第9話 dokanto7(後編)
現在のdokanto7の累積金額だが、5億円だ。
もし単独的中できれば、これを独り占めできる。
絶対欲しい! なにがなんでも欲しい! これだけ金があったらたとえ税金引かれたあとでも余裕で会社員辞められる!
俺はバキバキに力みながらスマートフォンを操作して、6レース目の映像を映した。
ちょうどレース発走直前だった。
「えーと俺の買い目は4番か。よし4番がんばれ。こいつはいま勢いに乗ってる若手だ。さすがに勝つだろ……勝つよな?」
とつぶやいたら、号砲が鳴ってレースが始まった。
競輪において若手選手はラインの先頭を担当することになる。なぜなら体力があるので風圧を受け止められるからだ。
自転車競技は風との戦いだ。
いかに風圧をうまくしのいで、スタミナを温存して、ラストスパートで弾けられるかどうか?
という観点があるので、ラインの二番手でめちゃくちゃ有利である。
俺の買い目の選手はライン先頭なので、二着になる可能性が結構あった。
ただしこれまでの戦績を見た感じ、ほとんどのレースで逃げ切っているので、今回も逃げ切って一着を取ると信じたい。
「頼む、頼む、俺が無事会社員を辞められるように、逃げ切って1着取ってくれ……!」
とつぶやいたら、最終週の鐘が鳴って、4番の若手がちょっと早めに捲りはじめた。セオリー通りのタイミングと言いたいところだが、レースの平均ペースから考えて、ちょっとだけ早いんじゃないのか?
どうなんだよこれ。どうなるんだよこれ。
いまのところラインの二番手と三番手がちゃんとついてきているし、先頭の4番選手も早々に失速していないし、オーバーペースというわけではなさそう。
うまくやれば勝てるはずだ。
勝ってくれ、頼む……!
4番選手が1着じゃないと外れなんだ。
2着じゃダメなんだ。
と願っていたら、ついに最後の直線に入って、ライン二番手の選手がぬるっと伸び始めてしまった。
「おいこら二番手のお前、若手の壁で風しのいできたんだから、こういうときぐらい勝ちを譲れよバカお前なに若手を差し切って自分が1着!?!?!?!?俺の買い目が2着!?!?!?!?!」
俺はスマートフォンをベンチに投げ捨てると公園の地面に這いつくばった。
「なんでこうなるんだよぉおおおおおおお!」
またもや俳優の藤原竜也みたいに叫んでしまった。
40万賭けたのに、6レース目で死亡だ。7レース目に行くことすらできなかった。
なんでこんなことに…………。
呆然としたままベンチにしなだれかかると、投げ捨てたままのスマートフォンで7レース目が始まった。
どうせならこのレースで的中者なしになってくれれば、キャリーオーバーが発生して、明日もdokanto7できるんだが?
と思ったら、的中者が4人も出た。
総額5億を4人で山分けだから、ひとり頭、1億2500万である。
いいなぁ、うらやましいなぁ。その金額だとちょっとサラリーマンやめるのに勇気がいる金額だけど、でも大金ではあるんだから、めっちゃ羨ましい。
俺もいつか当ててやろうじゃないの、dokanto7
とにかく今日は負け戦だ。今日失ってしまった40万円をとりかえすために、また明日からギャンブルがんばらないとな。




