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歌姫様は男の娘!?  作者:
第2章
14/27

第11話

投稿が遅くなって申し訳ありませんでした。

 襲撃されてから3日。

 私はカールとの交流を制限されてしまった。


 カールが本格的に覚醒した後改めて聞かされた彼、改め彼女の生い立ちには未だに複雑な心情だ。

 彼女の本名はスカーラ・ムズィ・カーレ・ヴォカーロ。

 つまり、カールは私の従姉妹にして、この国の第1皇女殿下だったのだ。


 目覚めた後に少しだけ事情を説明してくれたけれど、怪我が治って間もないカールの体調が優れず。

 すぐにアルトさんから暫くカールは絶対安静なので会えないことと、あの男の人たちが捕まるまでは私も安全のために自宅に籠もっているように命じられて家へ帰されてしまった。


 それから3日間、私はカールのことばかり考えている。

 彼女は私が男だと知っていた。それでも、偏見を持たずに女として接してくれていたことを嬉しく思う。

 それについては彼女曰わく「カントはカントだ。男であろうが女であろうが関係はない」だそうだ。

 寧ろ、自分の方こそ騙していてすまなかったと頭を下げてきた。


「我はただ、女の格好は動き難くて性に合わないからこういった服を着ているだけなのでな。お主に不快な思いをさせるのではと柄にもなく不安になってしまったのだ。それに、女だと分かれば練習相手としての価値が無くなってしまうだろう?」


 そう言うカールの表情は本当に申し訳なさそうで、彼女が本心から言っていることが感じ取れた。

 しかし、私だって自分が本当は男だということを彼女に伝えられていなかったのだし、おあいこだと思う。

 寧ろ、知らなかったとはいえ、皇女である彼女に対して失礼な態度を取っていた私の方こそ謝るべきだ。

 そう結論を出した私も慌てて頭を下げた。


「私の方こそ申し訳ありません。皇女様に失礼な態度をとっておりましたことを心よりお詫び申し上げます」


「よい。我はそなたに対等な立場で接して貰いたいのだ。寧ろ、これをきっかけによそよそしい態度を取ることの方が我の心象を悪くするぞ」


「で、でも・・・」


「我が良いと言っているのだから良いのだ」


 そう言って、結局カールに押し切られ、これまで通りに接することになった。

 それについては、本当に良いのかな?と思わないでもないけれど、だからと言ってカールと距離を取るのも悲しい。

 それなら、やっぱり彼女の言う通りに行動するのが良いのだろう。

 ただ、そうなるとこれからカールに対してどんな風に接していくかが問題だ。

 彼女は、私とは違って実用的だったから男の格好をしていたに過ぎない。

 それならきちんと女の子扱いをするべきなのだろうか。


 でも、彼女が望んでいるのはこれまで通りの関係だ。それならば、いままで通り男の子として対応するべきだろうか。

 ここ3日。悶々とそのことについて考えているけれど、一向に答えは出ない。

 そんな不毛とも言える疑問について今日もまた考えていると、部屋をノックする音が聞こえた。

 それに反射的に返事を返す。


「っ!はい」


「失礼します。お嬢様、スカーラ様からお呼びだしがかかっております」


「・・・え、あっ!スカーラってカールのことか。分かったわ、直ぐに仕度をするから馬車を用意しておいてください」


「承知いたしました」


 部屋から出て行く使用人さんを見送りつつ、私はそっと肩から力を抜く。


 あー、失敗した。

 聞き慣れない呼び方だったから咄嗟に反応出来なかったけど、カールって本名はスカーラなんだよね。

 こういうところもこれからは直さないといけないだろう。知り合いだけの場所ならともかく、公の場で彼女をカールと呼ぶのは良くないだろうし。

 と、そんなことを考えている場合じゃない。早く支度をしないと。


 それにしても、いったい何の用だろう?暫くは会えないと言われてていたから、もっと時間がかかるのかと思っていたのに。あ、もしかして、あの男の人たちが見つかったのかな。


 それなら、またあの林で彼女と会うことが出来るのかもしれない。

 そんな期待を膨らませながら仕度をする。

 いくら公爵の子供とは言っても、いや、公爵の子供だからこそ、皇宮に行く時にはしっかりとした服装をしていなければならない。

 何時もはこういう時に相談に乗ってくれる母様は出掛けているのか見当たらなかったため、仕方なく自分で服を選ぶ。

 とりあえず、男の子にも見える服を着て行った方が良いだろうから、前にパーティー用にと買って貰ったフェミニンなスーツで良いかな。

 あとはこの耳飾りと、腕輪を付けて。こんなもんかな?


 衣装部屋に備え付けてある大きな姿見に映る自分の姿を何度も見返し、変な所が無いことを確かめる。

 うん、多分大丈夫だろう。そう自分の姿に及第点を点け、急いで外へと向かう。


 カールに出会うまでに男の人に会わなければ良いのだけれど。


 道すがら、そんな不安が頭を過ぎる。皇宮には自宅や学校とは違って男の人が多いはずだ。

 そんなところに一人で行って、無事にカールの居場所までたどり着けるのだろうか?

 そんな少しの不安を抱きつつ、前庭に停めてあった馬車へ乗り込む。

 すると、そこには何故か父様と母様が座っていた。


「ど、どうして父様たちがここに?」


「どうしてってそんなの決まってるでしょ?大切な娘を魔窟に住む化け物たちから守るためよ」


「化け物って・・・」


 恐らく母様は皇宮にいる人たちのことを言っているのだろう。

 たしかに、前世では貴族は古狸の集まりみたいな表現をされることもあった。

 でも、だからって化け物と表現するのはいかがなものだろうか。


 そうは思うものの、母様たちが一緒に行ってくれるのは正直とても有り難い。

 これで、カールのところへたどり着く前に倒れるなんて失態は犯さずに済むだろう。

 私は、感謝の言葉を口にする代わりに母様の腕にしがみつくようにして座った。

 そんな私の頭を、母様が優しく撫でてくれる。

 

 その横で、父様が複雑そうな顔をしていたけれど、今は気にしないことにした。

 父様の価値観では、男なのに女のように振る舞う私は異質なものに写るのだろう。

 でも、そんなことをいちいち気にしていたのでは生活出来ないから、なるべく父様やバリー兄様からのこういった視線は気にしないようにしないと。

 そう、自分に言い聞かせる。




 皇宮に行くことに不安を抱いている私を落ち着かせるため、歌い始めた母様と一緒に歌っていると、思っていたよりも早く皇宮にたどり着いた。


「お待ちしておりました」


「久しぶりね、アルト。元気にしてた?」


「はい。リリカ様もお変わりないようで安心いたしました」


 馬車から降りた私たちを出迎えてくれたのはアルトさんだった。

 恐らく、私の体質を心配して待っていてくれたのだろう。

 本来ならそのことにお礼を言うなり、挨拶するなりしなければいけないのだけれど、私は視界の端に写った門番さんたちに怯えてろくな反応を示せないでいた。

 恐怖で今にも遠のきそうな意識をどうにか繋ぎとめ、気絶してしまわないよう必死で父様の背中へ顔を埋める。

 せっかくカールに付き合って貰って男の人に慣れる練習をしたのに、全然進歩が見えない自分に愕然とした。

 最近は家の使用人さんにそこまで反応しないようになったと思っていたけれど、どうやら男の人に慣れたのでは無く、家に通っている使用人さんに慣れてきただけだったようだ。


「カンタービレ様たちをお連れいたしました」


「うむ。入れ」


 父様の背中にしがみつきながらどうにかたどり着いたカールの部屋。

 そこは、3日前に訪れた時と変わらず豪華だった。

 その豪華な部屋の、これまた豪華なソファーにゆったりと座るカールは、王子を通り越して王者の風格を漂わせていた。

 そんな彼女になんだか気後れしてしまい、父様の背中越しにこっそりと盗み見る。

 すると、彼女と目が合ってしまった。


「カント、おいで?」


「・・・っ!うん!」


 思わずびくっと、身体を振るわせたけれど、予想以上に優しいカールの声に、怯えていた心が弾むのを感じる。

 勢いに乗った私は、ポンポンと自分の膝を叩くカールの誘いに甘え、思い切って彼女の胸元へと飛び込むように抱き付いた。

 そうすると、カールは何時ものように腰へ腕を回すと、優しく頭を撫でてくれた。

 その感触に嬉しくなって、ついつい笑みが零れる。


「えへへへ」


「・・・・・・・・・」


 無言でひたすらなでなでしてくるカールに、変わらないなと思う。

 そりゃあ、3日でそうそう人は変わるものじゃないのは知ってるけど。

 でも、あんなことがあった後だから、もっと違う反応があると思っていた。

 でも、それはどうやら私の考え過ぎだったみたいだ。離れていたのはたった3日だというのに、凄く久しぶりに触れ合えた気がして、猫のようにゴロゴロと喉を鳴らしたい気分でカールの胸に甘える。


「・・・スカーラ様、そのくらいにして下さい。これでは話が進みません」


「あ、ああ。・・・そうだな」


 暫くそうして甘えていると、横から呆れたようなため息混じりのアルトさんの声が投げかけられた。

 その言葉に、カールが撫でてくれていた手を離す。

 それにとても寂しい気持ちになったけれど、アルトさんの言葉ももっともなので我慢する。


 でも、話ってなんのことだろう?やっぱりあの男の人たちのことだろうか。


「まずはテノーレ叔父上、リリカ叔母上、そしてカンタービレ。我の招きに応えていただいたこと、感謝する」


「皇女の要請を跳ね退けるわけにもいきませんので。ですが、話の内容によっては賛同できぬこともご理解いただきたい」


「うむ。当然だな。我は無理強いはせぬよ。さて、いつまでも客人を立たせておくのも失礼だ。こちらへ座って楽にして欲しい」


「では、お言葉に甘えて」


 父様とカールの静かで、でもなにか不穏なものを感じる言葉のやりとりに動揺している間に、話がどんどん進んでいく。

 それにオロオロしていると、「その態勢じゃ話難いでしょうから、あなたもきちんと座りなさい」と母様に促され、とりあえずカールの横へと移動した。


「それでは聞かせていただこうか。私たちの子供にどのような要件があるのか」


「・・・もちろん、この間の不届き者共のことだ。あやつらの背後関係がだいたい特定出来た」


「ふむ、それで?」


「だが、そうそう手出しが出来る相手ではなかったのでな。悪いが長期戦になりそうだ」


 カールはとても苦々しそうな表情でそう告げた。

 その表情から、父様も相手の厄介さを感じ取ったのか、表情を厳しくする。

 けれど、カールの方は直ぐに表情を改め、いたずらっ子のような少し含みのある笑みを浮かべると、何故か私の方へと視線を移した。


「そこで、カントの身の安全と地位向上のため、我の側付きに任命することとなった」


「えっ」


「ちょっと待って!カントは男性恐怖症なのよ?こんな人の多い場所なんて」


 カールから告げられた言葉の衝撃で固まることしかできない私に代わり、母様が抗議の声をあげる。

 側付きになれば、カールの側にずっといることが出来る。それはとても魅力的だ。

 けれど、この部屋に来るまでの短い間でさえも、いつ男性に遭遇するかと恐怖に打ち振るえていたのに、謁見も仕事の内に含まれる皇女であるカールの側付きなんかになったらどうなることか。


 少し想像をしてみて、とてもではないけれど出来そうに無いと顔から血の気が引くのを感じた。


 なのに、カールは顔面蒼白となった私にとても優しい表情で語りかけてきた。


「カントの事情は十分承知している。だが、そなただっていつまでもこのままではいけないと思っておるのだろう?」


「そ、れは」


 たしかに、カールの言うことは当たっている。

 私だって、いつまでもこのままじゃいけないということは分かっているし、カールと仲良くなった動機も男の子に慣れることだった。


 でも、いきなり公の場で男の人に会うのは。


 そんな私の葛藤などお見通しだったのだろう。カールはそっと私の頭へ手をやると、安心させるようにやんわりと撫でてくれた。


「だが、我もそなたへ無理をさせるつもりは無い。我に慣れていったように、他の男の存在にも少しずつ慣れていけば良いのだ。だから、カントはこの部屋だけに通えば良い。神官の勉強は我の乳母が教えるし、我もなるべく側にいる」


「それでも、全く男と会わないわけではありません。それに、命を狙われているあなたと共にいさせれば、カンタービレが危険だ」


 どうしようかと困惑していると、父様がカールの言葉の合間を縫うように言葉を挟んできた。

 その表情はとても真剣で、本気で私のことを心配してくれていることを感じることが出来た。

 私のことをあまり良く思っていないと思っていた父様から、そんな風に心配して貰えるとは思っていなかったから、不謹慎だとは思いつつ、ついつい顔が緩みそうになる。


「そうだな。だが、カントはやつらの顔を見ている。いずれにしても命を狙われる可能性は高いだろう。それならば、警備が厳重なここにいる時間が多い方が安全であろう?」


「・・・それで、あなたに何の得があるのだ?」


 私が自分の表情筋と戦っている間にも、父様が鋭く射抜くような視線でカールを睨む。

 普段から厳しい表情の多い人だけれど、ここまで怖い表情を初めて見た私は、緩みかけていた表情を凍らせ、恐怖で震え上がる。

 一方、その視線を一心に受けているはずのカールは、何時もの飄々とした表情を崩していない。

 この人は、どれだけ肝が座っているのだろうか。


「もちろん。カントの歌をいつでも聞き放題だということだ。そのうえカントを独り占めできる。いいことずくめではないか。寧ろ、我には得しか無いと思うのだがな?」


 父様の眼力をものともせず、カールはおどけたように答えた。 それに対して父様は怒るでもなく、ただ、その表情から何かを読み取ろうとしているかのようにじっと、カールを見つめる。

 けれど、暫くすると諦めたような表情を浮かべ、一つ大きなため息をついた。


「・・・はぁ。良いでしょう、カンタービレを姫様の側付きに出しましょう」


「そうか。感謝する、テノーレ叔父上」


「ただし、この子が万一死ぬようなことがあれば、私があなたの息の根を止める。そのことを肝に銘じておいてください」


 その言葉が真実であることを父様の真剣な目が物語っていた。

 それに対し、カールはそれまでのからかうような雰囲気を収め、凛とした王族の顔で答える。


「ああ。我の命と、なにより皇族としての誇りに賭けてカンタービレを守ると誓う」


 父様は、その言葉の真偽を確かめるように再びじっとカールのことを見つめた後、静かに頷いた。


 こうして、私は皇女様の側付きとなったのである。


魔のゴールデンウィークがやっと終わったぞ~!!


はい、すみません。ちょっと仕事忙し過ぎてテンション可笑しくなってました。

活動報告には一応あげておいたのですが、仕事の都合で投稿が遅くなってしまって、申し訳ありませんでした。

昨日から落ち着いてきたので、最終チェックしてどうにか投稿までこぎ着けました。

次回からはここまでお待たせすることは無いと思いますので、今後とも宜しくお願い申し上げます。

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