誰かのための願い事
「…じゃあ、アルニカの今の願いは何?」
メリッサは気分を変えようとまた子供の様に興味津々な表情で質問を投げかけ、アルニカの答えを待った。
「うーん、早くメリッサの母君を見つけて君だけじゃなくて、ゼラニウム叔父様に会わせてあげたい! …かな。もう十八年待ち続けているんだから。俺は願わなくてもメリッサはそばにいるし、既に俺に興味を持ってくれているから願わなくてもいいしね?」
アルニカがたまに見せる謎の自信は横に置き、メリッサはゼラニウムの事に関して首を傾げて尋ねた。
「え…っ?ゼラニウム神父の…それ、どういう事なのアルニカ…?」
「君、変な所で鈍感なんだな? ゼラニウム叔父様は君の母君を、恋焦がれて待っているんだよ? 十八年間」
「…え…? ええっ?」
「以前はゼラニウム叔父様って俺の母上の事を想い続けていたのだと思っていたのだけど、違ってた。
君を預かったその日から、君の母君を待ち続けているんだ」
「………」
メリッサはアルニカの発言にただ呆然とし、そして眉間にしわを寄せ、色々と考え込み始めた。
「私、あまり深く考えた事がなかったのだけど、私に母親がいるって事は父親もいるのよね…?
でも私がゼラニウム神父の元に預けられた時は、お母さんはもう一人だったみたいだから……。…そうすると、ずっとお母さんは一人で……?」
色々と思いつく事を想像し、逆に頭を抱えてしまったメリッサにアルニカが慌ててフォローを加えた。
「ご、ごめん…! 俺、君の父君の存在を否定している訳ではなくて…!」
今度はしどろもどろになっているアルニカに気付いたメリッサも慌てて首を横に振り、自分の生い立ちを振り返りながら頭の中を整理し伝えた。
「ううん。違うのアルニカ、謝らないで。私はゼラニウム神父がずっと母を気に留めていてくれている事が嬉しいの。私は母の存在をも忘れようとしていたかもしれないのに…。この世界の何処かで私を気に掛けてくれていたのに」
メリッサはポケットに入れてあった母からのプレゼントの宝石を一つ取り出し手に持つと顔の分からない何処かに一人でいるであろう母の存在を色々と想像した。
「へーっ? ゼラニウム神父もメリッサの母ちゃんを待っているんだな?
じゃあ、明日メリッサの母ちゃんが見つかります様にって俺、これから流れ星にお願いするぞ!」
「明日かー! それいいね、ドレイク!」
マンドレイクの願い事に、二人はしばらく笑いが止まらなくなり、夜空に向かって大の字になりながら時間を忘れ、そのままただ子供の頃の様な無邪気な心のままに笑い続けていた。




