表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
9/31

マンドレイクとメリッサの出会い

 その後、食事をとりながらの話題はメリッサの相棒、

マンドレイクの事になっていた。


「……そう。マンドレちゃん、最初は…細い棒みたいだったの?」


 シラー王妃が驚いた顔をしてメリッサとマンドレイクを交互に見た。

「私が子供の頃、学校帰りの道ですれ違った馬車から放り投げだされたのが、

口をロープで縛られたマンドレちゃんで…」


 その話にフェンネルが眉間にしわを寄せて不機嫌そうに話した。


「昔、マンドレイクの薬効の話題で乱獲騒ぎがあった。

おそらく薬に使えないと判断して、放り投げ捨てたんだろうな」


 その出来事に、シラー王妃は悲しそうな表情を浮かべた。


「私、この子が何かは分からなかったけど、植物だし、

その場でこのカードの力を借りて水を与えながら連れて帰ったの」


 メリッサは水を灌ぐ絵を模した星のタロットカードを見せて話を続けた。


「その後に私が帰ってきて、じゃあ植物なら太陽の光も必要じゃない?って、

この力も使ってみたりしたの」


 ローズマリーがその話に続けて自分の所持する太陽のタロットカードを

取り出し見せた。


「………」


 フェンネルとオレガノがそんな事に使うタロットカードなのだろうか…

という顔をしながらも話は続いた。


「その後、ゼラニウム神父の作る聖水なら、命が助かるんじゃないかって

聖水に漬けてみたり、色々な事をしていたら

ゼラニウム神父に見つかっちゃって、怒られたんだけど…」


「それはそうだろ?マンドレイクに叫ばれたらまだ子供のお前ら、

下手したら死ぬぞ?」


フェンネルが当時のゼラニウム神父を想像し、同情して答えた。


「でもね。何故かその時この子意識を取り戻して、

私の名前を呼んでくれたの。メリッサって。」


 メリッサは、今は大切な家族となっているマンドレイクを愛おしそうに撫でた。


 マンドレイクはローズマリーがくれた土に潜りながら

当時の事をぼんやりと思い出し、話しだした。


「俺、もう死ぬって思ってたんだけど抱きかかえられて、

すごく体に染み渡る水とあったかい光を浴びたのだけ覚えてて。

ここが天国かなって思ったら教会にいた。

俺を抱えて助けてくれたのがメリッサっていうのだけわかった。

何故か人の言葉もしゃべれる事に気付いてメリッサの名前が声になって出た。

俺もなんで今、人の言葉が喋れたり、理解出来ているのかはわからないんだ」


 マンドレイクは周りが深刻そうな顔をし始めたので、にやっとし、いじわるそうに話を変えた。


「今、聖水でみっちみちの俺が叫んだら、

オリーワじゃないけど国どころか世界も滅ぼせちゃうかもね」


 その言葉に、咄嗟にフェンネルが前に出て身構えた。


「さすが騎士団長だな! 冗談だよ~、

俺メリッサ大好きだからそんな事できないよーだ」


 マンドレイクの悪ふざけに、メリッサがマンドレイクをつねった。

「マンドレちゃん、謝りなさい」


 メリッサが珍しく見たことがない険しい表情を浮かべたので

マンドレイクは落ち込んでしまった。

そこにシラー王妃が間に入り、メリッサを諭した。


「この子、皆と同じ事が出来るようになりたいのよ。…私と同じ様に。

貴方も人間と同じこの料理を皆と一緒に食べたいわよね。

ここで今、貴方だけが食べられないのだもの」

 

 シラー王妃の言葉に、メリッサとローズマリーは

子供の頃からゼラニウムと家族三人で食事をとりながらも横で土に潜り込んだり、

水の入った花瓶の中で横にいたマンドレイクの姿を思い出し、

一緒だと思っていたマンドレイクを実は独りにしてきてしまっていた事に

気が付き、マンドレイクを心配そうに見つめた。


「メリッサ、ローズマリー。大丈夫だよ!

お前らは俺を化け物扱いしない、いつもそばにいてくれる優しい人間だから。

それにしてもそこの騎士団長は臆病でだめだと思うぞ?シラー?」


 口が達者なマンドレイクに、シラー王妃は穏やかな笑顔のまま

優しくその体を撫でた。


「何とでも言え。俺は陰で親の七光りやら散々言われても、

出来る努力は何でもしてきている、他人の評価は受けない」


 フェンネルが珍しく愚痴をつぶやいた事に驚いたシラーだったが、

少し嬉しそうにささやいた。


「フェンネルがそんな劣等感を抱いているのには気付かなかったわ。

貴方はアルニカが憧れている男性でもあるのに。

そして誰が何と言おうともこれからのシャトラナをアルニカと共に

歩んでいける人だと私は思っていますよ。シッサスを目指すのではなく、

変わらず自分らしく生きなさい? あなたにはあなたの良さがあります」


 シラー王妃の言葉にフェンネルが頭を垂れると、この場にいた全員

シラーが自分達の国の母である事に改めて気付いた。


「シラー様、私マンドレちゃんがきっかけで、

薬学に興味を持つ事になりました!」


「私も、マンドレちゃんがいたから、栄養学に興味を持って…

この子がいなかったら今この仕事に就いていません!」


 メリッサとローズマリーが立て続けに息せき切って懇願するように

シラー王妃に話し出した。


「シラー様。この子の身体の薬効に寄って、

シャトラナの人々の助けとなった実績が…」

オレガノまでが、何かを懇願するような言葉を繋げた。


 それを聞くと、シラー王妃は微笑みを浮かべながらも

一人の女性から真剣な眼差しの国母の表情へと変わった。


「私は何かをきっかけに、それぞれが歩む道を得たあなたたちを誇りに思います。

どうかその力、アルニカに貸して頂戴ね」


「そして、マンドレちゃん。貴方の身体が持つ、

薬効の一部が私を助けてくれました。

本当にありがとう。貴方のおかげで私はこれからもリハビリを頑張れます」


 シラー王妃の感謝の言葉に、マンドレイクは嬉しそうにシラー王妃に頬ずりをし、そしてフェンネルの足元に飛び降り、フェンネルを見上げた。


「…ごめんフェンネル。お前は臆病者じゃない、強い奴だ。

だって、さっき俺の言葉を聞いた途端、咄嗟に皆を守ろうとした」


 真剣な表情のマンドレイクにフェンネルは少し笑顔を見せた。


「俺たちの使命だからな。有事の時、俺たち騎士団は君主の為に最前に立つ。

元々そういう役割なんだよ。

……この力を振るう事がない事が一番いいんだけどな。

逆に、平時のこの状態を維持していくのはアルニカの使命になる。

あいつは騎士団と違ってこの国に一人で上に立つ立場だ。

強い弱い、そんな問題じゃなく…」


 反省して静かに頷いたマンドレイクを、今度はメリッサが抱き上げ話を続けた。

「マンドレちゃん、さっきはつねってごめんね。

でも、貴方がそんな事をしたら相手もマンドレちゃんの身体も

消えてなくなってしまうよ?誰もが悲しい思いをするだけだから絶対にそんな事はしないで…」


 メリッサはそれを想像し、悲しげな表情を浮かべたまま

マンドレイクの身体を強く抱きしめた。


「…それにしても、もうちょっと工夫した名前を付けてやれなかったのか?」

フェンネルがメリッサに名付けのセンスを疑った眼差しを向けた。


 メリッサは当時の事を思い出しながら、眉間にしわを寄せ考え込み答えた。


「だってあの頃はまだ私も小さかったし、とにかくマンドレちゃんの命を

繋げたかったから名前を付ける事とか思ってもいなかったし…。

……んんー…マンドレイクでしょ? …ドレ…?…レイ……

『ドレイク?』」


 ふとメリッサが思い付きでつぶやくと、マンドレイクはキラキラした表情で

拍手した。


「ドレイク! うん、それかっこいいぞ、メリッサ!」

「えー?もうマンドレちゃんはマンドレちゃんでいいよー?」

「うん、私もそう思うー」


 メリッサとローズマリーがその名前を却下したので、

マンドレイクは口をひん曲げた。


「まあ、十年以上もその名前で言い慣れて来ているのだから仕方ないだろ」

フェンネルもその意見に続いた為、シラー王妃が間に入りオレガノに提案した。


「じゃあ、私とオレガノはドレイクちゃんと呼びましょうか。

出会って間もないですからね」

「そうですね、私のこの手の荒れもドレイク様の薬効のおかげで

良くなっております」


マンドレイクはオレガノの感謝の言葉と様付けに、照れて頬を赤く染めた。


「ドレイク様も、私たちと何か同じものが食べられものがあると良いのですが…」

「うーん、マンドレちゃんと同じ食事…? 水…位しか…」


 メリッサとローズマリーの考え込む姿にマンドレイクは満足げに答えた。

「俺はいつもの栄養だけで大丈夫だ!それよりメリッサは人間なんだから

ちゃんと食事を採らないとダメだぞ!」


 マンドレイクはついメリッサが普段食事をおろそかにしている事を

ポロっと口に出してしまった。


「またメリッサ偏食してるの⁉ 

ちゃんと食べないとダメっていつも言ってるでしょ!」

「マンドレちゃん!ローズマリーには内緒にしていてって…!…あー…」

怒りだしたローズマリーにメリッサが慌て、オロオロしだした。

 

 痴話げんかの中、シラー王妃は思い出したようにフェンネルに質問した。


「そういえば、アルニカもちゃんと食事を採れているのかしら?

あの子、シャトラナから出ると食欲をなくすみたいだから…」

「……今回は、あの魔法都市アルストロメリアですからね」


 シラー王妃の心配に安心してもらえるような答えが出ないまま、

フェンネルは軽くため息をついて答えた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ