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夢見たっていいじゃん!!!!  作者: YUKARI
第三章 始動
21/27

20 号外?

 そんなこんなの事件で、事務所のいつもの社長室の横のシャワー室で浴びる事になってしまいました。

 逃げるように体育館を出て来たから、洋服は違えとセットしたままの髪型で、事務所まで徒歩で向かうことになってしまったわけなのですが……。


「あなた、モデルとか興味ない?」


 事務所までほんの10分位の道のりで、なぜかスカウトされます。


「えっと、僕……事務所、所属してるので」

「あら、うちのとこと提携してる所もそれなりに大きい所なんだけど、どちらの?」

「……あそこ」


 黙って、目の前にそびえ立つTreasureのビルを指を向ける。

 普通に考えて、他の事務所の前でスカウトって、かなりこの人は図々しい事してるんじゃないかな? とも思うんだけど、普通なの?

 でも、この人……何処かで見た事がある気がする。


「あらららら、私ってば旦那の事務所の子の事をスカウトしちゃってたのー? 私が知らない子なんて居ないと思ってたんだけど」

「旦那……さん?」

「あ、宏樹よ、宏樹!」


 宏樹さんの奥さんっ?! 


 その後、あたしが淳美さんの所に行くと分かると、何故かついて来る奥さん。


「あれ? なんでユキくんと静さんが一緒なの?」

「あら? この子がユキくんだったの? やだぁ! 私ってば、同じ子を2回もナンパしちゃってたのねぇ。淳美ちゃんが担当してるなら、私は安心して宏樹の所に行けるわー」


 ……着いて来といて、言いたい事だけ言って消えた。

 そのせいで、というか、淳美さんの所に行くって言ったら「私も行くわ!」と、言って無理やり手を引かれて、ここに来たからシャワー行けなかった。


「ユキくん……2回もナンパって、スカウトされてたの?」

「あ、はい。そうみたいです」


 あたしの返事を聞いて、淳美さんは関心したような表情になる。


 それに、2回もナンパって……あぁ、そうだ、思い出した。

 前にもスカウトされて、奥さんの名刺をあたしが持ってて、宏樹さん驚いてたんだっけ。


「淳美さん、あっちでもこっちでも、少しトラブル続きでシャワーまだ浴びてないんですけど……」

「あ、じゃあ、ここの使いなさい。このシャンプー使っていいわよ。後、髪の毛……少し整えたいから、濡れたままで出て来て頂戴」

「わかりました。ありがとうございます!」


 ……ふぅ、やっと、汗とメイク流せる。


 サッパリしてシャワーから出ると、鏡張りの部屋に淳美さんに誘導される。


「じゃあ、ここに座って! さぁてと、このまま少しだけ整えるわねぇ」

「あ、はい」


 って、あれ? あたしの髪の毛って淳美さんに切ってもらっていいの? 兄ちゃんのショーあるから、余計な事しない方がいいんじゃないの?


「うん。これでよし。じゃあ、次は縮毛矯正するから髪の毛乾かすわよー」

「ちょっと、淳美さん?! 僕、兄ちゃんのショーがあるんですけど?!」

「……兄ちゃん?」


 あれ? 淳美さんは、兄ちゃんのショーにあたしが出るって、聞いてないのかな? だったら、これは淳美さんが勝手に、あたしにやってるって事だよね? じゃあ、ちゃんと断った方がいいのかな?


「兄ちゃんが、学校のショーのモデルに僕を使うって言ってたんですけど……えっと、その、淳美さんが僕の髪の毛を色々といじってていいんですか?」

「ユキくん、悠真から何も聞いてないの?」


 兄ちゃんから? ショーに出すって事しか聞いてないんだけど、他に何かある?


「……はぁ。悠真のやつ、説明が足りな過ぎる! これじゃあ、ユキくんが混乱してもしょうがないわね」


 溜息を吐きながら、淳美さんは独り言をぽつり。


「あたしが、ユキくんの担当になったのよ。と、言っても私はショーには参加するんじゃなくて、去年のグランプリの受賞者の特別枠で魅せる為に参加するの」


 魅せる? 魅せるって何? じゃあ、あたしは賞とか関係ないって事? 


「あの、じゃあ、兄ちゃんのモデルは誰がやるんですか?」

「それは、ダイくんがやるわよぉ。あの子まだ、学校のショーに出たことなかったから丁度いいでしょ?」


 ……はぁ?

 あたしがモデルするより、確実に兄ちゃん賞が取れるやつじゃん! だったら、あたしにわざわざ、声掛ける必要無かったんじゃ……って、事は?


「高校に行けない?!」


 あたしの声にビックリしたのか、淳美さんも「はぁ?」って顔をして固まってる。


「この続きの話も聞いてないの? ユキくんのデビューはもう決まってるのよ。ショーの結果も一応は関係あって、ユキくんピンでデビューするか、グル―プでデビューするか決まるのよ。だから、社長は悠真が賞を取れなくて話題性が無くなったら困るから、ユキくんをショーの順位が関係ない私でモデルさせる事にしたのよ」


 淳美さんに髪の毛を綺麗にして貰って、次は髪に色を入れたいって事で、次のレッスンの午前中に来てほしいと言われた。


 それにしても、今日は事務所の周り騒がしくて女の子がいっぱいいる。

 あたし、見られてる……いや、まさかねぇ? さっき撮影したからって、その写真が雑誌とかに載ってるわけないし。

 Treasureの事務所から出て来たから、好奇心で見られてるんだ、きっと。

 声を掛けられる前に、早く兄ちゃん家に帰ろ。



「自分、おかえりー!」


 誰も居ない家に、自分におかえりと言ってあげる。


 まだ、みんなは仕事かなぁ?

 する事ないけど、流石にあたしが夕飯の準備するわけにはいかないしな……下手くそなご飯を用意したら、ノブくんに何を言われるか。

 部屋でみんなが帰って来るの、大人しく待ってよっと。


  さっきの淳美さんの話……デビューとかなんとかって、テレビに出たりする事になるなら翠玉高校には行ける。

 けど、なんか……兄ちゃんがモデルの話を持って来た時から、あたし特別扱いされ過ぎな気もする。


 よく考えてみれば、ユキでデビューするんだよね? テレビに出たりして、女ってバレないのかな?

 それに、高校はどっちの性別で通う事になるのでしょうか?

 わー、なんか、こんな事を考えてたら凄く面倒な気がするけど、他の高校に行くから事務所辞めますとも言えないし、今更きちんと勉強しても手遅れだからな。


 うん。ゴチャゴチャ考えてもしょうがない!

 兄ちゃんは高校じゃないけど、Treasureに入って専門に入学出来たんだし余計な事を考えないで自分なりに頑張ろう。

 今日の撮影だって、楽しかったし!


 ──ピンポーン


「ん? このインターホンの音ってエントランスの方のだよね?」


 大輔くんとノブくんだったら、直接こっちに来るはずだけど……誰だろ?


「はーい。あれ? 仁志くん? どーしたの?」


 エントランスの方からだと思ったら、地下駐車場の方からのチャイムでモニターを見ると、仁志くんが切羽詰まった顔をして立ってる。


「ユキ?! ちょっと、中入れて!」

「あ、うん。どうぞー」


 なんだろ? 秋香さんから、逃げて来たのかな?


「お邪魔します! ねぇ、ユキはこれ知ってた?!」


 玄関のドアを開けた瞬間、ドカドカと部屋の中に入って来てリビングのテーブルに、新聞をバっと広げて置いた。


「あたし、新聞なんか読まないからなぁ」

「違う! これ、号外新聞!!」

「号外? ……な、な、なっ?!」


 さっき、みんなで撮った写真がもう新聞に載ってる? どういう事?!


「今の時間だったら、ニュースでも話題になってるかも。テレビつけるよ?!」


 慌てて、仁志くんがテレビをつける。


『──この3人から、クリスタルの新メンバーが決まるってわけですかぁ! 楽しみですねぇ』

『はい。去年のパール専修学園の準グランプリを取った、HITOSI(15) 男女共に人気急上昇中の、蛍(14) 無名の新人YUKI(14) YUKIくんは、去年のパール専修学園のショーでグランプリを取った、モデルさんの親戚の方らしいですよ』

『ほぅ、それは期待満点のメンバーが揃いましたね』

『それに、今年はクリスタルのDaiくん、蛍くんがパール専修学園のショー出るみたいですよ。YUKIくんも学生のモデルとしてじゃなく、プロの方のモデルと参加すると噂が上がってます』

『誰がメンバーになっても話題性バッチリですね!』


 ──ピッ。


「…………」

「…………」


 あたしと仁志くんは、無言でソファーに並んで正座したまま固まる。


 デビューとは聞いてましたが、そのグループがクリスタル?!

 その号外新聞のせいで、さっき事務所から出た時に女の子の視線が、すごかったんだ……。


 去年は仁志くんが逃げ回って、メンバーにならなかったから新メンバーの話が、出て来たんだとは思うんだけど。

 淳美さんはピンであたしはデビューもあるかもって、言ってたよね?

 仁志くんもまた候補に上がって、クリスタルに加入する条件がサッパリわからない……。


「電気も付けないで、何やってんだよ。って、仁志?! は? お前ら何やってんの?」

「仁志……? わ! え、何してんのっ?!」


 あ、大輔くんとノブくんが帰って来たのか。

 でも、なんで2人は慌ててるんだ……って、暗い部屋に男女2人が正座して座ってたから、様子がおかしいって思った? いや、でも、まぁ、何もしてないしね。


「……あ? 何?」

「へ?」


 な、なんか、仁志くんの様子も……おかしい?!

 帰って来た大輔くんと、ノブくんにガン飛ばしてるよね?


「何って、ここでユキと何してんだよ?」

「は? 俺が、男みたいな女になんかすると思う? これ、お前ら知ってんだよな?」


 おーい! 仁志くーん!

 男みたいな女って、すんごーーく聞き捨てならないんですけどぉ……もしもーし!


 怒り爆発しそうなあたしを無視して、仁志くんは持って来た新聞をバシバシ叩いてる。


「男みたいなって……仁志は知ってたのか。ふーん」

「って、ノブも納得してる状況じゃないでしょ! そ、その新聞は何処で……」

「さっき、お前らのファンの子に騒がれて貰った! つか、知らねえとは言わせねぇよ? この裏にコメント出してるくらいだもんなぁ?」


 裏のコメント?


 ──Dai;HITOSIとは、幼馴染で昔から仲良くしてるから、メンバーになってくれたら嬉しいな!

 ──Nobu;蛍は、人懐っこくていい子なので、もしメンバーになったら弟みたいに可愛がりたいですね。

 ──Jun;YUKIは今、寮に居るんすけどこの前、女の子に囲まれてましたよ。俺のファン取られちゃうかも(笑)


 あぁ、クリスタルのメンバーはこの事を知ってたのね。


「だから、なんだよ?」

「なんで、教えてくれなかったんだ! 言ってんの!」


 男みたいな女に怒り爆発しそうになったけど、仁志くんの権幕の方が酷くて、あたしも何も言えなくなる。

 そりゃ、そうか……去年あれだけの逃走劇をしたんだもん。

 今、モデルしてるからって、芸能人になりたいわけじゃないもんねぇ……。


「まだ、仁志がクリスタルに入るって、決まったわけじゃないんだから……少し落ち着いてよ! 一応ね、学校のショーで俺が、グランプリだったらユキが加入。蛍がグランプリだったら蛍が加入。俺も蛍も入賞しなかったら、仁志がクリスタルにって話らしいよ?」


 なるほど。

 去年の入賞者だったら、クリスタルに加入しても文句はきっと出ないもんね。

 そこらへんの状況で、あたしがピンでデビューするか決まるんだ。


「俺が加入する確率が、1番高いじゃねーかよ!」

「そうなったら、諦めろ。あはは」


 諦めろって、仁志くんによく言えるな……ノブくんは。

 テレビでも話題にされてたら、もう仁志くんも逃げ道ないんだろうけど。


「お、仁志が居るじゃん。珍しい、何? 親睦でも深めに来たのかー?」

「親睦ってなんだよ、俺には関係ない!」

「あれ? 仁志はご機嫌斜めなのか?」


 夕飯を食べに来たであろうジュンくんが、なんで仁志くんの機嫌が悪いのか分からなくて「むー」と唸ってる。


「じゃあ、イイ話持って来たから、仁志も機嫌直せって!」

「……何それ?」


 ジュンくんが持って来るイイ話って言うのは期待できないけど、イイ話と聞けばやっぱり気になるのか仁志くんも睨みながらジュンくんを見る。


「さっき、宏樹さんに会って俺ら今度の土曜から月曜までオフもらったんだよ。別荘で遊んで来いだってさ。仁志も行こうぜ?」

「は? 俺が行くと思ってんの? もういい! 俺帰る!」

「あっ! 仁志っ?!」


 ジュンくんの提案は仁志くんには、お気に召さなかったみたいで大輔くんの呼び止めにも応じないで、ドスドスと足音を立てて家から出て行った。


「なんだ? あいつ?」


 ジュンくんはなんで、仁志くんが怒ってるのか分からず頭の上には「?」が浮かんでる。


「なぁ、その別荘って、プールあるとこ?」

「あ、そうそう、男だけでむっさいけどプールで夏満喫しよーぜ! ユッキーも行くだろ?」

「行きたいっ!」


 あれ? 今プールって言った?


「あぁあああああっ!!」


 あたしの叫び声に3人はギョッとした顔をしてる。


 プールには行きたい。

 けど、あたしは男であって女です! 行っても水着になれないし、行ったらならばプールで遊びたい。ユキのままだったら遊べないじゃんかーー!


「ね、ねぇ?! そ、そういや、ユキは土曜に仕事あるって、秋香さん言ってなかったけ?」

「えぇ? 仕事?」


 大輔くんが焦ってあたしの仕事の予定を話し出した。

 秋香さんから仕事なんか聞いてなかったから、大輔くんに疑問に疑問で返す。


「あ、俺もユキの仕事の話聞いたかも」


 あれ? ノブくんもあたしの仕事の事知ってるのか。

 じゃあ、本当なのかな? 疑問に思ってると大輔くんが、あたしに何か目で訴えてる。


「なぁ、ジュンその話さぁ……ユキは仕事だし、しずくちゃんも行くからユキには内緒で、悠真くんの妹誘うって宏樹さん言ってたんだけど」

「あ! そうなんだ。ユッキー、ゴメンね。今の忘れて! 俺が代わりに楽しんで来るからぁ。イヒヒ! 女の子とプールだぁ!」


 いや、なんか、幸が来る事にジュンくんはしゃいでくれてますが……ユキに仕事があるなら、ユキはあたしなんだから幸も行けないじゃん。

 本当に仕事がなければ、レッスンが終われば土曜の夜~月曜までは特に予定はないはずなんだけど……やっぱり行けないのかなぁ。

 あれ? でも、しずくちゃんも行くって、男の中に女の子1人で大丈夫なの?


「ジュンくん……呪うからね!」

「痛っ! 何で殴るの! しかも、呪うとか怖いよ?!」


 あたしになんで呪われないといけないのか、分かってないじゅんくんは2人に「なんで? なんで?」って聞いてる。


「だって、僕だけ別荘に遊びに行けないじゃんか! バカ! アホ!」


 ユキだけ行けないないなら、殴ってなかったけど……幸まで行けないなら本当に行けないって事じゃんか! とは言えないから、あたしは無言でジュンくんに攻撃を続けた。



 ******



 やけ食いで終わった夕食の後に、大輔くんがあたしの部屋に来た。


「ユキに仕事があるって話は、本当はないからね?」

「ん?」

「ああ言えば、ジュンくんも納得するでしょ? 俺も、しずくちゃんに上手く幸ちゃんで、誘う用にって頼まれてたんだよ」

「え?! 本当?」


 しずくちゃんに夏休み前に、みんなで別荘に行こうって言ってたもんね。


「だから、幸ちゃんで行けるんだよ。そうすれば、プール入れるでしょ?」

「わー! 良かった! 嬉しいありがとうっ」


 あたしに気を使って、ユキが仕事だって言ってくれた大輔くんとノブくんには感謝っす!


「でも、ユウくんもついて来ると思うけどね……」

「うん。保護者必要だもんね!」

「いや、だったらジュンくんも居るけど」


 あ、そうだ。ジュンくん兄ちゃん、同じ年の18歳って言っても子供だし保護者にはなれないじゃん。

 兄ちゃんがはしゃいで遊ぶかどうかは、分かんないけど人数は多い方が楽しくていいと思うし。


 別荘のお風呂は温泉で、プールがあって、近くに遊園地あって……わーわー! 楽しみすぎる。


「大輔くん、ありがとう! じゃあ、あたしはテンション上がったので寝ます!」

「寝るの?! え?」

「うん! おやすみ!」


 なんか、大輔くんの声がする気がするけど、浮かれて人の話なんか聞いてる余裕なんかないもんねー!

 お布団に潜ってソワソワ、ムフフ……って、怪しい笑い声が思わず出ちゃった。

 遊園地って、あの絶叫が有名な遊園地だよね? 誰か一緒に行ってくれるかなぁ?


 あーん、楽しみ過ぎるーっ!



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