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殺人鬼は異世界にて、かく語りき~殺人鬼は異世界で如何にして生きていくべきか~  作者: スズカズ
第二章 どうかこの偽りの魂に一条の光を
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第二十九話 リザルト

 ──ティルミントン時計塔。


 それは政務商業地区(ラーデン)、アトレイア教会の大聖堂に隣接する形で建設されたユニゼラルでも有数の観光名所の一つだ。


 絢爛豪華な装飾が施された大時計塔はアトレイア教の信徒だけではなく、ユニゼラルのあらゆる人間たちの憩いの場所となっている。


「──ふむ、少々意外な展開になったものじゃのう」


 その時計塔の屋上。

 眼下の風景を眺めながら、眼帯の老人──バルドス・ジャルートは呟いていた。


「ジッチャン、ごめーん、遅れちったぁ」


 頭巾フード付きの外套ローブを着た青い髪の少女が、舌を出しながら現れた。


「ホムラお嬢、無事で何よりじゃ。しかし合流するのに随分手間取ったのう」


 ホムラ・カナタ。

 それはハンネ・トゥルス・クロムバッハを襲撃した少女だった。


「うん、シュタール騎士団の追手を撒くのに大変でさぁ。やっぱりあそこはそこらの連中とはダンチだね。……でも言われた通り、時間稼ぎは十分しといたよ」


「うむ、ご苦労じゃった。おかげで狙い通り、クロムバッハ家の次代当主アインスを狙い撃つことが出来た」


 バルドスの労いの言葉に、カナタが恥ずかしそうに頭を掻いた。


「ふへへへ、ジッチャンの作戦があってこそだよ。……って、あれ? テムジンさんは?」


 ホムラが、本来であればここにもう一人いるはずであろう同じ部隊の仲間を探した。


「アイツはここに来ん。……襲撃に失敗したからな」


「はぁ!? 嘘でしょ!? 相手は十歳の子供なんでしょ!?」


「今使い魔で監視記録(ログ)を確認しているが、どうやら正面戦闘で堂々と打破されたようじゃの。命と引き換えの自爆術式も行使したようじゃが、それでも殺すことは叶わなかった」


 バルドスの今回の作戦の主目的は、アインス・トゥルス・クロムバッハを抹殺することだった。そのために様々な策を練っていた。

 

 シュタール騎士団、ハンネ・クロムバッハ、シンゲン・ミツルギ。

 

 クロムバッハ陣営の手強い異能者たちからアインスを引き剥がし、毒蛇ヴァイパーの処刑人を差し向ける。

 バルドスの見積もりでは、アインス襲撃に成功した時点でほぼ確実に目的達成は叶うと考えていたのだ。

 

「事前情報ではアインスは異能者ではないと聞いていたのじゃがな。流石はクロムバッハ家の後継者というべきか」


「……うーん、テムジンさん良い人だったのになぁ。残念」


 ホムラが、がっくりと肩を落とした。


「ホムラお嬢は、テムジンと一緒で戦奴上がりじゃったかな?」


「そうだよ。あの人、無口だったけどウチには色々良くしてもらってたから。……うーん、ナムナム、テムジンさん、成仏してくだせぇ」


 ホムラは両手を合わせて拝むような仕草をする。


「それはヒノモト式の祈祷だったかの?」


「……あ、ううん、様式美みたいなものだから気にしないで」


「まあ今回の任務が成功でも、あやつの身体は治癒術式の過剰行使(オーバーロード)でボロボロだった。先は長くなかったじゃろう。……しかし、ここでクインドの仇を討っておきたかったところだったがの」


 クインドという名を聞くと、カナタは露骨に嫌そうな顔をした。


「……えーっ、ウチ、あの人嫌い。いっつもウチのことイヤラシイ目で見てきたし。あの人が行方不明なのも、どうせどっかに逃げちゃったんじゃないの?」


「まあそう言ってやるな、ホムラお嬢。アレは最低の下衆ではあったが、長年組織に忠義を示してくれた。組織に無断で雲隠れなどありえん。公沙汰になっていないのは妙じゃが、クロムバッハ家に消されたのは十中八九間違いないだろうて」


「はーん、どうだがねぇ」


「かかっ、辛辣じゃの」


 バルドスの言い分にカナタは頬膨らませた。

 その様子を見て、バルドスはまるで孫を見守るように笑った。


「しかし、今回の作戦は失敗したといえ所詮は威力偵察じゃ。おかげでクロムバッハ家の戦力は十分把握した。直に毒蛇ヴァイパーの本隊も到着する。次こそが勝負じゃろうて」


「でもさー、なんで上層部はそんなにクロムバッハ家を潰したがるの? ……あ、いや、ウチらみたいな犯罪組織にとって邪魔な連中ってのは分かるんだけどさ」


「……さてな。本当のところは儂にも分からぬ。上層部の話しでは『ゆりかご計画』というのが関係しているらしいがの」


「ゆりかご? なんなのそれ?」


「……詳しい内情は知らぬが、その計画が達成すれば我々──簒奪者(コーサ・ノスティ)にも多大な利益が発生するらしい」


「らしいねぇ。……うさんくさ」


「かかっ! だのう! しかし兵隊は上の命令に従うしかないのじゃよ」


「むむ、一兵卒のつらいとこだね」


「……ああ、しかし、儂はただの兵隊で終わるつもりはないぞ。こたびのクロムバッハ家抹殺の任から、必ず組織の上層部に登り詰める。カナタお嬢、お主は儂の頼れる手駒の一つじゃ。手伝ってくれるな?」


「もちろん、ジッチャンの頼みだもの!」


「かかっ! では共に覇王が如く、血塗られた覇道をいこうではないか!」


 時計台の屋上。


 眼帯の老人と青い髪の少女は、拳と拳を突き合わせて決意をあらわにした。

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