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宵待月に桜は踊る  作者: 葉隠真桜
第三章
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入学式 1

僕たちが寮を出て総合学園の講堂に向かっていると、僕たちと同じように講堂に向かう、真新しい制服に身を包んだ新入生が講堂に近づくにつれ増えてくる。


「新入生の方はこちらにお並びくださ〜い!」


人が集まれば当然その場は騒がしくなる。だけど、拡声の魔導具を使っているのか、それ以上に大きな女性の声で案内があるから、意外とスムーズに人が流れていく。


「次の方〜。」

「あ、はい。」


声の指示に従って移動した僕たちは、やがて見えてきた受付にいる女性に呼ばれる。


「お名前をお願いします。」

「はい。ノア=シストとトウカ=シスト、ミリア=グリーツ、レオナ=トパズです。」


そして受付で僕が代表して名前を言うと、受付の女性は一瞬目を見開くと、周囲に聞こえないよう抑えた声で囁いてくる。


「成程、貴方が……。……あ、失礼しました。えー、まずは全員に関係があることがですね。本来ならば新入生はあちらの入り口の前で待機してもらうのですが、"特進"の方々は他の新入生とは別の入り口で待機してもらいます。」


女性の指し示す方を見れば、確かにたくさんの生徒が一つの入り口の前に集まっている。


「あの入り口の左手側が少し分かりにくいですが通路になっていますので、そこを道なりに進んでいってください。そうすると少し小さめの扉があるので、そこで待機していてください。入場の時はこちらから指示しますので。」

「分かりました。」

「そして、ここからはノアさんだけに関係のある連絡ですね。1つ目は、新入生代表としての挨拶についてです。先日原稿……もとい、台本を送っていただいたと思うのですが、あれでOKだそうです。何なら、もっと実力を見せつけてもいいとのことです。」

「まじですか。」


僕は女性の言葉に、若干引きながらそう口をこぼす。


── 自分で言うのも何だけど、あれでも大分ぶっ飛んでる演出だったよ?なのにあれ以上って……まあ、出来るけどさぁ……。


「そして2つ目は、臨時教師としての挨拶についてです。こちらに関しては完全にノアさんの裁量に任されていますが……。」

「もちろん、僕が生徒と教師を兼任していることはバレないようにしますよ。」


生徒と教師が同一人物ってなったら、絶対に面倒な事になる。だからこそ、絶対にバレることは避けないといけない。一応僕の中では、余程の事態がない限り、ノア=シスト(せいと)として動く時は雷魔法と時空間魔法、結界魔法、"琥珀"は封印しようって考えてるけど……時空間に関しては無意識に使っちゃいそうで怖いんだよなぁ……。まあ、もし使ってるのを見られちゃったら何とか誤魔化すしかないね。


「ちなみに、どういうことをやろうと思ってるんですか?」

「詳しくは言えませんが、生徒に舐められないようにはしようと思ってます。」


事情を知ってる人ならまだしも、未だに|"新星"《ぼく》のイメージって「Sランクになったけど目立った活躍や逸話の無い、謎に満ちた存在感」らしいからね。下手に舐められて授業が進まないのも困るから、最初からある程度実力を見せておこうと思ったんだよね。


「そ、そうですか……。……お願いですから、やり過ぎないでくださいね……?」

「分かってますよ。」


受付の女性の言葉に、僕は苦笑しながらそう答える。


「……本当にお願いしますよ……?……こほん。お伝えしておきたいことは以上になります。なので、先ほどお伝えした扉の前で待機していてください。」

「はい。……皆、行くよ。」


こうして受付を終えた僕は、3人と一緒に指定された扉の前に向かう。


「さて、これから同じクラスになる人たちに会う訳だけど……正直、あんまり関わり合いになりたくない人もいるんだよね……。」


その途中で僕が小さく呟いた言葉に、ミリアが反応する。


「"勇者"たちのこと?」

「うん。」

「んー……確かにあの法国の"勇者"なら不安に思うのも分かるけど……そんなに警戒するほどかな?」


そう言って首を傾げるミリアに、トウカが警戒理由を説明する。


「実は……私、一回だけ"勇者"に会ったことがあるんだけど……その時の雰囲気が、すごく嫌な感じだったの。」

「そうなの?」

「うん。何かこう……値踏みされてるっていうか、自分のために利用しようとする感じがあったっていうか……。」

「えー?気のせいじゃないの?」

「気のせいじゃなかったと思うけど……。」

「……どちらにせよ、会えば分かる。」

「だね。僕も実際に会ったことはないけど、無警戒で近付くよりは警戒してた方が何かあった時に動きやすいから警戒してるだけだしね。」


レオナさんの言葉に頷き、僕はそう付け足す。


「もし"勇者"がちゃんとした人だったら対応を変えればいいし、きっと相手もそのつもりだろうからね。」

「?どういうこと?」

「こういうこと。」


そう言って僕は足元に落ちていた小石を拾い、空に向けて弾く。すると、


「!」


その小石が見えない何かに当たり、その見えない何か ── 透明化の魔法がかけられた使い魔の烏が落ちてくる。


「どうやら向こうもこっちのことを探ってるみたいで、さっきからずっと着いてきてたんだよね。視覚情報の伝達だけしか出来ないみたいだったから放置してたけど……刺さる釘は刺しておかないとね。」


そう言って僕は、烏の使役者がいるであろう方向 ── "特進"メンバーの集合場所の方を見、歩き出すのだった。

作者の葉隠です!初めての作品なので、至らぬところも多々ありますが、温かく見守っていただけると幸いです。もし気に入っていただけましたら、ブックマークと☆による評価を、よろしくお願いします。

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