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『適正値ゼロのリミィジュ』(完全版)  作者: 柑橘みかん


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第三十一話 Cクラスの教室

防衛戦から一週間。


グランドフォール学園は少しずつ日常を取り戻していた。


壊れた施設は修復され、警戒態勢は続いているものの、生徒たちは再び授業や訓練に励んでいる。


そしてノエリアたちにも、大きな変化があった。


Cクラスへの正式編入である。


朝。


新しい教室の前で、ノエリアは立ち尽くしていた。


「入りたくない……」


『また始まった』


ベルが呆れる。


「だって!」


目の前の扉には金色のプレート。


【Cクラス】


今までいたDクラスより広い。


生徒数も多い。


知らない人ばかり。


緊張する。



ハイジはすでに中へ入っていた。


「早く来い」


「無理」


「来い」


「無理」


「来い」


「無理」


結局引きずられた。



教室へ入った瞬間。


視線が集まる。


ノエリアの心臓が止まりかけた。


「うわ」


「本物だ」


「ゼロの子」


「防衛戦で活躍したって」


聞こえている。


全部聞こえている。



「帰りたい」


『三回目』


ベルが数えていた。



すると。


一人の女子生徒が近づいてきた。


茶色のショートボブ。


元気そうな雰囲気。


「ノエリアだよね!?」


「ひゃい!」


また声が裏返る。



少女は気にしない。


「私ミレナ!」


ノエリアは思い出した。


昇格前に戦った相手だ。



「あ」


「覚えてる?」


「うん!」


「よかった!」


ミレナは笑う。


屈託がない。


負けた相手なのに嫌な空気が全くなかった。



「今度は同じクラスだね」


「そうだね」


「よろしく!」


握手を求められる。


ノエリアも慌てて握り返した。



それを見ていた周囲の生徒たちも少しずつ集まってくる。


「防衛戦どうだった?」


「本当にエスター見たの?」


「変身見せて!」


「それは無理!」


一気に囲まれた。



ベルが笑う。


『人気者』


「やめて!」



意外だった。


もっと嫌われると思っていた。


注目されるのは苦手だ。


でも。


悪意はない。


みんな純粋に興味を持っているだけだった。



その頃。


Bクラス。


ジェイドは静かに窓際へ座っていた。


周囲の女子生徒たちが何か話している。


「最近よくD……じゃなくてCクラス行ってるよね」


「誰かいるのかな」


「ねー」



ジェイドは聞こえていないふりをした。


だが。


少しだけ耳が赤かった。



ダニーはそれを見逃さない。


「へぇ」


「黙れ」


「何も言ってない」


「顔が言ってる」



いつもの二人だった。



一方。


生徒会室。


エイミーは書類を整理していた。


防衛戦後の報告書。


結界修復計画。


警備再編。


仕事が山積みだった。



アンナが紅茶を置く。


「休んだら?」


「まだ」


「またそれや」


アンナはため息をつく。



ウィリアムも頷いた。


「会長」


「なに?」


「少し無理をしています」


エイミーは苦笑する。


図星だった。



だが。


止まれない。


昨夜も夢を見た。


幼い頃のエスター。


笑っていた姉。


手を伸ばしても届かなかった。



エイミーは机の引き出しを開ける。


中には小さな髪留め。


幼い頃にエスターからもらったものだった。



「お姉ちゃん」


小さな呟き。



その日の放課後。


ノエリアたちは再び自主練習をしていた。


場所は西訓練場。


いつものメンバー。


いつもの時間。



ハイジが突っ込む。


ダニーが避ける。


フィアが笑う。


ジェイドが止める。


ノエリアが巻き込まれる。


いつもの流れ。



でも。


少しだけ違った。


今は全員が前より強い。


前より連携できる。


前より信頼している。



「ノエリア!」


ジェイドが声を上げる。


「右!」


「うん!」


反応する。


以前より速く。


自然に。



連携が繋がる。


フィアの補助。


ダニーの援護。


ハイジの突破。


ノエリアの追撃。



グレタが遠くから見ていた。


少しだけ微笑む。



この子たちは変わった。


特にノエリア。


能力だけじゃない。


人との関わり方が。



そのときだった。


空から一羽の伝令妖精が飛んでくる。


真っ直ぐ生徒会室方向へ。



グレタの表情が変わる。


嫌な予感。



数分後。


学園中へ緊急招集がかかった。



中央広場。


全校生徒集合。


教師陣集合。


生徒会集合。



ざわつく生徒たち。


ノエリアたちも駆けつける。



そして。


広場中央にはゴードン学園長が立っていた。


その顔は珍しく厳しい。



静寂。



ゴードンが口を開く。


「隣国のリミィジュ学園が襲撃された」


空気が凍る。



誰も声を出せない。



リミィジュ学園。


この国だけではない。


世界には複数の育成機関が存在する。


その一つが。


壊滅した。



ゴードンは続ける。


「敵は闇学園」


ざわめき。



「そして」


ゴードンの声が低くなる。


「生存者の証言により判明した」



全員が息を呑む。



「敵の学園長が動き始めた」



ベルの顔色が変わった。


エイミーの瞳も揺れる。


ゴードンだけが真っ直ぐ前を見ている。



物語はここで新たな段階へ入ろうとしていた。


今までの敵は前哨戦。


カリンも。


エスターも。


まだ駒に過ぎない。



本当の黒幕が。


ついに姿を現そうとしていた。

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