第五十五話 緑色
「ここはシルデス村より涼しいんですね」
ノスタ村に到着したところであたりを見ながらアヤがそう口にした。
「いやな情感がするね……え?」
けれど、ミレイの顔を引き攣らせながらそう宣言して、ヤワラカイとセツナの家に視線をやるとドアがないのを目に入るとあそこへ駆け出した。
「急いで!」
ミツキとアヤにそう叫んで彼女たちはそうした。
家に入ったときにミナたちはリビングの床に座っていた。
「ミレイちゃんミツキさんアヤちゃん」
ミツキたちの姿を見取ると冷や冷やしそうな声で彼女たちの名前を言った。
「なにがあったの?」
ミレイの質問に、深呼吸をした後で答えるのはセツナだ。
「大変です! あの男に川宮くんは連れ去られました! あの白いローブを着る人がドアを飛ばして気がつく前に彼と川宮くんはいませんでした」
「白いローブを着る男なんですか?」
セツナは焦っているのを誤魔化すことのないトーンでそう説明して、小首を傾げつつアヤが質問と言い返した。
「そうだよ。気持ち悪いやつだった」
「総偽精霊です」
ずばっとミナがそう述べると皆の視線が彼女に集まった。ミナは誰も口を開かなかったので言葉を継ぐ。
「まちがいなくそうです。その人はキタノ森林の総偽精霊と同じ不気味な空気が漂っていました」
「そうなんですか」
顎に手を当てたままで思案顔を浮かべるミツキは口を開く。
「……黒い狼が現れたのね?」
「そうだよ。……どうしてわかる?」
ミツキは彼女の夢に見た黒い狼に関して語り始めて最後の言葉を口にしたところでセツナは言い返す。
「すべてはミツキちゃんが言った通りです」
「それはどういう意味わけ?」
「それよりともかく、川宮さんを救うために何かしなければならないのです!」
ミナがずばりとそう言ってミレイがこっくりすると口を開く。
「そうだね。彼を見つけるのは最前なの」
「でもどうやって川宮雄一さんの居場所は分かるんですか?」
その問いをアヤが投げかけるとミナはすぐに答えを出す。
「簡単です……。私は瞬間移動で追いかけて行きます」
決意こめた顔を浮かべながらミナがそう宣言した途端彼女の髪は緑色に染まった。その新しい髪の色に驚かれてらしくミツキたちの視線があらためてミナに集まった。




