ったのは。


七歳のノエリアだった。



「え……」


本人が一番驚く。



幼い自分。


笑っている。


今では考えられないくらい自信満々だ。



その隣には。


ベル。



『懐かしい』


ベルが小さく呟く。



ゴードンは静かに言う。


「お主は七歳の時」


「一度だけ」



映像の中で。


幼いノエリアが光に包まれる。



周囲が息を呑む。



その光は。


今まで誰も見たことがないほど美しかった。



金色。


虹色。


暖かい輝き。



エイミーが立ち上がる。


「まさか……」



ゴードンが頷く。



「覚醒前のグランドリミィジュじゃ」



静寂。



ノエリアは言葉を失う。



自分が?



適正値ゼロの自分が?



ずっと自信がなかった自分が?



そんなはずがない。



でも。


映像は嘘をつかない。



ベルが悲しそうに笑った。


『ずっと言えなかった』



ノエリアを見る。



『ぼくが待ってたのは』



『ノエリアなんだ』



その瞬間。


ノエリアの心の奥で。


何かが静かに動き始めた。

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