原稿作り中の一幕
すいません、遅れました……
「── うーん……本当にどうしよう……。」
僕は割り当てられた学生寮の部屋の中で机に向かいながらそう呟く。
「ただでさえ臨時教師としての挨拶があったのに、それに加えて新入生代表の挨拶もしなきゃいけないなんて……。」
そんな僕の目線の先には、新入生代表の挨拶の原稿がある。
「何となくの構成と仮の本文はできたけど……僕だけじゃ本当に内容が問題ないかとかって判断できないからなぁ……。だからと言ってトウカやミリアに確認してもらうわけにもいかないしなぁ……。」
臨時教師としての挨拶は皆に確認してもらえたけど、流石に新入生代表の挨拶を新入生に聞く訳にはいかないし……。
「── ノア様、大丈夫ですか?」
「あ、風流。」
僕がそんな風に悩んでいると、風流が女性の姿へと変わり、声をかけてくる。
「久しぶりだね。」
「はい。……ここ数か月はノア様が忙しそうでしたし、ノア様自身が周囲の人に私のことを明かしていないので。」
「ごめんね。風流のことを報告しちゃうと確実に面倒なことになっちゃうから……。」
僕は苦笑を浮かべつつそう口にする。
「確か"創世教"が五月蝿くなるから、でしたか?」
「うん。……いくら自由が認められてるとはいえ、公的にはトウカは創世教のメンバーで、しかもかなり上位だからね。下手に風流の情報を伝えちゃうと、神器か呪物のどっちか、特にとして処理されちゃう可能性が高いんだ。」
「私は神器でも呪物でもなく妖刀なのですが……。」
「傍から見れば喋る刀なんて異常だし、風流の性質も厄介だからね。余程のことがない限りは隠しておきたいんだよ。」
風流には、周りの精神力が弱い人の意識を乗っ取って、そのまま自傷させる性質がある。昔はそれくらいしか分からなかったけど、"鑑定"が"神眼"になったおかげでより詳細が分かるようになった。その情報が、こんな感じだった。
[帝桜刀 風流]……かつて、英雄と呼ばれたものが使用していた刀。彼と共に世界を渡った際に変質した。その刃はどれだけ雑に扱おうとも刃毀れすることはない。所持者の全ステータス+5%。この刀は触れた者のPOWが契約者のPOWの1/5より低い場合、触れた者の精神を乗っ取る。
契約者 ノア=シスト
あの時より少し情報が増えたりもしてたけど、問題なのは"この刀は触れた者のPOWが契約者のPOWの1/5より低い場合、触れた者の精神を乗っ取る"っていう一文。この契約者が僕じゃなかったらまだ良かったんだけど……。
「……僕が風流と契約しちゃったから、この性質がとんでもないものになっちゃってるんだよね……。」
僕自身のステータスを見ながら、僕はそう独りごつ。
─────── ノア゠シスト─────────
種族 人族
天賊 刀聖 LV 63
HP 103,408/83,408
MP 367,561/367,561
ATK 252,114
DEF 121,021
DEX 272,763
POW 203,701
スキル 隠蔽、讎ょソオ破螢、雷魔法、逾槫ィ、共鳴、氷魔法、時空間魔法、重力魔法、神眼、精霊視、精霊同調、精霊魔法、全状態異常無効、繰糸術、超回復、万物切断、並列思考、魔導、魔導書、立体機動
特殊スキル 桜花流刀術、白虎の咆哮
契約精霊 アルノー=リストリア
称号 蜈ャ辷オ螳力縺ョ逾樒ォ・
雷の神髄に至りし者
精霊王の盟約者
白虎の親友
真理の伝導者
適合者
加護 白虎の加護(幸運、紫電、退魔、保護)
──────────────────────
色々あったせいでこんなステータスになっちゃったから、人前で風流を出すと大事件が起こっちゃうんだよね。POWが40,740以下の人が乗っ取り対象になってるせいで、普通の人はまずアウト。これを耐えれそうなのは……あれ?トウカ以外誰も居なくない……?ミリアはちょっと前に見た時はPOWが9,000くらいだったし、前にオーガキングが出た時にSランク冒険者の皆さんは苦戦してたし……。これ、対人戦で使ったら何もしなくても勝てるのでは……?
「うん。やっぱりそう簡単には見せないほうがいいね。確実に呪物として処理されちゃうだろうし。」
「では、こうして人の姿をとるのも避けた方が良さそうですね。」
「うん。お願いできる?」
「分かりました。……それより、何か悩んでいる様子でしたが、何かありましたか?」
「いや、この間臨時教師としての挨拶の原稿を見てもらったじゃん?あれに加えて、今度は新入生代表の挨拶もしないといけなくなっちゃってさ……。」
「成程……。……それでしたら、お手伝いいたしましょうか?」
「それはありがたいけど……風流ってこういう挨拶の原稿ってどういう内容がいいかとかって分かるの?」
「はい。ノア様の前の主様も、同じように悩まれていましたので。その時に少し、お手伝いはさせていただいたことがあります。」
「それじゃあ、手伝ってもらってもいい?」
「勿論です。」
こうして僕は、風流の助けを受けながら、新入生代表の挨拶の原稿を完成させていくのだった。
作者の葉隠です!初めての作品なので、至らぬところも多々ありますが、温かく見守っていただけると幸いです。もし気に入っていただけましたら、ブックマークと☆による評価を、よろしくお願いします。




