第14話 テレビ取材
色々ややこしくなります。
第14話 テレビ取材
ここは美山香と堂本静香の部屋。
千陽子のサプライズコントの企画は香の直感的な頭脳により完全にばれていた。
「これは、ヤバいで、笑いすぎたら、『わざとらしいわ!』って言われて殴られるやろうし、笑わんかったら、『なんで笑わへんねん!』っちゅうて殺されるし…」
と静香がその可愛い顔を歪めながら、窓側に置かれた椅子に座り頭を抱えている。
「ホンマや、他のメンバーにこれを伝えたら、皆、ここから逃げ出すで。」
香もかなり、深刻な顔をしている。
「アカンアカン!そんなん言うて、全員逃げ出したりしたら、それこそ、それを伝えた私らがリーダーに殺されるわ!」
静香が頭を横に振って、目の前の香に注意する。
「そやなーそんなん、もっとアカンわな!」
香もパニックになってきていて、自分が何を言っているのかわからなくなってきていた。
プルルルル
香の携帯の呼び出し音が鳴る。
「誰や、こんな大変な時に?あっ!ルミや!」
「えっ!?ルミからって、あの子、仕事で大変なんじゃ?」
と静香も驚く。
柴田留美、『スターセブン』の七人の幹部の一人、身長が178㎝もあり、体も大きいが力も千陽子の次に強いのではと言われたメンバーで、スタイル良し、ルックス良し、性格良しの三拍子揃った、暴走族とはかなり縁が遠いと思われるような人物である。
現在はモデルやタレントとして活躍していて、CMの出演は10本以上、テレビやラジオのレギュラーもいくつか持っている。
最近ではトレンディドラマにも出演するなど、非常に忙しい毎日を送っているはずなのに電話をしてくるなんて…という気持ちで香も電話をとる。
「もしもし、ルミ?どうしたの?」
『あっ!香さん?お久しぶりです。お元気ですか?今、どちらですか?』
「えっ?ああ、元気やけど、今、ちょっと立て込んでて…」
『えっ?リーダーと京丹後の方に行ってるんじゃないんですか?』
「えっ?何で知ってんの?」
『いやぁ、さっき樹里亜さんに電話をしたら、香さんはリーダーや静香さん達と一緒に京都の京丹後の方に遊びに行ったって言われたんで…』
「ああ、その通りや、まあ、遊びや無いんやけど…で、ルミはどうしたんや?今や飛ぶ鳥も落とす勢いの超有名タレント天城ルミが私に電話を入れるなんて…」
と香はルミの芸名を口にする。
『あ、いや、この間、テレビの取材があって私がお笑い好きだって話からリーダーの話になって…』
「ほぉ、それで?」
『私が知り合いだって言ったら、何か向こうに火が付いたみたいで、一緒にいるところを撮影したいとか言い出して…』
「で、今日、そのテレビ局から電話があって、リーダーは今何してるのかって聞いてきて、居場所を聞いたら、京丹後やっていう話やな?」
『そうなんです、何でわかるんですか?香さん何か怖いです。で、樹里亜さんに電話をした後、私がテレビ局の人に京丹後にいるみたいですって言ったら、『じゃあ、今すぐ行こう!』とか言われてしまって…』
「どないなっとるねん?そのテレビ局?多分、今来たらリーダーに殺されるで…」
『えっ?もしかしてヤバい時のリーダーですか?』
「いや、どっちかというと、その直前やな。」
『それもヤバいですね。』
「そうなんや、せやから今、静香とどうしようかっちゅうて悩んでたところや。」
『そうですか。じゃあ、私も直ぐにそちらに向かいますね。』
「はあっ?ルミ!お前、どっかで頭を打ったんか?ここ、東京とちゃうで、京都の北側やで!」
『わかってます。私、今、ドラマの収録で京都の方に来てたんで、そちらに行くっていう話になったんです。』
「えっ?ホンマかいな?」
『ええ、本当です。で、そのテレビ局も今、超有名になってるリーダーに取材をしたかったみたいなんですが、今日の私の取材担当から、『ここ最近は宮離霧さんの取材予約が一杯で中々取材日が取れなかった、いっつもタイミング悪くて、昨日も他の局に取られた、今日は休みみたいなんだけど居場所がわからない』とか愚痴ってたんで、つい…』
「で、自分が聞いてみましょうかとか言ったんか?」
『すみませ~ん。その通りです。』
電話の向こうで手を合わせるルミが目に見える様だ。
「ちっ、しゃあないな。じゃあ待っとくわ。場所はペンション【ゴースト】ってとこで、スマホで調べたら直ぐにわかるやろ。」
『わかりました、では後程。』
ルミが電話を切る。
「ややこしいことになってきたで。ルミがこっちに来るって。テレビ局連れて…」
「えっ、マジで?!どないするねん、テレビ局来るなんて。千陽子さんテンパるか、キレるかどっちかやで!さっきはチューやんに出くわすし、もうどないなっとるねんここは?」
静香もパニクっていた。
夕方になって、ルミがテレビ局の取材班を連れてやって来た。
ルミにルミのマネージャー、テレビ局のディレクター、AD数名、衣装さん、化粧直しする人、カメラマンさん、音声さん等々が大きめの車二台でやって来た。
「おいおい、ホンマにやって来たで、何やあの人数、完全にルミやらかしとるやん。」
と静香が言う。
地方局かと思いきや、大手の局だった。
「ちょっと、ちょっと!ルミ!」
香がペンションの玄関口で、声のトーンを抑えながら手招きしてルミを呼ぶ。
ルミはチームにいたときも群を抜いてキレイだったが、やはり今は格段に違う。
可愛いグリーンのワンピースを着ている。
「あっ!香さん!お久しぶりです。あ、これさっきも電話で言いましたね。」
「そんなん、どうでもエエねん。早いことテレビ局の人間を隠してえな。リーダーに見つかったらホンマにヤバいから。」
「あっ!わかりました。」
ルミはそう言うと、ディレクターに話をしに行く。
そのディレクターは、中々話が分かる人みたいで、直ぐにペンションのオーナーに取材を申し込み、取材班用の部屋を確保する。
そして、取材班もすぐに部屋へ機材を運び込み、いつでもスタンバイ出来るように準備する。
「エライ手際がエエな。流石、大手のテレビ局は違うわ。」
と静香が感心していた。
「リーダーは?」
ルミが香に尋ねる。
「あの人の動きはわからん、昼のチェックインからずっと部屋にこもって相方とネタの練習をしているみたいや。メンバーの者に偵察に行かせたんやが、部屋の前に近付こうもんなら、あの地獄耳ですぐに気付かれて、部屋から顔を出して来て、一人はケツに回し蹴り、もう一人は頭にゲンコツや。」
「うわっちゃー」
ルミも顔が引き吊る。
「多分、みんなの夕食が大宴会場で用意されてるから、その食事が終わるタイミングでネタの披露をやるつもりやと思う。」
と言うと、どこからか現れた先程のテレビ局のディレクターの飯田という男が話の中に割り込んできた。
「美山さんの推測通り、宮離霧さんはこの大宴会場で新作コントの披露をするみたいですね。」
「えっ?どうしてそれを?」
飯田の言葉を聞いて香が驚く。
痩せてはいるが、着ているポロシャツから見える太い筋肉質の腕はヒョロガリのお坊ちゃんディレクターでないことを物語っていた。
「いやぁ、ここのオーナーに聞いたんですよ、宮離霧さんの取材をしたいって言ったら、『じゃあ、夜に大宴会場でコントやるみたいから撮影したら』って言ってくれて、あ、でも、『宮離霧さんには内緒でね』って言われましたけどね。」
と静かに笑う。
相手の懐にスッと入り込むとは、流石、敏腕ディレクターというところか。
「やっぱり、新作ネタの披露やったんか…それやったら、尚更ヤバいな…」
と香が言うと横にいた静香も、
「ああ、かなりヤバいな。」
と応える。
その二人のやり取りを見て、飯田が反応する。
「ヤバいって、何か問題でも?」
と香に尋ねる。
「あ、いや、それはこっちの話で、テレビ局的にはおいしいかな…なんて、ハハハハ。」
と香は笑ってごまかす。
流石に千陽子がネタで笑わなかったらボコりにくるとは言えなかった。
「そうですか。」
飯田は香達の言葉を鵜呑みにした訳ではないと思うが、とりあえず何も言わずに引き下がった。
夕食は大体午後5時くらいから出来るのだが、本日は午後7時に全員で集合してくださいと館内放送が入った。
多分、皆は肝試しか何かがあるのだろう程度に思っているのであろうが、実は、もっと恐ろしい事が行われようとしている事に気付いていなかった。
知っているのは、ここにいる一部の者だけであり、それを千陽子にもチームの皆にも知られてはいけないというギリギリの状態でのテレビ取材であった。
時計の針が午後7時を指していた。
チームの皆がガヤガヤと言いながら、大宴会場に入って来る。
大宴会場は、外の造りほどオドロオドロしいものではなく普通の畳敷の宴会場で、『大宴会場』とは名ばかりで、大きなホテルの『大宴会場』よりはかなり小さめだった。
だが、チームのメンバーが入るには十分な広さがあった。
出された料理は日本海で捕れた、魚や貝の刺身や、焼き魚等々海の幸が中心となったものであり、普段、こういった物を食べない者にとっては珍しく、また美味しいものであった。
美味しい食事に話も弾む、だが、この場所にリーダーがいないことに気付いたメンバーの者達は段々と口数が減ってきていた。
『リーダーが食事の後に何かをやらかす。』
皆がそう感じていた。
食事が終わる頃には、大宴会場は葬式の会場のようにシーンと静まり返っていた。
次は『クリム&カリスマ』の新作コントがいよいよベールを脱ぎます?ん?ベールを外します?取ります?えっと、何だったっけ?
まあ、新作発表です。
じゃあねえーヾ(´Д`*)




