メリッサの決断
この後しばらくグロリオサ姫は数日シャトラナへ滞在し、公私満足して
シャトラナを後にした。
そしてアルニカもしばらく公的な対応に追われていたが、
久しぶりにメリッサの元に『アル』として診療所へやって来る事が出来た。
「これ、アルストロメリアのお菓子なんだ。
ゼラニウム様に一度渡してから、皆で分けるんだよ」
アルは遊びに来ていた一番年齢が上の男の子にお菓子を手渡した。
「わあ!魔法使いの国のお菓子⁉初めて見るー!」
「もう遅いから、明日以降のおやつにしてもらうのよ?」
メリッサが即座にアルの言葉に重ねて念を押した。
「うん、じゃあまたね。アル、メリッサ!」
子供たちは本のお土産を忘れたまま、お菓子を持って嬉しそうに帰っていってしまった。
「…本よりお菓子の方が人気あるのかなぁ~」
「違う国のお菓子なんてめずらしいから、最初のうちだけだと思う」
いつもの様に診療所の片づけをしているメリッサを目で追いながら、アルニカはお礼を述べた。
「この間は本当に有難う。あの時君がフェンネルを引き留めて言ってくれていなかったらと思うと正直ゾッとするよ」
「フェンネルさん、国王陛下からのお咎めがなくて良かった」
「あれから母上が父上をこっぴどく叱っていてさ。母上も早くメリッサの母君を探し出せる様もっと力を貸しなさいだって」
アルニカは冗談交じりにその時の情景を伝えようとした、が。
「……その事だけど、アルニカ」
メリッサの声色が突然変わった為、アルニカは少し驚き口を噤んだ。
「私の為に、アルニカ達だけじゃなく、グロリオサ姫までもが母を探してくれる。もちろんこのタロットカードの仕組みやオリーワが何であるか、他にも調べる必要がある為でもあるけれど」
メリッサは一呼吸置き、決意した目でアルニカを見た。
「これは、私自身の人生にも直結する事だから自分からも調べて行こうと思うの。ただ私、この国から外に出た事がない。だからアルニカに誰か信頼できる同行人を紹介してもらいたいの。
人を雇うお金ならこれがあるから」
メリッサは、棚の奥から母親が今までプレゼントとして送ってきていた宝石を
全て取り出し見せた。
「自分の旅の路銀は、旅先で臨時の医療仕事をしながら稼げると思う」
「…その覚悟、出来てたんだね」
アルニカは、その言葉を待っていたかの様に話を始めた。
「じゃあ、俺が公務でこの国を出られない間、君にはフェンネルかシッサスを交代で帯同させる。
これは、君の希望に合わせる事じゃなく、俺の指示でどちらか二人を帯同させる。
そして俺が外交に出る時は俺と一緒に帯同するんだ。
この国の極秘で進めている調べ事だから、勝手は許されないよ?メリッサ。
それに自分勝手だと思われても、俺が君に何かあったら困るんだ。だから俺の地位を最大限利用させてもらう」
メリッサはアルニカの地位利用ではなく、それが配慮であるという事に感極まり涙をこぼしていた。
「アルニカは自分勝手じゃない、そんなの…私が一番知ってる…」
以前アルニカが通っていた時期のカルテを握りしめながら呟くと涙を拭き、笑顔で答えた。
「メリッサ、この間の事もそうだけどもっと俺を頼って。
俺が以前、君を頼ってここに来ていた時の様に。俺はこれからも頼りたい時は遠慮なく君を頼るつもりだよ?」
「メリッサ、俺も頼れ! 俺もメリッサがいないと干からびちゃうから」
続けざまのマンドレイクの的確な言葉に、二人は同時に吹きだした。
「うん、そうだね。有難う二人とも」
「この件、俺から両親とゼラニウム叔父様に話を繋げるからしばらく待って欲しい」
アルニカの提案にメリッサは頷き、手にしている他の診察書類をめくりながら
頷き、答えた。
「この診療所の患者さんに、それぞれの症状に合った他の病院を紹介する時間が必要だから、大丈夫」
それを聞いたアルニカは、メリッサが母親からプレゼントされてきた宝石を見ながら提案をした。
「ここの家と土地、この宝石で買い取れるんじゃないかな? 不在時の掃除とかはオレガノに頼むといい。ここは、君の帰る場所だからね。君の母君と共に」
「帰る場所…… 私の、お母さんと一緒に…?」
メリッサは一人で過ごして来たこの家の中を見渡し、ただ平穏に暮らしていた日々を思い出しながら同時に熱にうなされていた時、夢の中で女性に言われた言葉をふと思い出した。
「貴女の代で、この矛盾した宿命に抗いなさい…!」
今回の更新で、紙媒体の滅びの国のオリーワ2の本文内容となります。
(※この後ろに紙媒体では1ページ追加話がありますが、こちらも3が始まる前に更新いたします)
3の本文はほぼ書き終えておりますので、以降の詳細はこの後活動記録に明記いたします。




