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夢見たっていいじゃん!!!!  作者: YUKARI
第三章 始動
19/27

18 ドキドキ

 レッスンの後はジュンくんの車で帰るはずが、戻って来なかったからノブくんと大輔くんでタクシーで帰って来た。


「ジュンくん戻って来なかったね? 大丈夫かな?」

「大丈夫だよ。いくら秋香さんだって、人前に顔出す仕事してるジュンくんに、キズ作ったりはしないはずだし」


 ふーん。

 それなら、心配する必要はないと思うけど、ジュンくんが何をされたのかは気になる……やっぱり、お仕置きされてる所をあたしも見たかった。

 

「おい、ユキとダイ! 洗濯するからレッスン着を早くだせよ」

「はーい!」


 あたしと大輔くんが同時に返事をする。

 

「あ、こら、ダイ! 下着類は別で洗濯すんの!」

「え? そうなの? 知らなかった……」


 下着類は別なんだって、知らなかったよ。

 だから、この前ノブくんに下着を干されるなんて、失態をあたしはおかしたのか。


「ユキも俺に洗濯物を干されたくなったら、後で下着とかは別で自分でやれよ」

「は、はぃ……」


 もう、そんな恥ずかしい失態は致しません……これ終わったら、別で洗って部屋に干しとこ。


「今日は、カレーだけでいいよな?」

「うん。俺、今日はあんま食欲ない……」

「大輔くん、食欲ないって体調悪いの?!」

「いや、そうじゃないんだけどね? あはは」


 体調悪くないんなら、いいけど少しだけ顔色が悪い気もするがする。


「ユキはチキンカツいるか?」

「いるっ!」


 あたしと大輔くんがレッスンしてる時に、ジムでカラダ動かした後に、ノブくんは近くのデパ地下でお惣菜を買ってたらしい。


「ノブくん、おかわりーっ!!」

「まだ食べれるの?!」

「……え? だ、だめ?」

「いや、そうじゃなくって……」


 はぁっと、溜息きを吐く大輔くん。


 やっぱり、あたしは食べ過ぎなのかな?

 でも、実家でお母さんが作るカレーの鍋より、大きい鍋でノブくん作ってくれてるからいっぱいあるんだけどな。

 それとも、何かあったのかな?

 でも、今日は1日中ずっと一緒だったけど、変な事は無かった気がする。


「……ノブ、飯くれぇぇぇ……」

「ひぃっ!」


 気配を消して部屋に入って来たジュンくんに、驚いて声を上げる。


 ゆ、幽霊かと思ったよ。

 多少? 洋服も髪の毛も乱れてるけど、ケガしてる様子もないし、無事だったんだね。


「ジュン、なんだよ? その気が抜けた炭酸みたいな顔」


 ノブくんが声を掛けると、チラっとあたしの顔を見てから、ジュンくんは溜息を1つ。


「なんでも、ないから飯くれ……はぁ」


 なんで、また溜息?!

 秋香さんにお仕置きされたのは、あたしが言い付けたからだけど、悪いことしたのは、ジュンくん自身のせいだから、あたしは関係ないよ?!


 って事は……大輔くんの溜息ももしかして、せっかくの休みを潰させたあたしのせい?


「ノブくん、この2人は一体……?」


 ジュンくんのカレーの準備をしてるノブくんの所に、自分が使ってたお皿を下げるついで小声で聞いてみる。


「ダイは自分の不甲斐なさに溜息だから、気にしなくてもいいけど……ジュンは、なんだろうな? いつも、秋香さんに説教されても、その後はいつもケロっとしてんだけど」


 一体……この2人に何が?


 ******


 ご飯を食べ終わって、自室で昼間に整理しきれなかった服を片付けてたら、レッスンで疲れたのか、いつの間に朝になってしまった。


 早く寝ちゃってたせいで、昨日と同じ時間で目が覚めたから、随分と早起きになっちゃったな……。


 そういえば、兄ちゃん今日は連れてく所があるとかって言ってたっけ? 何時に出るんだろ?

 今のうちに下着洗濯しとこうかな。


 洗濯機に洗濯物を放り込んでると、ガタンと物音が後ろからしてビクっとして振り向く。


「な、なんだ、兄ちゃんか……ビックリさせないでよ」

「あー、洗濯してんのか。もう少ししたら出掛けるから、シャワー浴びたいんだけど」

「それは、あたしもだよね?」

「あぁ、そうそう。お前も準備しとけよ? シャワーから出たらお前の部屋に洗濯物持っててやるから退いて」

「うん。わかった」


 じゃあ、カレーまだ残ってるはずだし、朝ご飯にして食べようかな。


 カレーを半分以上食べ終わった所で、リビングの横の和室の部屋の襖がガラっと開く。


「ユキ、おはよー。早いねぇ?」

「おはよう。兄ちゃんに何処かに連れてかれるみたいで。あ、大輔くんもカレー食べる?」

「食べようかなぁ」


 ダイニングテーブルの椅子を引いて腰かける大輔くん。


「じゃあ、準備するから少し待ってねぇ」

「あ、ちょっと、ユキ! こっち来て?」


 なんだろうと思って、大輔くんの近くに行くと、指であたしの頬っぺたをチョンと触ってその指を大輔くんはペロっと……。


「っ?!」

「カレー付いてたから食べちゃった。あはは」


 カレーが付いてた事も恥ずかしいけど……カっと顔が熱くなるのが、分かるって事は絶対に顔は真っ赤になってるはず。

 そ、その技はいつもあたしがクラスの女子に、やってあげてる技でありまして、逆にあたしがされるとどう反応していいのか。


 恥ずかしいのを誤魔化すために、慌ててキッチンに入ってご飯とカレーをよそいに行く。


 いや、ビックリしたぜ。

 そ、そうか……あの技は、男の子が女の子にやってドキっとさせる技だったのね。

 兄ちゃんに似てる男っぽいあたしが、クラスの女子にあんな事をしてたら……そりゃあ、カッコイイって騒がれるよね。

 勉強になりました、大輔くんありがとうございます。はい。


「幸、俺のもカレーやって。あ、洗濯物、お前の部屋に干しといたから」

「に、兄ちゃん! うん、わ、分かった。ありがと」


 そうだ、兄ちゃんも起きて居たんだ。

 2つのカレーを準備して、2人にとこに持って行くと兄ちゃんが口を開く。


「今日、行くとこではお前の事を幸って知ってるやつが居ても絶対に、幸になるなよ」

「え? うん。分かった」


 ユキで何かを、やりに行くって事だよね?

 あたしが幸って事を知ってるのは……ここに居る人達の他にあんまり居ないと思うんだけどな?


 詳しく聞くと、今日はユキとして初の撮影をするらしい。

 だったら、あたしの事を知ってる人と会う確率なんてないと思うけどなぁ?

 それに昨日のレッスンの時から、大輔くんもノブくんも、あたしの事をユキって呼ぶようになったし。


「ユウくん、カメラマン誰か聞いてるの?」

「あ、湯浅さんだって」

「じゃあ、そんなに緊張しなくても大丈夫だから、適当にユキで頑張ればいいんだよ」

「ゆ、湯浅さん……」


 だから、幸になるなよって兄ちゃん言ったのか……キレて「あたし」って言うなよって事が言いたいのかな?


「あ、ユキ、俺らも仕事あるからノブを、起こして来てくれない?」

「うん。いいよー」


 モデルの事は行ってから考えればいいかな?


 さて、美味しいご飯を作って下さる、ノブくんですから!

 起こすくらいは朝飯前ですよって、もう、朝ごはん食べちゃったけど。

 

 おー。寝てますねぇ。

 お布団の横に立て膝で座って、まつ毛ながーい、お鼻たかーい、のぶくんの顔を観察をしてみる。


 ……じゃなくて、どう起こすか考える。

 揺すって起こすのは普通だし、くすぐって起こすのも利かない人だったらつまんないし、氷を服の中に……。

 うん。普通に起こそう、後が怖そうだし。


「……なっ?!」


 グイっと腕を引かれて、ノブくんの顔が目の前に現れて、パチっと目を開いたノブくんはニヤっと笑う。


「あ、こないだのキス思い出しちゃった。もう一回しようか?」


 あたしにしか聞こえない声で、ノブくんがささやく。

 き、キスの事……覚えてたのっ?!


 いや、待てよ、待ってよ?

 あれは、ただのあたしの妄想が肥大したもので、キスなんか……キスなんかしてない! そう、してない!

 だからもう一回とか、な、何を意味不明なことをっ?!


「ノブくん、腕、は、離して!」

「ぶっ……冗談だし」


 笑いながらあたしの頭に、手をポンと乗せてながら起き上がるノブくん。


 いつもと雰囲気が違うノブくんに驚いて腰を抜かしたあたしが、立ち上がるまでに少し時間が掛かったのは……ここだけの話。



 ******



 抜けた腰を必死に立たせて、事務所からそれほど離れてない所にある、今日の撮影をするらしい体育館に兄ちゃんに連れて来られた。


「うーん、どうしようかなぁ……」

「淳美さん? いつまで考えてるんすか?」


 ……だけれども、メイクをすると言ってメイク室代わりの体育館のロッカールームに入ってから、メイクしてくれるはずの敦美さんが何か考え込んでるようで、中々メイクが始まらない。

 撮影が初めてだから、このメイクが始まらない感じが普通なのか、普通じゃないのか分からないあたしは何も言えないけど、一緒に来てる兄ちゃんも何か思ったのか、淳美さんに声を掛ける。


 淳美さんは、兄ちゃんのバイト先で一番偉い人らしくて、あたしが兄ちゃんに妹って事も知ってるらしい。


「髪型の事を考えてて。少しこれだと短い気がしない? ユキくんは悠真と違って、抽象的で甘ったるい感じだから、私はそれをもっと出したいわけよ」

「淳美さん……それは、今から始める撮影の内容と別の事を、考えてますよね?」

「そ、そうね。今は爽やかな感じだったわね」


 メイクが始まらなかった理由は、淳美さんが別の事を考えてたのか。

 どの雑誌に載るとか聞いてないけど、動きやすい恰好の衣装だしスポーツ系とかそんな感じのかな? 


 髪の毛はワックスで軽くオールバックにされ……細いカチューシャを付けられ、後ろの方の髪の毛も何かいじられ。

 メイクは軽くファンデーションを塗られ、秋香さんに買ってもらったギャル服を着る時に使えるかな? と思って見てたけど……女子メイクには役には立たなそう。

 

「よし、メイクはこんな感じかな。じゃあ、ユキくん初めての撮影頑張ってね!」

「あ、ありがとうございます!」

「俺らは近くで見てるから、ユキはしっかりやれよ」

「う、うん」


 なんか、緊張して来たけど……大丈夫かな?


「ユキさん入りまーす! 湯浅さん、よろしくお願いしまーす!」


 何人か居るスタッフさんの1人が、ロッカールームから出て来たあたしに気付いて、大きな声で湯浅さんに声を掛けた。


「あ、ユキって……お前だったのかよ」

「よ、よろしくお願いします」


 あたしがユキだって事を、知らなかったらしい湯浅さんは、面白そうにあたしの顔を見る。


「じゃあ、取りあえず……体育館を一周だけ全力で走れ」

「へ? 全力?」

「あ? いいから走れよ」


 いきなり走れって、何ー?! しかも、全力って?

 な、なんか湯浅さんが怖いから、走ってみてるけど……あたしを追って写真撮る感じでもなく、あたしが走り出した場所にそのまま居る。


「はぁはぁっ。は、走りましたよ、湯浅さん……全力でっ!」


 そんなに広い体育館ではないけど、全力で走れば息が切れるわけでありまして、だけど緊張してたのが嘘みたいに走ったおかげでスッキリした。

 膝に手を当てて息を整えてると湯浅さんが声を掛けてくる。


「ユキ、そのままコッチ向け」

「ちょっと、まだ息が……」


 反論しようと顔を上げると、パシャリとフラッシュが目の前で連続して光る。


「ん。よし。敦美ー! ユキの汗すげー出て来たからメイク軽く直して。あと、上からメイク厚塗りしないで。顔色がわかんなくなるから」


 ……な、なんだ? 今のは撮影の一環だったの? 

 湯浅さんに言われて小走りで、敦美さんと兄ちゃんがあたしの所に来る。


「あはは! 凄い汗ねぇ。あ、悠真は、保冷剤でユキくんの首の後ろ冷やして」


 敦美さんは笑いながらあたしの汗を、ティッシュペーパーで汗を押さえる感じで拭いてくれて、黙って兄ちゃんは、あたしの首の所に冷たい保冷剤を当ててくれてる。


「次はきっとボールが飛んで来るから、ユキくん気を付けてね?」

「なんで、ボールっ?!」


 今日の撮影は、あたし……じゃなかった、僕がバスケの練習をしてる風景を撮るって事らしい。


 だから、体育館で撮影してるのか。

 いきなり、動画の撮影じゃないのに……ダッシュさせるって本気のバスケ練習みたいになってるじゃん。


 メイク直しが終わると、撮影と言う名のバスケの練習が開始された。


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