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第六十六話 伝えたいこと

 佐々木の言葉に俺たちに十秒くらいで沈黙して、やがてほとんど同時に俺たちは「え」と口にすると美鈴は問いかける。


「その好きって友達として好き? それとも―」


「いいえ、恋愛的に好きです」


 かぶりを横に振ると佐々木は決意こめた顔でそう宣言した。


 なんという展開だ。


 谷和原の気持ちを応援してきた俺たちにはそれは想定外である。その上、佐々木は谷和原より悩ましそうなので、たぶんずっと前から谷和原のこと好きでも今まで気がついていなかった。


 美月と美鈴と視線が合うと美鈴は口を開く。


「それはすごいと思うよ、刹那ちゃん。あたしは応援するよ」


「わたしも」


「俺もな」


 刹那は俺たちの賛成に笑顔を浮かべると言葉を口にする。


「ありがとう……けど」


「けど?」


「応援しなくていいんですよ」


 そう呟いたや否や彼女の笑顔が寂しい顔となると、美月は問いを投げかける。


「どういうことなの?」


「櫂ちゃんに言わないのです」


「櫂ちゃんに気持ちを伝えるつもりはないってこと?」


「そうです……。それをするにはメリットがありませんので」


 佐々木はしめやかなトーンでそう言った。しかし、彼女の顔に迷いがありそうなので今度俺は問う。


「それなら、どうして俺たちに言ったのか?」


「誰かに伝えたかっただけです……。……それはわがままだと分かっていますけれど、そう感じたからそうしました。……だらか、ごめんなさい。美鈴ちゃんたちを困らせたくなかったです」


そう言いながら佐々木はブランコを立って、俺たちに頭を下げる。


「そんなことないよ。刹那ちゃんの悩み事を聞くのって困るなんてない。ねえ」


「そうだわ」


「おう」


 美月と俺の相槌を待ったようで美鈴は言葉を継ぐ。


「だから言ったでしょ。あたしたちは刹那ちゃんの気持ちを応援するよ」


「そうですか。ありがとうございます」


 この度に感謝を示すように佐々木はあらためて頭を下げると言い続ける。


「……それで、櫂ちゃんにこの話に関して言わないでくださいね」


「わかった」


 俺たちの代表として美鈴はそう答えると佐々木は歩いて俺たちの方に振り返る。


「あらためてわたしの話を聞いてくれてありがとうございます。それでは、わたしは先に行きます」


 俺たちの答えを待たずに佐々木は振り返ってもう一度歩き出した。


「これは思ったより複雑な状況なのね」


「そうだな」


 ふたりの感情は交互でも伝えない。


 伝えないから分からない。


 分からないから確かめない。


 確かめないなら後悔が現れる。


 ほとんど完全に沈んだ太陽を眺めて微苦笑しながらため息をつくと、ふたりは徒然なチルドレンだという思いが浮かんできた。

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