第三十話 モールにて
次の日。
つまり、今日は日曜日だ。
今はお母さんとお父さんと美奈子とモールにいる。
一緒にアイスクリームを食べに行こうよとお父さんが言って俺たちは賛成していたのでここにいるのだ。
「長谷川さんお兄ちゃんと付き合ってるなんて想像以外だったよ~」
「おい」
「本当なんだもん。長谷川さんはあの美人でお兄ちゃんと付き合うのはもったいないって感じ」
「そうなんだね」
「そうなんだな」
「お母さんとお父さんまで!?」
自分の両親と妹にもったいないと呼ばれるなんて。まあ、分からないでもないことだけど。
アイスクリームを買って、食べながら四人並んでいてモールに歩き回る。
「雄一って、あの可愛い子と結婚するんだな!?」
「お父さんおもいぞ」
「あなた、早すぎます。大学を卒業するとそのときに結婚して私の孫が産まれるよ。三人でいい、雄一」
「お母さんもおもいぞ?」
「でもお兄ちゃんは浮気されやすくて寝取られやるいタイプでしょ。お兄ちゃんの子供はお兄ちゃんの子供じゃないかもしれないし」
「美奈子ひどいぞ」
「長谷川さんと別れないためにお兄ちゃんは馬鹿なことをしないように祈るしかないよね」
「美奈子やめて?」
容赦のない家族だな。
一番痛いのは美奈子が言っているのは間違っていないということだ。美月は身持ちの固い女子であるから浮気されるとは思わないが、確かに俺と付き合うのはもったいないし。
俺はアイスクリームを食べきるとトイレに行って小便をした後で手を洗った。
トイレを出ると見覚えの顔を見とれる。
手を繋ぎながら喋って歩いている喜多村と俺は知らない男。そして、喜多村の表情は一昨日と同じだった―悲しそうで泣きたがる表情だった。
二人を追いかけると結局モールをあとにし、喜多村たちは横道に向かった。
「ここでしろよ」
「それはちょっと……」
「今日は綾乃ってつまらないな……やりたくないならせめてフェラチオしろ」
「やっぱり今日はそういうのやりたくないんです」
「ここでだからか? おれんち行こうか」
耳を澄ますと喜多村と彼女といるやつのやりとりを聞く。
男は喜多村をエッチなことをするに誘っていたけれど喜多村は断った。でも、男のトーンで前にあれをやったことがあるみたいだ。
「行きたくないんです。今日で帰るんです。またね」
「まってまって」
歩こうとした喜多村の手を男が握り、彼女を引き止めた。
「これで済まないだろ。久々に俺をデートに誘ってセックスしないのか? ふざけんな」
「放してください」
「落ち着け綾乃。今日はおまえの機嫌が悪いか。楽にさせるからおとなしくおれんに来い」
「いやなんです」
喜多村はあらためて断って男の手から外すように激しく手を振ったけれど男が喜多村の手を握り続けた。
俺は見ていられないので歩を進めて喜多村の手を握っているやつに声をかける。
「おい、お前。喜多村の手を放せ」
「川宮先輩!」
「なんだよおまえ」
「うるせ。彼女の手を放せって」
「放さねえと言ったら?」
「お前には大変になるぞ」
俺は今まで右手で掴んでいるスマートフォンを見せる。喜多村はやっぱりと言ったから俺はビデオを撮ってきた。
男は一瞬で驚いた顔をして肩をすくめながら歩き出す。
「まいい。あのビッチに興味を失ったぜ」
彼はそう言い、俺のそばにすれ違って歩いていった。
スマートフォンをポケットにしつつ喜多村に寄せる。
「大丈夫なのか、喜多村」
「大丈夫なんです、川宮先輩」
彼女はそう答えてため息をつくと頭えお下げながら言葉を継ぐ。
「それに、ありがとうございました、川宮先輩」
「おう」
喜多村は頭を上げて笑った。けれど、彼女の表情が変わらなかった―絶望的な目で俺を見た。
口を開こうとしたけれど喜多村は先に口を開いた。
「川宮先輩、わたしの家に来てください」
彼女がそう言うと一昨日の出来事が浮かんできた、哀れを感じながら深いため息をつく。
「いや……」
「お願いします、川宮先輩。ああいうのしないからわたしの家に来てください。一人でいたくないんですから」
お前は両親と聞こうとしたが俺は答えが分かった。彼女は今に帰ったら、彼女の家に眠りに着くまで一人でいるかもしれない。
あのとあったばかりのことで彼女の寂しさは二倍に増えただろう。これ以上厄介なことが起こらないように彼女の家に行くのは今の状況でベストなチョイスなのだ。
「分かった」
俺はやれやれと頷き承諾した。
ポケットからスマートフォンを出して、『友達の家に行くから俺なしで帰ってくれ』と美奈子に送った。美月にも喜多村の家に行くに関してメッセジーを送り、スマートフォンをポケットにしまうと横道をあとにし、喜多村の家に向かった。




