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第31話 サリアの思い

勢い余って書いてしまったので投稿しておきます。

明後日の投稿がなくなることはないと思いますのでご安心ください。

 ――夜になったら襲ってくるに違いないわ。

 私になんでも願いを叶えてもらえるというのに、仲良くしてほしいで終わるはずがないもの。

 権力も金ももらえるのに同棲を選んだということは、体を狙っているのね。

 仲良くがどこまでかはわからないけど、初めてを奪うことも含めて言っているのでしょう。


 なら今日の夜には……。


 そう考えてしまって、部屋の中で荷物を整理しながら私は赤くなってしまった。

 後ろにはミナトがいる。


 彼が猛獣になるまであと4、5時間くらい。


 ――私の初めてがこんな形でなんて。


 やはりお父様の言っていたとおりだ。

 男は誰しもが獣である。

 私はそう言われて生きてきた。


 だから城では私の周りに男はいなかった。


 そして私が共学である王立学校高等部に入学することが決まったとき、お父様はとても私を心配してくださった。


 けれど入学早々私の失敗ですぐに男と同棲しなくてはならなくなった。




「そろそろお風呂に入ってくるわ」


 試合でかいた汗を早く流してしまいたい。

 そう思って荷物の整理が終わった瞬間にミナトにそう伝えた。


「――お、おお」


 私は着替えを持って浴室へと向かう。


 ここでミナトが襲ってくる可能性はある。

 覗いてくる可能性もある。


 なんにせよ早く上がってしまいたい。

 私はさっさと体を洗い、湯船につかった。


 そしていつの間にか鼻歌を歌っていたことに気付き、すぐにやめる。


 しばらくして、のぼせてきた私は体を拭いて浴室を出た。

 しかしいつものように下着を着ようと探すが、見当たらない。


 ――まさか……!


 私は急いでバスタオルを体に巻いて、洗面所の扉を開けた。


 すると反対側のドアノブに私の下着がかかっていた。


「その落ちてたから……。てかいい歌だったぞ」


「……っ」


 下着を見られて鼻歌も聞かれてしまって、私は羞恥にさらに火照った。


 しかし顔を赤く染めて俯きながらそう言うミナトに、意外と純情なのだとも思ってしまう。


 いや演技の可能性だってある。

 それに下着をどんな視線で見てたのかは想像がつく。

 どうせ息を荒くして見ていたのだろう。




「どうして私の蹴りで倒れなかったの?」


 夕飯を食べてひと段落ついた頃に私は尋ねた。


 私の強化された足で蹴られて立てる人間は初めて見たので、気になっていたのだ。


「ああ、あれはただ肉体強化してたんだ」


 ミナトはソファに座る私の横で照れ臭そうに答えた。


「あの一瞬でお腹にも肉体強化を施したってこと?」


「いや、試合中は全身を強化してたから……」


「――え?」


 全身を強化していた?


 そんなことができる人間はいるはずがない。


 そもそも肉体強化は膨大な魔力を消費する。

 だから平均的な魔力量なら1試合でほとんどの魔力を消費する。

 しかもそれはどこか体の1部のみに強化を施してだ。


 それをミナトは試合中ずっと肉体強化をしていたと言うのだ。

 確かにそれなら私の蹴りに耐えられても不思議ではない。


 ただその場合、ミナトの魔力量は人間を軽く超えていると言わざるを得ない。


「ん?」


 ミナトが不思議そうに私の顔を覗き込んできた。


「い、いや何でもないわ」


 そんなまさかと思ったが、今日の試合で魔力が減っているのか眠くなってきた。

 そして小さくあくびをした。


「それじゃあそろそろ寝るか」


 私の眠気のサインに見入っていたミナトは、すぐに視線を逸らして言った。


「う、うん」


 ミナトは立ち上がって寝室へと向かう。

 私は覚悟を決めてミナトの後についていき、寝室へ入る。


「じゃあ俺はソファで寝るからお休み」


 ミナトは私にベッドで寝るように促して、寝室を出て行こうとした。


「え? 何もしないの……?」


「何か言った?」


 私がつい発してしまった言葉はミナトには聞き取られなかったようだ。

 危なかった。


「い、いえ何も。……ミナトも一緒に寝れば?」


 さすがにこの無駄に大きなベッドを1人で使って、ミナトを狭いソファで寝かすのは気が引ける。

 けれど今のは勘違いされてしまうかもしれない。

 すぐに私は言い直す。


「べ、別に一緒に寝たいとか、そういうんじゃないんだからね」


「はいはい」


 ミナトは口調に比べて急にカクカクした動きになってベッドに寄って来た。


 ――ほんと、わかりやすいわね。


「し、失礼するぞ」


「ど、どうぞ」


 ――なんで私も緊張してるのよ。


 自分から誘ってしまったものの、男を同じベッドに入れることにやけに緊張してしまう。


 そして私はミナトが寝息を立てるまで、しばらくの間寝たふりを続けた。




 ――まさか本当に寝ちゃうなんて。

 襲おうものなら少しは抵抗しないと、なんて思ってた自分が馬鹿らしいわ。


「……この安心しきった顔は何よ」


 私はミナトの横顔を見ながら小声で言う。


「私だけが意識してたみたいじゃない……!」


 なんとなく敗北感を覚えた私は、横顔をフニフニしてやる。


 ――女の子とは違う柔らかさね。


 男の肌、しかも頬になんて触れる機会が一切なかった私は、つい手を止めずに触ってしまう。


「この……! 魔力量は早く言いなさいよね……!」


 自分でも無茶なことを言っているのはわかっている。

 しかし、一国の王女になる私がこんな男に負けたということは悔しいことで、つい当たってしまうのだ。


 それでも目を覚まさず穏やかに眠るミナトにそんな気も薄れて、私もやっと眠りについたのだった。


ご覧いただきありがとうございます。

評価、ブクマをどうかお願いします。

本当にやる気が出るんです!

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