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第16話 そして、転生

とりあえずこの話で一旦、千陽子のお話しは終わります。

その後の活躍は、本編の『水無月蔵光の冒険譚』を見てください。

第16話 そして、転生

舞台を終えて、千陽子とエージが舞台から降りてくる。

と言っても、ペンションの宴会場なので、段差はそれほど高くない。

足を少し伸ばしたり、ポンと飛べば下に降りれる程度のものだ。


千陽子が香に近寄ってくる。

「どうやった?」

「良かったっす。最後の生首は読み切れませんでしたが…」

「わははははは!やっぱり香やな、ワイがコントやるってバレとったわ。いや、コントやったらとか、宴会場借りるとか言い出したんで『ヤバッ』って思ってたんや。」

千陽子がそう言うと香は黙って笑顔を見せた。

そして、その後ろからルミが現れた。


「リーダー!お久しぶりです!コント目茶苦茶面白かったです!」

とルミが千陽子に近寄ってきて、千陽子と握手をする。

千陽子も最初、誰かわからなかったようであったが、握手をしながらルミだとわかると、

「お、お前!こんなとこで何しとんねん?!仕事は?」

とルミに聞くと、ルミはニッコリと笑いながら、

「これが仕事です。」

と答えた。


「何?!もしかして…テレビ局連れて来たんとちゃうやろな?もうネタ無いで!」

と笑いながら冗談混じりで相変わらずの鋭さを見せると、敏腕ディレクター飯田が横から顔を出す。

「宮離霧千陽子さん、初めまして、FKTVの飯田と言います。」

「おっ?何や、ルミ、マジでテレビ局連れてきたんか?」

千陽子の顔がマジになる。

「確かに、ルミさんの言われた通り、宮離霧さんとは知り合いのご様子で…」

と飯田はルミの方に向きながらニコッと笑う。


「で、何や?まさか取材やあらへんやろな?」

「その、まさかです。」

ルミが応える。

「マジか?!」

千陽子の動きが一瞬止まる。

「何の取材や?」

「千陽子さんの…」

とルミが応えると千陽子はハーッと息を吐く。

「ハイハイ、わかりました。何でも聞いてや。」

と千陽子は一応マネージャーを通しているか確認したあとに、ふて腐れたような感じで畳の上にドカッと座る。

エージはその様子を見て、

「じ、じゃあ、僕は後片付けしとくから…」

と言って、その場を離れようとした時、飯田がエージに声をかける。


「カリスマエージさん!貴方にもお話が聞きたいんですが?」

と言うと、エージが驚いたような表情になる。

「えっ?僕もですか?」

と自分自身を指差して確認する。

「ええ、そうです。」

飯田がそう言うと千陽子の顔色が変わる。


「これって…まさか『クリム&カリスマ』への取材ですか?」

と千陽子が飯田に確認する。

「はい、そうです。」

「マジか…」

千陽子はそれまで自分だけに対する取材や出演に対してエージに引け目を感じていた。

と言うのも、自分が有名になったのは芸人としてではなく、例の殺人事件の犯人を捕まえたということで注目をされただけであり、自分の名前だけが独り立ちしてしまい、『クリム&カリスマ』の名前が置き去りになってしまっていることに、責任を感じていた。

だから、最初、ルミから千陽子の取材だと聞いて『またか』と思って、不貞腐れたような態度となっていたのだった。

それだけに、この飯田の申し入れは千陽子にとって非常に有り難く、嬉しかった。


「よっしゃ!何でも聞いてくれ!」

千陽子の先程までの暗かった表情が途端に明るくなる。


準備していた女性リポーターから、芸人になろうとした動機や、コンビを組んだきっかけ、今後の抱負などを聞かれた。

内容自体は短かったが、初めてエージと二人揃ってのテレビ取材は千陽子に少なからず感動を与えていた。


また、それに加えて、天城ルミとの対談などもあり、かなり充実した内容となっていた。

なお暴走族時代の話はルミのイメージもあってか、少し触れられる程度に(とど、)まり、質問はかなり避けられていた。


「ルミ、気ぃ遣わせて悪かったな…」

取材が終わり、千陽子がルミに謝る。

「何を言ってるんですか!?私は何にもしてませんから、それに、久しぶりにリーダーに会えてパワー貰いましたから!」

とガッツポーズをとる。

「ハイハイ、まあ、お前の番宣も入ってたからな。」

「それは、スミマセン。」

ルミが頭を下げる。

「何を謝っとんねん、勘違いすんなや、あれはお前の番宣やからワイも有難いと思っとるんやから。今度のドラマ、力入れてんねんやろ?」

「リーダー…」

ルミは千陽子の言葉に感動して目に涙をためる。

千陽子は元メンバーが有名になることに対して非常に嬉しく思っていた。

だから、どんな形であれ、一分でも一秒でも長く画面に映っていて欲しいと願っていた。


「あ、リーダー、(あと)、今日のコントは今回の取材や対談と同じ日に放送するみたいですよ。」

とルミが千陽子に話す。


「何やて?!」

晴天の霹靂、寝耳に水、驚天動地だ!

まさか、あのネタがテレビ局に撮影されていたとは…

千陽子の表情が変わる。

今度はかなり難しそうな顔だ。


「どうしたんですか?」

「あ、いや、テレビ的にどうなんかなと…」

「飯田さんがちょっと編集するとかは言ってましたけど…」

「そうか、まあ、テレビ局にもコンプライアンスとかあるからな。」

「そうですね、でも飯田さん、ドラゴンのボーンステーキの下りがどうとか言ってましたけど…私はあんまり良くわからないんですけど…」

「ホンマか…やっぱりな、わかってる奴には隠されへんな…。」

千陽子が、自分自身、もうひとつだなと思っていたところに目を付けるディレクターに対し、中々やるなと飯田の見る目に驚くと共に、逆に自分のお笑いの感覚が間違っていないことを再確認する。


千陽子は、その日からさらにコントに身を投じていた。

エージには相変わらずネタを作り続けさせた。


例の宴会場のコントがテレビで流れると、千陽子の知名度に加え、さらに人気に拍車がかかる。

ネタも修正を何度もかけたり、新作も作った。

すべては『関西コント大賞』の出場権をかけてのことだった。


ある日、千陽子とエージがマサやんの運転で、その予選出場のため、大阪市内にある予選会場に行こうとしていた。


「エージ、ワイらはやるだけの事をやったと思うな!それを思ったら、そこで成長は止まる!せやから、これは通過点や!気ぃ張って行くで!」

「うん!」

だが、千陽子の顔には自信が満ち溢れていた。

エージも、いつにも増して気合いが入っている。


「もうすぐ到着するで、用意しときや。」

とマサやんが後部座席の二人に声をかける。


その時であった。

お約束の居眠り暴走トラックがマサやんの運転する車の横から後部座席へ向けて、側面衝突したのだった。


マサやんの車は10m以上吹っ飛ばされ、衝突した、後部座席は見る影もなく、グシャグシャになっていた。


マサやんは前の席であったのが幸いし、病院に搬送されたが、診察の結果、軽い打撲で済んでいた。


一方、車に乗っていた千陽子とエージだが、救急車が到着したとき、既に二人は車両の中にはおらず、その痕跡すら発見されなかった。

忽然と車の中から消失してしまったのだった。


この事故の件は一時、スポーツ新聞や週刊紙でかなりニュースとなっていたが、また、千陽子が殺人事件に引き続き、売名行為に走ったのではと噂され、時間と共に次第にみんなの口からも話が出なくなった。



ここは、千陽子が働いていたスナック『ファンタジー』店内。

店には『スターセブン』の元幹部が集まっていた。


「あれから、1ヶ月、リーダーとエージ君は未だに発見されていない。一体何が起こったの?」

香が、店に来ていた黒山五郎に尋ねる。

彼は大阪府警の捜査一課の刑事である。

「ワシもわからん、さっぱりや、交通課の連中や鑑識課も科捜研の連中らもお手上げや言うとる。」

「そんな…」

黒山が答えると香が泣きそうな顔をしている。


当然、事故の当日は現場に来るなり、気が狂った様に泣き叫んでいた。

「何せ、防犯カメラの映像でも途中まで二人はちゃんと映っとった。でも、事故の直後から全く誰の介入も無いのに、忽然とおらんようになっとる。」

「超常現象というやつですか?」

と樹里亜が尋ねる。

「さあな、ワシはSFとかはあんまり興味無かったからな…」

黒山はカウンターテーブルに置かれたグラスの水割りを一口飲んだ。



あの時、事故の現場において、誰も理解できない事が起こっていた。

千陽子とエージは、魔法世界『マーリック』というところに転生していた。


時間も場所もズレ、それぞれがひとりぼっちで生まれ変わっていた。


それは、これから始まる新たなストーリーの歯車の様に動き出していた。


ありがとうございました。

何とか終わりました。

まだ未消化の部分はあるのですが、あまりダラダラ続けるのもモチベーションが上がらないので、終わらせました。


本編はまだまだ続きます。

今後の千陽子とエージを応援してください。

それでは失礼します。(; _ ;)/~~

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