21 いざ、旅行へ!
今日のあたしのダンスのレッスンは、秋香さんの計らいで午前中にしてもらったから、午後から宏樹さんの別荘に行く事になりましたー!!
「なんで、俺が運転なんだよー!」
「煩い。俺は早朝から仕事あったんだから、お前が運転してもいいだろ。俺寝るから、はい! おやすみ!」
宏樹さんから、ファミリーカーを借りて運転席と助手席で声を荒げてるのは、兄ちゃんとジュンくん。
このメンバーで車の免許を持ってるのは、兄ちゃんとジュンくんだけだから、くだらない喧嘩が繰り広げられてる。
そして現在! しずくちゃんも来て6人で、宏樹さんの家の別荘に向かってる最中。
あたしの姿と言えば、逆変装をしてまして……フルウイッグだと頭が蒸れて、暑いしプールにも入れないって事で、髪の毛の襟足に簡単なウイッグを兄ちゃんが装着してくれた。
「ねぇ、あたしが普通にしてても、ジュンくんにユキってばれない? 普通に声出して大丈夫なの?」
「んー。どうだろうね?」
小声でしずくちゃんに聞いてみたけど、そんな事を聞かれても分かる訳ないか。
ウーン、と悩んでるしずくちゃんは何か思い立ったみたいで「あっ!!」と声を上げる。
「ねぇ、幸ちゃんはユキくんと仲良くないのー?」
「え?! ゆ、ユキ?!」
突然しずくちゃんが大きな声で、あたしの名前? である名前を言い出して挙動不審な声が出る。
そんなしずくちゃんの声に驚いたのは、あたしだけじゃなくてギョッとした顔で前の座席に座ってた大輔くんとノブくんがこっちを見る。
「あー。ユキから、幸ちゃんの話ってそういえば聞いた事ないなー。従兄妹なんだろ? なー? ダイ?」
なんか、ノリノリでノブくんが話に乗って来た。
さっきまで、幸として会ってからあたしと話そうとしてくれなかった癖に、こことぞばかりに。
絶対にあたしでからかって、遊ぶつもりだ。
「幸ちゃん?」
「あぁっ?! うん?」
しずくちゃんに呼ばれて、ユキとの関係を話すのを忘れてた事に気付く。
「仲は悪くないかな? うん」
と、当たり障りのない事を言ってみる。
「ねぇ、ユキくんってやっぱ学校じゃあモテモテ?」
……こ、これは。同じ学校ってパターンの会話でいいのかな? そんな打ち合わせもしてないから、自分の話しとけばいいのかな?
「なんか、毎日……女の子から、お昼にお弁当貰ってるところよく見るよ」
うん。別にあたし体育会系なわけでもないのにお弁当を頂く。
そんなに食い意地があたしは、張ってるように見えるのかなぁ……まぁ、お昼に食べれなくても、帰りに食べるけど。
「告白とかはー?」
こ、告白……。
そう、それなんだよね。
3年になってから告白されるの増えたんだよねぇ。
学校で制服のスカートで、動くのが面倒だからジャージで過ごしてるせいか、本気であたしを男だと思って、あたしが女だって知らない下級生がさ。
「前までは兄ちゃんに間違えられて、よく声かけられたみたいだけど、最近は告白とかもあるみたい」
あたしがね! と声を大にして言いたいのを我慢してると、大輔くんが口を開く。
「それは、実話?」
「そ、そうですけど……」
あたしの話かって事で、聞いてるんだと思うけど聞いといて驚かないで欲しい。
「やっぱ、モテてるんだな。女にっ……ぷぷぷ」
ノブくんなんか、ガッツリ笑いこらえてて肩震えてますけど。
それにあたしがユキの話で、ワザワザ話を作れるほど器用じゃないよ。
あたしの顔は、兄ちゃんとそっくりで兄ちゃんみたいに、ツンとしてなきゃモテるのはなんだか納得いかないけど、普通に女の子に接してればモテるに決まってる。
別に学校の男子にモテたいと思ってるわけじゃないけど、同性より異性に告白されたほうが自慢になるよねぇ?
まぁ、今の会話の場合だとユキの話だから、まだいいのだろうけど大輔くんとノブくんにはあたしが告白されてるって、分かってるんだよなぁ……。
「ねぇねぇねぇねぇねぇ! 幸ちゃんもモテるんでしょーー?」
運転席からジュンくんが叫ぶ。
……今の話は全部あたしの話なんですけどね。
あたしは全然と言おうとしたら、兄ちゃんがジュンくんの頭をぽかり。
「煩い! お前は幸に話しかけるな。黙って運転してろ」
「いでっ! 殴るなよ! なんだよ、このシスコン黙って寝てろよ!」
「あぁっ?!」
兄ちゃんのどこがシスコンなんだろうか?
そして、兄ちゃんとジュンくんのこの微妙な絡みは仲がいいんだか悪いんだか。
まぁ、あたしの話はユキとして話しちゃったし、やっぱりジュンくんは無視しとこう。
「さぁーーちちゃぁぁん! 無視しないでよううぅぅ!」
……無視して正解だ。
そんなこんなで、目的地に到着です。
湖はあるし、近くには遊園地あるし、富士山見えるしなんていい所!
そして、宏樹さんの別荘は広すぎる!
別荘と言うか、豪邸? プールがあるって聞いてたから、でかいとは思ってたけどこれほどまでデカいとは……。
「3バカはゲストハウスの方の部屋使ってねー! 私と幸ちゃんと悠真さんは、メインの部屋使うから」
「その3バカって、俺らの事?」
ノブくんがかなり嫌そうな顔で、しずくちゃんを見る。
「そうそう。ジュンくんはともかく、私も3バカって言うの気が引けたんだけど、秋香さんにそう言ってって頼まれたからそのまま伝えたよー」
「なんで、俺はいいんだよ!」
誰の事を言ってるのかと思ったら、クリスタルのメンバーの事を3バカって呼んだらしい。
秋香さんにそのまま伝えてって、言われたからそのまま伝えるしずくちゃんも大物……って、そうか、宏樹さんの娘だった。
しずくちゃんは、可愛い女の子って感じより、やっぱり秋香さんと親戚なだけあって、しっかりした女の子だなぁ。
もうちょっと身長あったら、あたしと同じで女の子に、モテそうなタイプな気がする。
あたしも、もう少し背が低かったら、ちゃんとした女の子に見えてたかなぁ?
なんて凹んでたのは一瞬の出来事で、メインハウスの部屋に案内してもらえば、感動と驚きですっかり忘れる。
「すごーい! なにこの家!」
あたしの表現力の無さでは表現出来ない位すごい。
玄関はあたしの部屋位の大きさでなんか、床がピカピカしてるし、目の前の階段をあがってみれば、無駄に広いって言い方変だけどパーティールームって言うの? それをしずくちゃんに聞けば「リビングだよ」って、普通に言われるし。
そのしずくちゃん曰く、そのリビングのにある窓の所を開ければ、これまたデカいバルコニーが。
今夜はそのバルコニーでバーベキューをノブくんがしてくれるって。
ノブくんには悪いけど、ノブくんがバーベキューしてくれる事に安心したよ。
凄い料理人とか、出てきたらどうしようかと思った。
「兄ちゃん、金持ちってすごいね……」
「おう……」
「2人で、何話してるのー? あ、部屋は1人1部屋あるから、好きな部屋使っていいからね」
「ありがとー」
「じゃあ、部屋に荷物置いたらリビングに集合ねー?」
なんか、素敵すぎる別荘にかなり驚いたけど楽しめばいいよねーー!
部屋に荷物を置いてリビングに行くと兄ちゃんが既にもうそこに居た。
「ねぇねぇ、兄ちゃん来る途中にあった、遊園地って遊び行けたりしない?」
来る途中にあった遊園地は、絶叫系が人気の遊園地だから絶叫好きのあたしとしては、行けるなら行ってみたい。
「言うと思った。お前、その姿だと俺としずくちゃんとしか、遊園地に行っても行動出来ないのわかってる?」
……この姿。
兄ちゃんがちゃんとしてくれたから、女の子に見えるのからクリスタルのメンバーと行ったらやばいって事か。
でも、別に絶叫に乗れるなら、誰と行動してもかまわないけどなぁ。
「幸ちゃん、ごめん。絶叫系、私無理なの……」
荷物を置いて来て、あたしと兄ちゃんの話を聞いてたしずくちゃんがあたしに声を掛ける。
「え?! そっか、それならしょうがないよねぇ。じゃ、じゃあ……兄ちゃん?」
「俺も嫌いなの知ってるだろ?」
ですよねぇ……。
流石に一人で遊園地行って、はしゃげるほどの勇気は持ち合わせてないしなぁ。
すぐそこに、遊園地あるのにぃぃぃっ。
「何の話してるのー?」
ゲストハウスに荷物を置いてきた、大輔くんを筆頭にクリスタルのメンバーがリビングに入って来た。
「兄ちゃんとしずくちゃんが、絶叫系が無理って話を……」
ぼそっとその事を言うと、兄ちゃんが言葉を遮る。
「幸! こいつらに、余計な事を言うなよ」
余計な事? 別に一緒に行こうとか言ってる訳じゃないし、別にいいんじゃん。
「あー。幸はあそこの遊園地行きたいのか?」
急に出て来たノブくんにドキッとしつつもコクりと頷く。
「お前ら、乗れたっけ?」
ノブくんが、大輔くんとジュンくんに聞く。
「嫌いじゃないんだけど、流石にあそこのはなぁー」
「俺は乗ろうと思えば乗れるけど……ノブはどうなの?」
「お、俺?! いや、え?」
大輔くんに聞かれて、顔を真っ赤になるノブくん。
ん? 別に赤くなる所じゃないと思うんだけど、なんで真っ赤になった?
「ぶっ! だ、ダイっ! ノブが顔真っ赤にしてるぞ! かなり、ウケるんだけど。ノブも遊園地行きたいの? 行きたいなら素直にそう言えばいいのに」
「いや、あーー! 笑うなよ!」
うるせー! と言いながら、ジュンくんを小突くノブくん。
あ、ノブくんも遊園地行きたかったんだ。
いつも、大人っぽく仕切ってるから行きたいって言うのが、照れ臭かったのかな?
なんか、イイ物を見た気分。
大人ぶってても、ノブくんもまだまだお子様でちゅねー! ぷぷぷ
「それでも、幸とノブでは行くなよ!」
「わ、わかってるよ!」
兄ちゃんに注意されて、プイっと後ろを向いてキッチンの方にノブくんは行ってしまった。
そんな態度のノブくんを見て、みんなは爆笑してる。
「あー! うるせーな。ジュンは火の準備して、ダイはこっちに早く材料持って来いよ!」
「はいはいー」
キッチンから、ノブくんの叫び声が聞こえると、ジュンくんと大輔くんは笑いながら返事をする。
「あれ? あたし達は何にもしなくていいの?」
「大丈夫だろ。なんか、午前中に家で野菜切ったり、ノブがなんかやってたらしいし」
……じゃあ、いいのかなぁー?
「じゃあ、俺はレポートあるから準備出来たら呼んで」
「あ、うん」
兄ちゃん、ここまで来て勉強ですか……。
「しずくちゃんは、何するのー?」
「ゲストハウスのお風呂の方が広いから、今のうちにそっち行こうかなって! 幸ちゃんも行く?」
「行くっ!」
お風呂セットを抱えて、ルンルン気分でゲストハウスに向かう。
……向かう? うん。着いた。だけど、何か忘れてる。
「あっ! しずくちゃん……あたし、まだお風呂入れない」
「えっ? なんで?」
「あたし、メイク出来ないし、ウィッグ外したら付け方わかんない……」
「悠真くん、呼ぶ?」
「ううん。兄ちゃん、勉強するって言ってたし……あたし、ここで待ってるよ」
ごめんねぇ。
と言いながら、しずくちゃんはお風呂に入って行った。
しかし、ゲストハウスも広いなぁ。
部屋数はメインよりは少ないけど何が違うんだろ? こっちの部屋も見てみたい……覗いちゃおうかな?
「その部屋を覗くのは止めときな」
「えっ?」
一つの部屋のドアのぶに手を当てて、開けようとした時に後ろからあたしの手の上から握られて制止される。
「そこ、ジュンの部屋だから」
ジュンくんの部屋?
驚いて顔だけ後ろに向けると、ノブくんがガッチリあたしの手を掴んでる。
「ジュンの部屋が凄いって、聞かされてるだろ?」
「アンアン、ぶーぶー……?」
「それを女が口に出して……あっ?!」
あたしの言葉を聞いて、パッと手を離してノブくんは後ろを向いてしまった。
「そ、そっちと、こっちの部屋はダイと俺のだから、見たかったらそっち見ろよ」
「うん?」
今さっき来たばっかりで、そんなに部屋って凄くなるものなのかな?
まぁ、いいや。
じゃあ、ノブくんが居るからノブくんの部屋見せてもらおーっと!
「わー。こっちの部屋も綺麗だねー!」
「あっちの部屋方が広いんじゃないの?」
部屋の入り口のドアに寄り掛かりながら、話を合わせてくれるのぶくん。
「あ、なぁ。あそこの遊園地、休み中は23時までやってるって知ってる?」
「そうなの?」
「バーベーキュー終わったら行かね?」
「でも、兄ちゃんがノブくん達とは問題になるからダメだって」
これは、お誘い? 行きたいけど、ノブくんとあたしじゃ行けないし。
「多分、大丈夫だろ」
「多分って……」
多分で行って、写真とか撮られたら大変なのは……あたしじゃん! 女は怖い生き物なのよー!
「ん? 何ぼけっとしてんの?」
「あ……でも、高校生と中学生が夜の遊園地はダメでしょ?」
「あー。それか。じゃあ、これ見て」
そう言うと、お財布から何かを出してあたしに渡す。
「免許? 加賀谷 剛? ノブくんの本名?」
「そう。それで、反応はそれだけ?」
「……反応はそれだけって? 他に何かある?」
えーっと? 免許証なんて、ちゃんと見た事ないからなぁ。
「眼鏡等……普自二? 普通? なぁにそれ?」
「見せた俺がバカだったわ。普自二は普通自動二輪車でバイク! 普通は車の免許だよ」
「あぁ! なるほど。バイクと車の免許か……ってあれ?」
今、ノブくんまだ教習所に通えないんじゃなかったけ? あれ? なんか、おかしい?
「生年月日も見てみな」
えーっと? 誕生日が1月? あれ? なんだ?
確か、誕生日が11月だから……ってあれ? 生まれ年も何かおかしい。ノブくんの生まれ年から自分のを引いてみる。
1月生まれって事は早生まれだから、それに一を足したのがあたしとの学年差のはずだけど……4つ違う?!
「ノブくん! なんか、おかしいよっ!」
「おかしくないから。俺とジュンと悠真くんは同じ年だから」
「へ?」
「だから、同じ年。あ、悠真くんもメンバーも、もうすぐ18になると思ってるから言うなよ」
な、なんだ?!
この企業秘密的な爆弾発言。あたしが聞いてもいい事なの?
「でも、高校二年生だよね?」
「あぁ、それは本当」
平然とした顔で言うノブくん。
「なんか問題あった?」
「いや、その……そんな話をあたしにしてもいいのかと」
「言わないだろ? それに、遊園地で俺の事をノブって言わなきゃ問題ないはず」
何がなんだか、よくわかんないけど……あー、混乱して来た。
「あれ、居ない? あーれー? さーちーちゃーん?」
「あ、こっちのノブくんの部屋に居るよー」
お風呂から上がった、しずくちゃんの声に返事をして、ノブくんの部屋に居る事を伝えると走ってしずくちゃんが来た。
「幸ちゃん! ノブくんと二人っきりで何してるの!」
「何もしてないよ。お話してただけだよー」
遊園地の話をしてただけだし、何もしてないけど……?
「ねぇ、しずくちゃん俺らが後でコッソリ遊園地行くの手伝ってよ」
「はい? なんで、そうなるの? ノブくんと幸ちゃんの2人はダメに決まってるでしょ」
「幸に俺の本当の年齢ばれちゃって、行かないとバラすって幸に脅されちゃってさ」
「……は?」
脅すって……勝手にノブくんが話し出した事じゃん。
事情は分からないけど、そんなワザワザあたしだってバラしたりしないし!
「脅すって……ノブくんが勝手に言ってるんでしょ? 幸ちゃん」
うんうんと縦に首を振る。
「幸ちゃんは、遊園地に行きたいの?」
「俺はノブの兄貴なんだから、なんとかなるから大丈夫だって」
「……兄貴?」
「ちょっと! ノブくん、今はそこまでここで話さなくても!」
兄貴? 何を言ってるんだ?
なんか、よく分からない話を2人が始めたから、あたしは蚊帳の外でその光景を眺めてるしか出来ない。
普通に考えたら、遊園地に行きたいって言っちゃいけないって、分かってるんだけど。
やっぱり、我慢だよね……。
むーーーーっ!! でも、行きたい!! でも我慢しまちゅ……。
ご無沙汰しております|д゜)
かなり久々の更新なんですが、赤木秋香さんの名前の変換が秋華になっているの最近気付きました。正しくは「秋香」です。
久々に読み返すと、自分でも意味のわからない所がちょくちょく(かなり?)出て来てそれと名前の変換を修正しながらゆっくり更新していきたいと思います。
読んで頂いてありがとうございます!




