それぞれの願いの行く末
翌朝、マンドレイクが朝日を浴びながら「光合成~…」と小さく呟き
窓辺で朝を告げた。
その声にアルニカは目を覚ますと、いつの間にか近くのソファで横になり
そのまま眠ってしまっていた事に気付いた。
アルニカは目をこすりながらメリッサが穏やかに眠っている事を確認し、
安心した瞬間。
お腹の虫が大きく鳴った。
「…………」
「アルニカ、今日は玉子五つ産んでくれているぞ」
マンドレイクは鶏小屋から生みたての玉子を持ってきて差し出した。
「…ありがとう。じゃあ卵スープでも作ろうかな。メリッサが起きたらスープ位ならいけそうかな…?」
「アルニカ、意外に器用なんだな。母ちゃんにもなれるぞ」
「…ん…。ここで、のんびり三人で静かに暮らす生活もいいな…」
アルニカは仮想に耽り鍋をかき混ぜながら、同時にシッサスとアルストロメリア女王のお互いの口撃を思い出していた。
「今日は一日休みだから、ここでメリッサの具合を見ながら調査書をゆっくり書こうかな。ここの診療所も代休だよね?」
「そうだけど、アルニカも休まないとだめだぞ」
マンドレイクはアルニカの顔を伺いながらジト目で注意した。
「はは、その通りだね」
…………………
眠りについていたメリッサは一人、夢か現実か分からない暗闇の中に独りたたずんでいた。
ただ自分の近くに、奇妙な黒い泥の水溜りがあるだけの場所にいた。
「…ここは、どこ? アルニカ?マンドレちゃん…?」
メリッサはそばにいたはずの二人を探したが、どこにも見当たらない。
(……助けて、助けてよ。貴女にはその責任がある…
貴女の先祖が残した罪だもの…。貴女が代わりに償うべきでしょう…?)
「⁉」
足元の泥の塊から、突然様々な人間の声が聞こえてきた。
(散々希望を持たせて、結局何も変わらなかった…!)
(都合のいい事を並べて、だましやがって……)
「!」
メリッサは驚き後ずさりしたが、色々な苦しみ、妬み、嫉みの声が次々と聞こえ襲い掛かってきた。
その時、ポケットに入れていたタロットカードが小さな星の灯りを灯し、
メリッサを囲み、言葉を発した。
「…メリッサ。それらは自分が壁に躓き、自分で振り払う事の出来なかった遥か過去にいた者達の、ただの言葉の残骸。それに触れてはいけませんよ」
星の灯りは美しい女性の形となり、メリッサの前に立つと、黒い泥の塊に強い口調で語り出した。
「メリッサには何の関係もない事。そしてこのオリーワの意味のない宿命を
近く終わりにさせます。貴方たちの、自分で自分にいつの間にか掛けてしまった
その呪いからも、解放させてみせます」
女性がメリッサの方へ振り返ると、その更に先の方を指さした。
思わず指さす方を見ると、その先からメリッサの知る、聞きなれた声が聞こえてきた。
「…アルニカ?マンドレちゃん…?…ローズマリー?」
暗闇の中で小さな光が指していた場所から、メリッサを呼ぶ声が繰り返し聞こえてきた。
「貴女を必要としている、貴女を大切にしてくれている、あの声の人達の元へ戻りなさい」
「そして貴女の代で、この矛盾した宿命に抗いなさい…!」




