表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

13/16

第13話 ペンション『ゴースト』

合宿所到着です。

第13話 ペンション『ゴースト』

千陽子達は民宿というかペンションというか、とりあえず、お泊まりする場所に到着した。


洋風の館なのだが、少々寂れた感がある建物で、話によると、千陽子の知り合いが経営しているという話で、格安で泊まらせてもらえるらしいと、教えてもらった。


千陽子達は建物の前に立ったが、かなり大きい建物で、千陽子のチーム全員が宿泊するとなると大きいところで無くてはならない。


「デカイですね。」

エージがその大きさに驚く。

ちょっとしたホテル並みの大きさだ。

「確かに…」

香も、その大きさに驚くが、建物内に従業員が見当たらない。

それに電灯は点いているが、何か、薄暗い。

不気味さだけが強調されている。

千陽子達の車の後に付いてきていた静香達の顔にも動揺が見え隠れしている。

その宿泊施設の名前が建物前のプレートに書かれていた。


ーペンション【ゴースト】ー


「お化け屋敷かよ!」

いきなりエージの突っ込みが冴える。

確かによく見ると、所々お化け屋敷っぽい感じはする。

「はははは、ようわかったな!エージ。そう、ここは、お化け屋敷とペンションがコラボした新しいアミューズメントペンション『ゴースト』や!寝ている間もないくらい、恐ろしい催しが一杯やで!」

「ペンションで、寝ている間もないって、宿泊施設になってないやんか!」

「まあ、そう言うなや、それがここの謳い文句やからな。」

「ああ、そう言うことですね。」

香がそれを聞いて納得する。

「まあ、とりあえず、中に入ってチェックインや!」

千陽子だけがノリノリの感じであるが、チームの者達は、眉を潜めながら建物内に入っていく。

全員が建物内に入ると、薄暗かった電灯が全て消え、非常口の電灯だけが点灯する。

そして出入口ドアの方から『ガチャン』という音が聞こえてきた。

そして、その直後、みんなが集まっているそのフロアに館内放送が流れる。

その声はまるで地の底から響いてくるような恐ろしい声で皆に語りかける。

『ようこそ、ペンションゴーストへ!ここは昔、大きな火事があり、多くの人が亡くなったホテルだ、ここには、未だに成仏出来ぬ地縛霊が漂っている、君達は、今日からこの恐怖のペンションで、世にも恐ろしい体験をすることになるであろう。』


館内放送が終了した。

確かにお化け屋敷感がある。

だが、ペンションとコラボするとは、ここの経営者の頭の中身はどうなっているのであろうか。

「ここの経営者は、ワイの昔の知り合いでな、飯代は自分達で用意してくれたら宿泊代はタダにしてくれるって言われてな、まあ、何か試験的な感じで、ワイらにモニターをやってもらいたいらしいわ。」

と千陽子が説明する。

「はあ、なるほど、じゃあ、このペンションで以前大火事があったとか、人が亡くなったとか言うのも設定なんですね?」

と香が千陽子に聞く。

「いや、それは…どうだったかな…」

千陽子の顔が困ったなというような表情になる。

「えっ?まさか、大火事があったっていうのは本当にあった事なんじゃないですよね?」

とエージが聞く。

千陽子のその顔は緊張で引き吊っていた。

「ノーコメントで。」

「言えよ!」

とエージが再び突っ込む。

とその時、バン!という大きな音が横から聞こえてきた。

何人かが、その音に驚き、小さな悲鳴が聞こえた。

みんながそちらの方を向く。

先程まで暗くて分からなかった場所が、明るくなりペンションのフロントがあることに気付く。

そして、そこに、長い髪の毛が顔の前に垂れ下がり、ほとんど表情が見えない様な女性が立っていた。

このペンションの従業員であろうか、古ぼけた様な制服のようなものを着用している。


「いらっしゃいませ、この度は、ペンションゴーストをご利用は頂きまして誠にありがとうございます。」

とその女性従業員が服装や髪型に似合わず丁寧な挨拶をする。

「ああ、やっとまともな感じがしてきたよ。」

とエージがその挨拶にホッとする。

さらに従業員の説明は続く、

「ここで、あった事はペンションの客を増やす意味でも話していただいて結構ですが、もし、御宿泊中に不慮の事故で怪我をしたり、亡くなるような事がありましても当ペンションは責任は持ちませんので、悪しからずご了解下さいませ。」

と説明すると、何人かは、

「不慮の事故で亡くなるようなって、今までそんなことあったのか?」

「責任を持たないって、それほど事故や事例が多いってことなのか?」

「それって、悪霊のせいで取り憑かれた人間が呪い殺されるってこと?」

等と口々に話している。

まあ、これだけ不気味なペンションだからそんな風に思ってしまっても無理はない。


「事故があっても責任を持たないって、それも設定ですよね?」

と香が千陽子に尋ねると、千陽子も、

「うーん多分…」

と答えを濁す。


「責任持てよ!って言うか、このペンション、ちょっと怖エーよ!」

とエージも突っ込みまくる。


「エージ君、ちょっと。」

香がこそっとエージを呼ぶ。

「どうしました?」

「ちょっと、このペンションヤバくない?」

「それは私も思います。」

「逃げた方が良いと思うんだけど?」

「そうですね。ただ千陽子さんから逃げ切れるかどうかなんですよね。」

「確かに…」

香も千陽子の怖さは知っている。

ペンションから逃げても、捕まれば、岩壁から海に叩き込まれるのは必至である。

下手をしたらローンの残っている自分の軽四乗用車を海に沈められる可能性もあるのだ。

だから、そんなギャンブルのようなことはしたくもない。

「とりあえず、逃げられないにしても、この施設の造りを見て回って知っておくのも危機回避をするためには必要かなと思うんですけど?」

とエージが香に提案する。

「そ、そうだな。じゃあ、チェックインした後で、一階のホールに集合しよう。」

香もエージの提案に賛成し、集合場所を決める。

しかし、その思惑は千陽子により、一瞬で消し飛ばされる。


千陽子が考えたという部屋割りの紙が配られたので、それを確認しようとした時、千陽子から声をかけられる。

「エージ喜べ、ワイと一緒の部屋や!」

と千陽子が言う。

「えっ?僕、男だし、一人部屋じゃないの?」

エージの顔が真っ青になる。

「アホ、何、色気付いとんねん!ワイとコントの練習のための合宿や言うたやろ!一人でおったら、遊ぶことばっかり考えてまうやろが!」

「いや、そんなことはしないけど、コントの練習って、他の人もいるんでしょ?」

「いや、おらん。」

「えっ?」

「ワイとお前だけや、せやから好きなだけ練習出来るで。」

と千陽子はニヤリと笑う。

「………」

完全に詰んだ。


隣で聞いていた香も、諦めから目を伏せた。


「あ、いやさ、せっかく海の見えるペンションに来たんだし、ペンションのモニターをするって言っているだから、夜は肝試しとかしないとダメなんじゃ?」

千陽子といるより、肝試しの方が何倍も怖くない。

だからエージも必死で、コント漬けになることを回避しようとする。

「お前、そんなことはこのペンションのオーナーに任せとったらエエねん。夜はおもろいことを企画しとるみたいやからな。」

「あ、そ、そうなんだ。」

エージの目論みが消える。


「千陽子さん、せっかくコントの練習しに来たんですから、夜はみんなの前でコントを披露してもらえたりするんですか?」

「えっ?あ、ああ、そ、そうやな、それは考えてなかった。」

千陽子が香の急な申し出にやや慌てている。

香はその様子に少し違和感を感じる。


『これは?ははあ…』

香は何かに気付いた様子であったが、すぐにその気配を消す。

そして、

「じゃあ、千陽子さん、私がオーナーに言って今晩の宴会場を貸し切りにしてもらってきますね。」

「えっ?は?ちょ、ちょっと、それは…」

かなり千陽子が(あせ)り始める。

それを見て香は確信する。


『この焦りよう、間違いない、リーダーは何かを隠している。それも、エージ君を自分と一緒の部屋にした事に何か関係している。』


香の部屋は静香と一緒であった。

「リーダーが何かを企んでいるで。」

と香は静香に耳打ちする。

「ホンマかいな?」

「間違いないわ。」


しばらくして、みんながそれぞれの部屋に入っていった。


ここは千陽子とエージの部屋。

千陽子が、大きな荷物を置きながら、

「ふーヤバい、ヤバい、危なくバレるとこやったわ。」

「何か言いました?」

エージが千陽子の独り言に反応する。

「いや、なんでもない。気のせいや。」

千陽子は、自分の携帯を取り出しどこかに電話を始め出した。

「あーワイや、今夜の…おう、頼むで、わかった。ほんならハイハイ。」

何やら訳のわからない会話で終わってしまった。

そして、電話を切ると、いきなりエージに喋りかける。

「エージ!今から練習するで、この間出来たっちゅう新しいネタの練習や!」

「えっ?あれを?まだ、使わへんとか言うてた奴とちゃうん?」

「アホ、使わへんとか言うてない、使う理由がなかっただけや」

「そうなんや。じゃあ千陽子さんは今回はホンマにコントの練習をしに来たんですね?」

「当たり前や!ワイを何やと思っとるねん?」

「いや、前回の合宿とは名ばかりの拷問が目の前にちらついてしまって。」

「何、しょうもないこと言うとるねん、今日は、客もいっぱいおるから、失敗もでけへんで!」

「えっ?客?何それ?」

「はっはっは!自分等には内緒にしてたけど、今からあのネタを練習して、今晩、大宴会場で、ワイらのネタをチームの奴等に見てもらう!」

「ええー!?うそ?」

「ホンマや。」

エージは千陽子が何か良からぬ事を企んでいると思っていたが、今回は完全に予想が外れた。

まさか、真剣にコントの練習をして、さらにそれを本当の客に見立てた自分のチームの人間に見てもらうという、実践形式の訓練まで用意していたのだ。

「千陽子さん…」

エージもこんなに本気の千陽子を見るのは初めてであった。


コンコン

部屋の出入口扉がノックされた。

「千陽子ちゃん、持って来たよ。」

男の人の声だ。

「おっ、来たな。あいよーちょっと待って!」

と言いながら千陽子は、部屋の畳の上に置かれた鞄やスーツケースを飛び越えながら、扉まで跳ねていく。


扉を開けると、そこには作業服を着た中年男性が立っていた。

年齢は50歳過ぎくらいか、冴えないオッサンという感じである。

イメージ的にはそこら辺にいる中年サラリーマンと言った方が分かりやすいだろうか、頭部がやや寂しい感じで、人物的にはあまり千陽子と接点があるようには見えない。

そして、その手には何か大きなビニール袋を持っている。

「これ、頼まれたもの。」

と言ってその男性が千陽子にビニール袋を渡す。

「サンキュー、チューやん、恩にきるわ!」

と言ってほっぺたにキスをする。

「えっ?」

驚いたのはエージである。

普通、千陽子のイメージからは程遠い行為だからだ。

キスをされたチューやんは、顔を真っ赤にしながら、

「ま、また、な、何かあったら言ってね。」

とモジモジしながら、千陽子に言うとそのまま手を振って帰っていった。


「あの人誰?」

エージが聞くと、千陽子は、

「ああ、チューやんは、うちの店『ファンタジー』のお客さん。コントの衣装が無いって話をしたら、『じゃあ俺の会社で作ってやるよ。』とか言って作ってくれたみたい。」

「えっ?俺の会社?ってさっきの人、会社の社長さん?」

「うん、あんまりよう知らんねんけど、結構有名な子供服のブランドらしいよ。」

「えっ?まさか?」

エージはチューやんが持ってきた袋を見た。

「こ、これは!」

そこには某有名子供服メーカーのロゴが印刷されていた。


「千陽子さん、何やらかしてんの!?これ、全国的にも、めっちゃ有名なメーカーやん!えっ?そこの社長さん?」

とエージが言いながら、窓から外を見る。

ペンションの入口の前に高級外車が止まり、横に人が立っている。

しばらく見ていたら、チューやんが建物から出てきてその車に乗り、帰って行った。


中の衣装も確認したが、その衣装にも、ロゴのタグが付けられていた。


「ホンマもんや。」


エージは走り去っていく、その車を見つめていた。


次回はもう一人の『スターセブン』の幹部メンバーが登場します。


次回まで⊂(・∀・⊂*)さいならー

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ