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第二十一話 アヤが出来ること

 総偽精霊は偽精霊のそばに止まってミナからリョウヤまで七人の顔を見る。


「こいつは」


「この人は」


 アヤだけではなく、ミツキもこの総偽精霊の顔とその不気味な笑顔を見たことがあると覚えた。


 呪いをかけられた夜には、この人はそこにいた。即ち、この人は総偽精霊だわとミツキが思った。


 このやつはあの夜にここに来たんです。このやつなんです。殺さなければならないんです。いいえ、殺したいんですとアヤが思い浮かんだ。


 総偽精霊はホンユジ精霊部族の三人を見つめて話す。


「ほう? ホンユジの精霊の三人かい。意外だねえ……そうだねえ、あなたたちはあの夜に消えた子供よねえ。家族は元気?」


「お前!!」


 歌うごときトーンで総偽精霊は物議を醸すようにそう言った。


 絶対に殺すんですと思った途端アヤが一歩を踏もうとしたけれど、ミレイは彼女の手首を握る。


「アヤちゃん待って! あいつは怒らせたいだけなんだ。あいつは総偽精霊だから強いんだよ。攻撃をするなら一緒のほうがいい」


 あの総偽精霊がアヤちゃんの怒りを買いたいのは明らかすぎる。けど、あたしはさせない。この総偽精霊はつよいでしょ……それでも、アヤちゃんの殺意は恐ろしい。彼女の気持ちを感じても彼女は今に感じているのは二倍ほどかもね。無茶をさせないように彼女を抑えなきゃと、思いながらミレイがそう言った。


「そうですね。ありがとう、ミレイさん。ミヤ、リョウヤ、ミレイのいうとおりなんです。一人で攻撃をしないほうがいいんです」


「分かりました、姉ちゃん」


「了解っす、姉ちゃん」


 深い息を吐いた後、アヤがそう答えた。彼女の妹と弟が同じ間違いをしないようにアヤがそう勧めて、ミヤとリョウヤが頷きながら答えを出した。


 しかし、アヤの思いは変わることなくそのまま口にする。


「絶対にこいつらを殺すんです!」


 アヤがそう宣言したや否や総偽精霊は悪意こめて笑顔を浮かべて言葉を吐く。


「ほう? ちょっと落ち着いてくださいねえ。子供が殺すという言葉を言うのは良くないねえ。恨みでもあるかい?」


「このクソやろうはうるさいんです」


 こいつは面倒くさいんです。本当に殺したいんです。けれどミレイさんは言ってくれたのは正しいんです。馬鹿なことをしないように冷静のままでいいんですと考えてそう述べた。


「ほう? クソやろう? この可愛い子がこんなに悪口を言うのは意外だよねえ」


 頭を横に振って総偽精霊がそう言った。


 雄一の方へ視線をやると彼を指差して言葉を継ぐ。


「そうだねえ、あっちらの世界の人はあなただよねえ」


「……そうだけど」


 俺を殺すに来たかもしれない。けど今の状況であの時みたいにミナとミレイだけに頼れる。でも、このやつは総偽精霊だぞ。それ上、この前のやつも強いんだ。そうだ。ミツキもいるしミレイによって精霊連携でミツキは強いんだって。それで、アヤたちもいる。けど、総偽精霊を殺したいと言ってもそれを出来るのは無理だろうなと雄一は思いながら総偽精霊を眺めて彼の次の言葉を待つ。


「タムラくん、この人を殺せなかったのかい。弱いねえ」


「こいつは問題ねェゾ。問題ってはそのふたりの精霊だゼ」


 タムラという偽精霊がそう言いつつミナとミレイを差すと、アクトという総偽精霊は忌まわしい笑顔を浮かべる。


「あの女の子たちのかい? 仕方はないよねえ。で、その女の子は?」


 アクトはミツキを指差しながらタムラに聞くと、彼は肩を竦めて答えを出す。


「分からねェよ。見たことはねェゾ」


「ほう? まさか……そうだねえそうだねえ。僕はこの子を見たことがあったよ……どう呼べばいいのかい? 呪われた子? それとも半女神さん?」


 アクトはそう宣言するが早いかタムラは頭を掻き、改めてミレイを見る。


「そうかヨ……その女子は呪われた子カ……マー、あいつと一緒にいるしナ」


「そうだねえ。最後に見たのは呪いをかけたあの夜にねえ。あの頃に小さいだったねえ。でも今は大きくなってよねえ……彼女の顔はミコ女神とそっくりだねえ」


 わたしは呪われた子だということは覚えたわね。その上、お母さんの名前も言った。呪いが解かれたのは分かった? おそらく、わたしを殺すに来たのかしら? それとも、また呪いをかけるのかしら? いいえ、今にはそれはどうでもいいわ。アヤちゃんたちとミナさんとミレイちゃんと川宮くんを巻き込ませたくないの。けれど、どうすればいいのよとミツキが考え、彼女の前にいるミナからリョウヤまでの背中を見る。


 タムラは舌打ちをして口を開く。


「綺麗じゃねェか。彼女を殺すってもったいないゼ」


「殺さないよ。彼女は総偽精霊に進化をするのを待つよねえ」


 総偽精霊に進化をするってのは、たぶん呪いの効果なんだね。あいつはミツキちゃんの呪いは解かれたのはまだ気づいていないらしい。でも彼女の顔を覚えた。それはまずい。大変なことになるかもねとミレイが思った。


 アクトはもう一度ミツキの方へ視線をやり、彼女の呪いを感じられなくて、瞿然たる表情をしながら話す。


「ほう? あなたの呪いは……解かれたのかい?」


「彼女に話しかけないで!」


 ミレイはそう叫んで人差し指でアクトを差す。


 総偽精霊は不気味な笑顔のままで言い返す。


「分かった分かった。解かれたのかい。初めてだねえ」


「呪いを解かれた? ありえねェだろ……それはムリなモンじゃねェか」


 タムラがそう聞くが早いかアクトは指を鳴らしながら語る。


「ありえるよねえ、タムラくん。あの三人の白い髪の子供はホンユジ精霊部族だねえ。そのホンユジは呪いを解けるねえ。けれど、僕は知る限り、総偽精霊の呪いを解かれるのは初めてだよねえ。その上、呪われた子だねえ、彼女は僕た六人に呪われたねえ。すごいねえ」


 最後の言葉を言うと総偽精霊の表情は真剣になる。タムラはアクトの真剣さの意味を把握したようで雄一たちの方へ歩き始めた。


「メーレーは」


「白い髪の子供を殺したまえ」


 その命令にタムラは笑って答える。


「リョーカイ」


 わたしたちを殺んですか? このやつ一人でですか? それはあるわけがないんです。けれど、この方がいいんです。こいつを殺した後、七人であのクソやろうを潰すんですね。望むところなんです。絶対に殺してやるんですと思いながらアヤが口を開く。


「ミナさんミレイさんミツキさん雄一くん、わたしたちの後ろでいてください。ミヤリョウヤ、この気持ち悪いやつを殺しましょう」


「はい、姉ちゃん。面白いっすね」


「分かりました、姉ちゃん」


 緑色なトラックスーツのポケットから二つの刃針を出すと、その刃針でアヤを差す。


「出来るモンならかかってこいヤ」


「お言葉に甘えて」


 そう言ったや否や、瞬きの間でアヤがタムラのすぐそばに現れ、白い光に包まれている拳で偽精霊の顔を殴る。彼は二歩下がると彼の鼻から出る血を手首で拭って話す。


「速えェな……けど、それだけでおれを倒さねェ」


「そうっすね。速く死にたいならそうしてやるっすよ。ミヤ、あれ」


「はい!」


 アヤの速さほどでもない素早さでタムラの両側にミヤとリョウヤが迫る。タムラがそのミヤとリョウヤの攻撃を防ぐために両手で刃針を取り、ミヤとリョウヤに向く。けれど、ミヤとリョウヤが足を止め、ただ愉快そうで笑いながらタムラを見る。


「は?」


 彼は状況を理解できなくて二人の顔をうかがうとアヤのことを覚えた。彼女の方向へ視線をしようをしたけれど、それを出来る前にアヤが白い光に包まれた拳でタムラの胸を刺し通し、彼の背中からアヤの拳が出た。


 タムラは血を吐き、そのままで意識を失った。アヤが拳を抜き、アクトのもとまでタムラの死体を投げた。


「ほらね、出来たんですよ。おやすみなさい」


 アヤがそう言いながら彼女とミヤとリョウヤが笑う。


 やばいぞ。アヤはとんでもないほど強いんだぞ。たぶん、総偽精霊を負かすのは無理なもんでもないな。でも、あいつを殺した。そんな簡単にあいつを殺してしまった。そして笑った、三人は。怖いなと雄一は思った。


 アヤちゃんは躊躇わずに偽精霊を殺した。アヤちゃんとミヤちゃんとリョウヤくんは恐ろしいと彼女の足が震えた途端ミレイはそう思った。


 アクトはタムラの頭を踏み、しょうがないと言わんばかりに頭を横に振って開口をする。


「弱いねえ、タムラくん。僕が一人でやらせるかい。仕方はないねえ」


 アヤがアクトを指差し、彼に話しかける。


「お前の番なんです」


「ほう? お楽しみねえ」


 そう言いながら総偽精霊が指を鳴らして、不気味な笑顔を浮かべた。


 無意識に雄一がミナの髪に視線をやると、雄一は思った通り彼女の髪は青く染まった。つまり、恐怖の表現の色である。

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