力統べる者の願い
───── ガガッ…ピー…ガガッ。
『今夜、多くの観測地点から…流星群を観測する事が出来ます。では、それぞれの…位置をお知らせいたします』
とある国の宿内カフェの一角に女性が椅子に深く腰掛け、窓越しに何かを聞きながら夜空を眺めていた。
「お客様、素敵な音声案内機械をお待ちですね? そちらまだ余り出回らない貴重な機械で素晴らしい」
宿のマスターが女性の元に暖かい飲み物を置くと、音声案内機械を珍しそうに眺めて声を掛けた。
「以前、ディアスキアでこちらを手にする機会があってね」
女性は静かな声で手にしていた小さな機械のボリュームを調整しながら答えた。
「なるほど…お目が高い。あの国は、本当にここの所機器発達が加速しておりますからね。
……ですがお客様。今夜は是非、機械案内ではなくこの国の外で流星群を直接見て行かれてはどうですか? ここから出てすぐの広場は既に人が大勢おりますが、窓越しで見られるよりも…」
広場に溢れる流星群を待つ人々を窓越しに眺めながら、少し疲れた表情で女性は呟いた。
「外は色々な人の願いの言葉が強すぎて、私には少し体に負担がね…」
「?」
言葉の意味を理解出来ず、マスターが首を傾げた姿に女性は優しく微笑み返した。
「ふふ、何でもないわ。今日は少し寒いから窓越しから眺めるだけで私は十分よ、有難う」
「それではこちらの暖かいお飲み物を冷めないうちにお早めに。お風邪を引かれません様…」
心配りの言葉を添えて、マスターは女性の元から離れて行った。
女性は寒さが加速する季節の中、外でお祭りの様に盛り上がる人々を窓越しに眺めながら何かの金属で出来たカードを手にし、ため息交じりで誰にも聞こえない様な小声でうめく様に呟いた。
「オリーワ姫…。もしも願いが叶うならば、私はこの力を継承せず放棄して娘と二人でただ静かに暮らしたいの…。見定めた素質ある者たちに、それぞれの未来を託して」




