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俺だって何人殺したか

「俺だって何人殺したか」


 職業訓練校に入校するや否や、講師からそんな言葉を聞かされては堪らない。


 講師の名は須藤。「介護の職務の理解」の授業を担当。メタボリック体型の愛すべき中年オヤジであるが、介護士としては十五年以上の大ベテラン。私を含めた訓練生たちは彼の軽妙な語り口に引き込まれ、初めての授業の緊張を和らげていった。しかし私たちの緊張が緩和された頃、彼は衝撃的な言葉を口にしたのである。


「俺だって何人殺したか」


 介護施設で夜勤に臨んでいた彼は、巡視を行っていた。ある認知症の利用者の部屋を覗いてみると、様子がおかしい。ベットに近づいて掛け布団を剥いでみると、その利用者は自らが穿いていた紙おむつの給水材を食べて窒息死していたという。


 介護施設で利用者にパンを手渡ししていた彼は、パンをちぎる事を怠った。彼から受け取ったパンを丸呑みして喉に詰まらせた利用者は救急車で搬送されたが、病院で亡くなったという。


 前者はともかく、後者は明らかに彼の過失である。ベテランの介護士でさえミスを犯す。そして、介護士のミスは利用者の死に直結する。


 須藤先生の授業が終わる頃、私たち訓練生の表情は凍りついていた。


 私たちの「介護の職務の理解」は深まった。テキストに記載されている本来の授業の内容よりも、有意義なものとして。

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