第15話 新作コント『バイト勇者』
新ネタです。
面白くなくても、この世界では面白いんです。
第15話 新作コント『バイト勇者』
シーンとした大宴会場で、それは起こった。
宴会場の電灯が全て消えたのだ。
「キャー!」
何人かのメンバーが叫び声を上げる。
これは、お約束なのか、誰かが千陽子に気を使って叫んだ可能性が高かった。
電灯で付いているのは『非常口の方へ駆け出す人物をイメージした白と緑の電灯』だけだった。
そして、電灯が消えた後、舞台の方の緞帳にスポットライトがあたる。
静かに開いていく緞帳の奥にかなり、精巧なセットが置かれている。
やはり千陽子がコントをやるつもりだということが、皆に伝わる。
ここにいる全員には、
『全く笑わないと殴られる、わざとらしく笑いすぎると蹴っ飛ばされる。』
という絶妙ギリギリの条件ラインを肌で感じながら適度に笑うという高度な技術を求められていた。
緞帳が開ききった。
舞台のセットは、何やらテーブルや椅子がいくつか並べられている感じであり、舞台の奥の方にはお品書きがいくつか書かれて貼り付けられていたので、直ぐに居酒屋か何か飲み屋のようだとわかる。
そして、宴会場内にアナウンスが入る。
ーー『『クリム&カリスマ』のショートコント『バイト勇者』』ーー
町人風の若者が店先に立ち、何やらメモ紙を見ながら、店の名前を確認している。
「えーっと、あ、ここだここだ、料理が美味いと評判のレストランは!ってどう見ても居酒屋だよ。」
とぶつぶつ言いながら店内に入る。
「しゃーせー!どうぞこちらへ!」
威勢良く挨拶する女性店員。
「えっ、えらく元気がいいなあ。」
と言いながら、店内を見渡し、店員に勧められたテーブル席に着席する。
そして、その女性店員を見て、何かに気付く。
「えっ?もしかして勇者のチヨコ様じゃないんですか?」
「ええ、そうですけど。」
「いやあ、うれしいなあ、こんなところで勇者様に会えるなんて!って、勇者様がこんなところで何をしてるんですか?!」
「バイトです。」
「そりゃ見ればわかりますよ、だから何でまた勇者様がアルバイトなんてしてるんですか?」
「魔王を倒したら、仕事が無くなって、無職になってしまったんです。」
「で、バイトですか?いや、まあ、確かにわかるんですけども、勇者様だったら、王国の騎士とか冒険者ギルドで用心棒とか色々あったでしょう?」
「いやぁ、私、戦いが嫌いで…」
「はい?イヤイヤ、この間まで勇者やってて、ゴブリンとかオークとか殺しまくってたんじゃないんですか?」
「嫌々やってました。」
「嫌々かよ!」
と突っ込みを入れる。
「そうなんです。」
「で、ここでバイトですか?」
「ご注文は?」
「って無視かよ!」
「ご注文は?」
さらに注文を聞かれたのであきらめたような表情となる。
「あ、そうですね、じゃあ…」
と言いながらメニューを見る。
「お勧めとかあります?」
「お勧めですか?ありますよ。」
「ちなみにどんな料理がありますか?」
「ゴブリンの脳みその酢漬けとか…」
「ちょ、ちょ、ちょ、何ですか?そのゴブリンの何とかというのは?」
「ゴブリンの脳みその酢漬けですか?結構人気商品ですよ。」
「イヤイヤ、気持ち悪いでしょ、それが何で人気商品なのか、意味わかんないですよ!他に何かないんですか?」
「ゴブリンの脳みそのタルタルソース掛けとか…」
「いや、だから、何でゴブリンの脳みそ縛りなんですか?何かの呪いですか?!」
「えっ?呪いコースですか?」
「いや、それコエーよ!いや、だから、もっとこう、何て言うのか、食べやすそうな、軽い感じのやつないですか?」
「軽い感じのやつですか?そうですねぇ、あ、そう言えば、昨日入荷した食材がありました。かなり、軽いと思いますよ。」
「へぇー、何て言うのかな?それ?」
「ドライゴブリンの睾丸です。」
「確かにドライって言うくらいだから軽そうだけど、それもゴブリンだよね?しかも睾丸って、精力絶倫になりそう。っておい!」
「でも、脳みそじゃあないですよ。」
「わかってるよ!じゃあゴブリン以外の食材で、何かないの?!」
「ゴブリン以外ですかー?うーん」
「いやいや、考えすぎだろ!」
「あ!そう言えばポイズントードの刺身があったな。」
「毒入りじゃねーか!」
「いやぁ何か舌触りがピリピリっとして、天にも昇るような味とかで人気があるんですが…」
「それって昇ると言うより、召されてるよね!?あーもう!他には?!」
若者はイライラしながら他のメニューを要求する。
「駄目ですか…じゃあ値段は張りますけどドラゴンのボーンステーキとかありますけど?」
「毒とかは入ってないの?」
「入ってはいません。」
「ちなみに値段は?」
「100gで100万イエーンです。」
「高けーよ!値段張りすぎだろ!もうちょっと安いのないの?」
「今ならサービスタイムで200gで150万イエーンとお安くなっていますが?」
「いや、それ増えてるし!でもいやに、ドラゴンのボーンステーキを推すねえ?理由でもあるの?」
「いや、誰も注文しないからどうなのかなって思って」
「普通に値段が高いからでしょ?安くしたらどうなんですか?」
「ドラゴンの肉ですからねえ、仕入値が高かったもんで、値下げが出来ないんですよ。」
「そうなんですか…」
「あ、でもドラゴンのテールスープがありますよ。一皿900イエーンで。」
「へぇー安いじゃないですか、また、何かあるんですか?」
「ドラゴンのテールには、毒腺がついてまして…」
「いや、また毒かよ!」
「これも中々好評で、天にも昇るような味と…」
「だから、それ死んでるよね!?」
「今ならサービスで、ポイズントードの刺身がついてますから。」
「それって確実に殺しに来てるよね?!」
「いえいえ」
「そんなの要らねーし!もっとちゃんとした料理はないの?」
「うーん仕方がありませんね。後は『勇者チヨコのまかない料理』しかありませんが?」
「へぇーそれは何か期待出来そう!で、どんな料理なんですか?」
「まかないなんで日によって違いますが、今日は特別にお客様に提供させて頂きますので…」
「うわーありがたいなー!何だろう。」
一旦、女性店員が奥に戻り、しばらくしてから再び、客の前にやってくる。
その手には、少し大きめのクローシュを持っている。
「お待たせしました、本日のまかない料理は『魔王のフローズン生首、呪いの呪文添えプロバンス風』です。」
と言いながらクローシュを開けると魔王と思われる青い顔の生首が皿に乗っていた。
「怖えーよ!!プロバンス関係ないし!」
客が大声で叫ぶと同時にバーンと銅鑼の音が鳴り響く。
ーーー
そして、一旦、舞台が真っ暗になり、コントが終了したかに思われた。
だが、再び舞台にスポットライトが当たるとそこには先程の皿に乗っていたモノではなく、完全に別物の魔王と思われる青い色の巨大な生首が吊り下げられ、次の瞬間、その首が観客であるチームのみんなの方に飛び出したのだ。
「ぎゃーー!!」
「きゃあーー!!」
舞台の前辺りにいた者達は巨大な生首が飛んでくると大きな悲鳴をあげまくる。
大宴会場は生首の大玉転がし状態になっていた。
「あーはっはっはっはっ!」
千陽子が舞台の上からその光景を見て笑っている。
「やられたあー!これやったんやー!」
香が頭を抱える。
まさか、自分が想像していたより、かなり予想外に出来が良かった。
香は異世界モノはあまりよくはわからなかったが、かなり、二人の息が合っていて面白かったと思った。
笑えるところは普通に笑えたと思う、後は好みの問題だけだ。
だが最後の生首には、やられた。
心臓にかなり悪い。
まあ、肝試しには最高なのだが、相手がおばあちゃんなら即死ものだ。
「お前達!どうやった?ワイのコントは?!!」
と千陽子がどこからかマイクを持ってきて、みんなに意見を聞く。
「リーダー最高!!」
「リーダーおもしろーい!」
口々に千陽子に賛辞を送り、大きな拍手が起こった。
それを見ていた飯田ディレクターが、怖い顔をしている。
香はその表情を見て、
『あ、アカン、やっぱりあのネタはテレビ的にアカン奴やったんや。』
と思った。
「あ、あの、あれはリーダーの宴会芸的なものであって、決して本番でどうとか…」
と言いながら千陽子のネタのフォローをしようとした時だった。
「おもしろい!」
飯田が大きな声で叫んだ。
「はい?」
香や静香もそれには驚いて目を丸くする。
「面白いじゃないですか!ネタもかなり練っているようですし、最後の生首が客席に飛び出すのもかなり斬新で、観客も最後に参加するという新しいパターンも中々秀逸ですよ!ただ、ダラダラとならないように、ドラゴンのボーンステーキのあたりなんか、もうちょっとネタを詰めてもいいかも知れませんね。」
とかなりの高評価を出したのだった。
反省のため、ネタ百個作ります。
だけど、ここに投稿出来ないのが残念です。
ヽ(;´ω`)ノ( ̄□ ̄;)!!
でわでわ!次回まで!




