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戦国時代の化学者(ケミスト)〜弱小大名の三男に転生した元・研究員が、現代化学で乱世を塗り替える〜  作者: 姉小路信綱


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第4話 立ち上る漆黒と、家族の絆

「大野の本陣に動きあり! 三千の兵を率い、二日のうちにこの神崎城へ押し寄せる構えです!」


物見の足軽が告げた報せに、神崎城の大広間は再び凍りついた。


「三千……! 厳九郎の奴め、本気で我が神崎家を潰す気か!」


長兄の一馬が拳を握りしめる。だが、三日前に大岩を打ち砕いた粒状火薬の威力を目の当たりにした一馬の瞳に、もはや悲観の色はなかった。


「慶三郎、例の火薬をさらに増やせば、三千の敵も撃ち払えるのではないか?」


父・景次が期待を込めた眼差しを慶三郎に向ける。

だが、慶三郎は静かに首を振った。


「いいえ、父上。肥溜めの硝石丘から採れる硝石だけでは、三千を押し返すほどの火薬は作れません。城中の古い蔵の床下土までかき集めて精製していますが、せいぜい数十発分が限界です。……それに、相手も馬鹿ではありません。三千もの大軍となれば、鉄砲の射距離の外から包囲し、数を頼みに力押しで攻め立ててくるでしょう」


「では、どうするのだ!?」


「相手が数の暴力で押してくるなら――こちらはいっそう『科学の暴力』で迎え撃つまでです」


慶三郎は不敵に微笑むと、控えていた勝太と、奥から出てきた幼い妹・鶴姫に指示を出した。


「勝太、鶴姫。城中の唐辛子、木炭、硫黄、そして生石灰を集めろ。空の竹筒と、素焼きの壺も山ほど用意するんだ」


「慶兄様、唐辛子の粉はこれくらいで足りる?」


十一歳になる手先の器用な鶴姫が、小さな手で素焼きの壺へ器用に赤い粉末を詰めていく。


「ああ、助かるよ鶴姫。目に入ると激痛が走るから気をつけろよ」


「平気! 慶兄様のつくる道具は、いつだって神様みたいにすごいんだもの!」


無邪気に笑う鶴姫の傍らで、母のまつが縁側に腰掛け、温かい眼差しで子どもたちを見守っていた。かつては病で臥せりがちだった母だが、慶三郎が調合した滋養薬(ビタミンや鉱物を調整したお茶)を飲み始めてから、随分と顔色が良くなっている。


「慶三郎、無理をして体を壊してはいけませんよ。あなたのおかげで、この城も明るくなりましたが……」


「大丈夫ですよ、母上。神崎家は、俺たち兄弟で絶対に守ってみせます」


さらに慶三郎は、父・景次と二人の兄に向き直る。


「父上、一馬兄上。城の武具蔵の奥に、先代の頃から弾丸不足で打ち捨てられていた古式の鉄砲があったはずです。三十挺ほどすべて引っ張り出して手入れを行ってください」


「よし、鉄砲の整備は俺にまかせろ!」と長男の一馬。

そして慶三郎は、土木や陣地設営に長けた次男の兵衛を見つめた。


「兵衛兄上。神崎城へ通じる狭い谷あいに、罠を仕掛けます。地形を知り尽くした兄上の腕が必要です」


「ハッ、任せておけ! 穴掘りなら足軽どもをまとめて俺が徹夜で仕上げてやるぜ!」


兵衛がニッと快活に笑い、慶三郎の肩を力強く叩いた。


こうして、現代化学の知識を持つ三男・慶三郎を中心に、直情型の長男・一馬(鉄砲隊)、実務派の次男・兵衛(地雷設営)、手先の器用な妹・鶴姫(内職補助)、そして母・まつの温かい励ましのもと、神崎家が一丸となった迎撃作戦が始まった。


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― 新着の感想 ―
『科学の暴力』って、化学と言いかけて錬金術ってわざわざ言い換えてたんだから『錬金術の暴力』にすべきじゃ。 錬金術も当時の人間に通じる言葉かどうかは別として。 "かつては"ってすごく昔っぽくいうけど、…
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