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滅びの国のオリーワ  作者: niwatoco
3/8

王座に座るべき者

 ローズマリーとフェンネルが玉座の間に到着すると、そこにはアルニカ王子とメリッサが二人を待っていた。


 ローズマリーがここにいる事を聞いていたメリッサはローズマリーの姿が見えた時、彼女の元へすぐさま走り寄って嬉しそうに抱き着いた。


「ローズマリー!」

 知った顔を見た安心感から、磁石の様にくっついて離れないメリッサに

ローズマリーは不思議そうにしながらも頭を撫で、微笑みながら疑問を投げかけた。


「わぁ、昨日ぶり…だけど? メリッサ?」


「ローズマリー、改めて紹介するが、目の前にいるのが

我が国シャトラナの皇太子、アルニカ様だ」


 メリッサに抱き着かれたままのローズマリーはフェンネルに不意に目の前にいる王子の紹介を受け、慌てふためいた。


「アルニカ様、ローズマリーと申します、ちょっ、メリッサっ?」

変なポーズのまま挨拶をせざるを得ない状態になっているローズマリーにアルニカは笑顔で対応した。


「君がこの国の豊かさに貢献してくれているローズマリーだね。いつも感謝しているよ」

思いがけず、賞賛の言葉を受け恐縮したローズマリーに、アルニカは収穫祭の食事の話を続けた。


「以前、フェンネルと息抜きに城下町で行われている収穫祭に行った事があるけれど白身魚を揚げたソースがからんだサンドや、バターたっぷりのホクホクのじゃがいもや沢山の果物が生地に甘いものとくるまれたお菓子とか…。 手づかみであんなに手軽に美味しいものが食べられてなかなか楽しかったよ」


 それを聞いた近くにいた一人の重臣が、声を張り上げた。

「フェンネル騎士団長! 貴方の様な立場の方が王子を止めないで、

一緒にそんな行動をしてどうします?」

「…いや、あの時は俺もまだ団長の位じゃなかったし…、アルニカは止めても無駄だと思うよ?」

フェンネルは重臣の小言を自分からアルニカに話を向けさせようと、

目線をアルニカに向けた。


「そういうフェンネルもまあまあ楽しそうだったじゃないか。

…それに、時々は庶民の暮らしを見る事も大事かと思うんだ」

アルニカはもっともらしい話にすり替えたが、重臣はため息をついて小言を続けた。


「まだ、お付きのものを連れての城下町程なら良いですが、まだ開拓されつくしていない森に独りで行く無茶もされて…!あの時、偶々メリッサ殿がいなかったら、どうなっていたか…!」

「あの時は、母上をどうにかしてあげたくて色々文献をあさっていた時に、あの森に珍しい薬になる薬草が生息しているって情報が目に留まったからさ…」


 アルニカのその言葉に、はっとしてメリッサは目を輝かせた。

「あの辺りは、まだ研究が進んでいない草花が多いんです、アルニカ様がご存じだったとは…!」

メリッサが初めてアルニカに対して尊敬のまなざしを浮かべた為、その事にアルニカは嬉しさを噛み締めた。


「……ゴホン…!」

皆が好き勝手に話している中、一人の者の咳払いの声で、玉座の間が静寂に包まれた。


「今日、ここに集まってもらっている者たちに、そろそろこれからの話をして行きたいのだが…そろそろ良いかな…?」

低い声に、落ち着いた眼差しを向けていた男性が玉座から立ち上がった。


 貫禄のあるその声の持ち主はシャトラナの国王グレコリであった。

横には、国王と年齢の近い貫禄のある騎士が静かに、しかし目を見張って付き添っている。


(…あの方が、グレコリ王…。アルニカ様はどちらかというと、王妃様に似ているけれど国王様、どこか見た事がある様な雰囲気……?)

メリッサがグレコリ王の外見をまじまじと見つめていた時、玉座の間の入り口付近から少し騒がしい声がしてきた。


「今は、多数のものが王に謁見されております。 どうぞしばらくお待ちいただけないでしょうか!」

「そんな時間、今はないんだ、どいてくれないか?」

「いくら貴方様でも、順番がございます…!」

メリッサには何か…聞き覚えのある、知っている者の声だった。


「離してくれ…っ!」

何かを叩きつける音と同時に、閉じていた玉座の間の扉がミシミシと音を立てていた。

外がいきなり暗くなり、雷が走った。男の持つカードが小さな電光を放ち扉の鍵を器用に破壊してしまった。

「グレコリ──── ! 私の娘たちに何をした───── ⁉」


 目の前に現れたのは、今までに見たことのない、激怒したゼラニウム神父だった。

『ゼラニウム神父ー!?』

メリッサとローズマリーは同時に驚きの声を上げた。

そしてゼラニウムは目の前のメリッサとローズマリーには目もくれず、国王目掛けて駆け込んできた。


 その隙にゼラニウムのローブの中にいたマンドレイクが姿を現し、メリッサに飛びついた。

「マンドレちゃん!」

「メリッサ~、大丈夫か? 何ともなさそうで良かったよー」


 目の前の光景は、ゼラニウムを止めようとして必死になっているフェンネル、

同じくグレコリ王とゼラニウムを離す様に前に立ち、かばった体制になっている貫禄のある騎士の姿だった。


 メリッサとローズマリー以外は何故かあーあ。と、言う様な顔つきをしていた。


「え…?どういう事?」

二人がポカンとしている姿に、アルニカが小さなため息をつきながら説明を加えた。


「……はあ。ゼラニウム神父はね、王の兄上で、僕の叔父にあたるんだ」

『え──――っ?』


メリッサとローズマリーが驚きで同時に大声を上げたが、見向きもせずに兄弟喧嘩が始まってしまった。


「お前はいつもそうだ! 自分が欲するものを、昔から何でも私から奪い去る…!王座の席は譲っただろう?私は神父として生涯生きていくと!何も持たずに出て行っただろう?今度はこの子たちをどうするつもりだ!」


「何を言う? シラーに一度そっけなくされたくらいで諦めて出て行った男が…!」


 グレコリの反論の言葉にゼラニウムは息を殺したようにうめいた。

「…私は、何か争い事になるのはごめんなんだ…。あの時は私が第一王子で、そのままだと私がシラーを妻にもらう様になる話になっていた。

…シラーはお前の事を慕っていた事を、私は察していたから…」

そう言って目線を落とした弟のゼラニウムに苛立ちを覚えながらグレコリは話を続けた。


「だからと言って、何故シラー本人に本心を聞かなかった?

俺が兄上の立場であれば、何度でもシラーに認めてもらう努力をするが⁉」


「……………………」

 メリッサ、ローズマリー、アルニカはその場で親のコイバナを聞かされ、こそばゆい気持ちになっていたが、メリッサはアルニカの性格がとてもグレコリ王に似ている…と、血の繋がりに関心もしていた。


「グレコリ…。お前のそういった諦めない姿勢が国王の器だと、昔からそう思っているんだよ…!」


 ゼラニウムは優しい。アルニカは幼少時代から時々城に訪れていたゼラニウムを見ていた為、優先順位がいつも他者に向けられている事を察していたが、その基本的性格がメリッサへ引き継がれている事にこの時気付いた。


「ゼラニウム叔父様は、この国の事をも考えて、父上に全てを譲られていたと僕は思います。弱い人では決してありません。そうであれば他人の子供たちをこんなに沢山育てては行けません」

アルニカは父親のグレコリに冷静さを促そうと自分の意見を述べ、そして父親の意見も続けて代弁した。


「当初、僕自身はちゃんと話をした上でメリッサを説得させ、ここに連れて来るつもりだったのだけれどそれだと間違いなくメリッサはまずゼラニウム叔父様に相談していただろう? ゼラニウム叔父様が絶対反対する事を父上は分かっていたからね」


アルニカは双方の恥にならない様、考えながら言葉を選んで述べた。


 お互いがアルニカの言葉を聞き、小さなため息をついた。そしてグレコリが落ち着いた口調に戻り小さくうなずいた。


「…そうだな、すまなかった。兄上は私の事をちゃんと認めてくれていた上での行動をいつもしてくれていた…。国を思う形が、私はこの城の上から。兄上は下の城下町からちゃんと国を、人を見てくれていた」


 しばし沈黙が続いたが、その均衡を破り言葉を発したのは国王の横にいた貫禄のある騎士だった。


「王。ゼラニウム様はじめ、皆に一から説明をしましょう。何故メリッサ達を囲う必要があったかを」


「……シッサス…。そうだな。では、あれを用意してくれるか?」


その言葉に、全員が息を飲んで二人を見つめた。


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