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第27話 入学早々詰みなんだが

 本日は入学式だ。


 寝慣れない柔らかすぎるベッドに睡眠を妨害されたが、胸のわくわくで眠気なんぞ微塵も感じない。

 朝飯も腹八分目までしっかりと取った。


 いざ参らん。


 そして俺は送りの犬車から降り、地面に足を下ろす。

 見ると周りの景色はパレードかと思うくらいに輝いていた。


 俺のいる場所は校門から少し離れている。

 他の犬車が俺たちよりも前にいるからだ。

 それでもたくさんの人に賑やかな声、それにいろんな色の浮かぶ光がこの場を満たしている。


 俺は辺りを見渡してから、青春の始まりを肌で感じつつ進み始めた。


 校門付近は人でごった返しているが、俺も含めて同じ制服を着こんだ生徒達は先生からそれぞれ紙をもらい大ホールに向かう。


 大ホールは校内にあり案内に従って向かうと、そこは劇場のように椅子が段ごとにずらっと並んでいた。

 すでに半分近くが埋まっており、俺も紙に記入された番号の席を探し始めた。


 席は前の方にあった。というか前から二列目だった。

 しかも真ん中の方だった。


 俺の両隣はまだおらず、することもなくただ魔法陣を素早く構築する練習を脳内で繰り返した。


 すると俺の右側の男子生徒がやって来た。


「やあ。隣失礼するね」


 少し緊張気味にそう言って座った。


「ああ……。えと俺の名前はミナトだ」


「あ、僕の名前はカイリ・メイリスです。よろしく」


 俺はカイリが差し伸べてきた手を取って、緊張がばれないようになるべく自然に笑った。


 ――しっかしイケメンだな、おい。

 俺なんかゴミくずレベルだな。


 普通にしているだけで、女子がまとわりついてきそうな顔と話し方をしている。


 ――うらやま……、いやいや大丈夫だ。

 こういうやつに限って何か悪いところが一つや二つ、できることなら三つくらいはあるはず。

 いやあってくれ。


 俺がゴミくずな思考をしていると、逆側の席の方がやって来た。

 また男だ。


 ――ジョシは?


 まあいい。例えここが男どもの巣だとしても女子は必ず俺の元へ来るはずだ。

 なぜなら俺が異世界転生者だからだ。


 つらい思いをしたんだ、いい思いもさせてくれ。

 せめて女子は。高等部でともに学ぶことのできる女子は!


「あの? なんで唇かみしめて、拳握りしめて目を燃やしているんですか?」


 ちょうど席に着いた新たなお隣さんから、的確な突っ込みを受けてしまった。


「ああ、何でもない。俺の名前はミナトだ。よろしく」


 本日二度目の同じセリフに、今日何度この言葉を言うのだろうと考えてしまう。

 そうまだクラスに入っていない。だから言う機会はまだまだあるのだ。


 それにクラスにどんな人がいるのか楽しみで仕方がない。

 公女殿下がいるみたいだけどな……。


「申し遅れました。僕はフィリップ・ベイソンです。よろしく」


 そして手を取り合った。




「静粛に!」


 突然場内に女性の声が響いた。

 途端場内は一斉に静まりかえった。


 するとスポットライトが一点に当てられた。

 見るとそこには司会進行担当だろう女性がいる。

 

 しばらくすると再び声が場内に響いた。


「ただいまより天成暦1035年王立学校高等部入学式を挙行いたします」


 ――うぉお。

 立たなくていいんだ。


 俺がおかしなところに感動していると、入学式はどんどん進行していった。


 アリス先生のスピーチには感動した。……きっと。



 式が終わると上の席にいる親たちが退場した。


 そして説明会が始まった。

 ガイダンスと言った方がいいのだろうか。


 早速司会進行をしていた先生が話し始めた。


「新入生の皆さん。改めてご入学おめでとうございます。今年は新たに350人が入学しました。しかし卒業できるのは実力のある100人ほどです。そのほかの人は退学か留年となります。皆さんそうならないように頑張りましょう」


 先生はそこまで言って一呼吸ついた。

 俺はなんとも投げやりに聞こえる言い方だと感じつつ続きを聞く。


「さて本校の生徒は全員で800人近くいるわけですが、全寮制ですので皆さん寮にお住まいです。寮は15階建てで7階までは男子が、8階から14階は女子が使用します。その中で一年生は1、2、3階と8、9、10階を使用可能です。3、10階は二年生も使用しておりますので、ご注意をお願いします。ちなみに今朝渡した手紙がその部屋番号とクラス、番号にリンクしております」


 ――まあさすがに女子と男子が一緒の階ってことはないよな。

 知ってたんだからね!


「次は普段の生活についてですが、これは各自に紙が回ると思いますのでここでは割愛させていただきます。ええ、最後に本校には食堂がありますが、やっているのは昼食のみです。朝食と夕食は各自で自炊してください。そのための設備は整っているはずです。何か不満があったり質問があればすぐに先生へ言ってください。以上です」


 やっと長い話が終わった。


 アリス校長が気を使ったのか面倒だからか、言うことが簡潔でよかった。


 そしてクラスへ行くよう指示されて、俺はゆっくりと流れる人の波に流されながら、やっとの思いで遠く離れた教室へとたどり着いたのだった。


 席は自由なようで俺はフィリップとカイリとともに後ろの方の席へ着いた。

 どうやらクラスには30人ほど生徒がおり、男女比は同じくらいのようだ。


 生徒が全員席につくと、先生が来るまで待機時間となった。


 緊張感が漂う教室の中で、しばらく俺たち三人が雑談をしていると教室の扉が開いた。


「やあ諸君、担任のアリス・フォーレットだ。校長なんかもしているが、この1組の担任を任されている。諸君らも知っての通り、この学校は実力主義を掲げている。1組は学年トップの生徒を集めている。次に2組、3組と下がっていく。というわけで校長である私が直々に諸君らを指導する。よろしく頼む」


 ――え。初耳なんですけど。

 俺学年トップのクラスにいて大丈夫なのか?


 そう思いつつみんなと同じようにペコっとお辞儀をする。


「先生、実力主義をうたっているのにもかかわらず、入学試験を受けてない人物が1人いますが?」


 挙手とともに、1人の女子の声が教室中に響いた。


 ――詰んだ。

 入学早々、俺崖っぷち。


「これはこれは公女殿下。はてなんのことだか、私にはわかりかねます」


 ――公女殿下――!?

 ノークラス、ごめんな。仲良くなれそうにないや。


 校長先生はとぼけるが、公女殿下の発言は俺の冷や汗のように止まらない。


「嘘はいりません。入学試験の情報はすべて持っていますので。ね、ミナトさん?」


 公女殿下がこちらを睨んできた。

 しかも笑顔で。


 ――いい――――やぁああ!!

 こっち向くな!! 名前呼ぶな!!

 回りの視線がーー!!


 終わった。


「公女殿下、校長として申し上げます。……人を悪く言うのは実際に悪いところを見てからにしろ」


 初めの柔らかい口調から、校長の威厳が溢れる説得力のある口調に変化した。

 でも圧をこれでもかとかけているかと言われれば、そうではない。

 先生としてただ生徒に注意をしているようだ。


 ――校長先生、大好きです。

 愛してます。


「そこまで言うなら見せてもらいましょう。その学年トップレベルで、入学試験を受けずとも入学を許された逸材の実力を!」


 公女殿下は力強く言い放った。


 ――今のって校長があんなこと言ったからか?

 ちょっと煽っちゃったせいだよな?


 終わった。

 俺魔法を発現させるのが手いっぱいで、まだ手加減したバハリスさんの猛攻を半分しか防げないんだぞ。


「ほほう。入学早々試合か。まあいいだろう、今日は水曜日なので来週の月曜日第3訓練場で行うことにしよう。それで……、そこまで言ったのなら何か賭けるものが必要なんじゃないか」


 アリス先生は公女殿下にそう告げる。

 そると公女殿下は自信満々に答えた。


「私がもしも負けてしまうことがあれば、彼の願いを何でも1つ叶えてあげましょう」


「何でも? 天使に誓って?」


 校長の強い視線に公女殿下は力強い声で返す。


「もちろん。ただし、私が勝ったらミナトさんには退学していただきます」


「……わかった。それでは来週の月曜日第3訓練場で試合だ。諸君らも見に来るように」


 ――え。なに勝手に俺の承諾なしに条件受けてんの。

 退学確定したわ……。


 公女殿下のフラグ発言があっても、今の俺じゃ到底かなう気がしない。

 彼女の実力を知らない俺が、負け確と考えているのはおかしいかもしれないが、どうしても勝てる気がしない。


 しかもノークラスとの約束を破って、仲はもとより壊滅的。

 そのうえ退学ときたら……。


 ノークラスに素っ裸で屋敷を追い出されてもおかしくない。

 普段ニコニコしている変態だからやりかねない。


 その後紙が配られたりともろもろの作業を終えた後解散となり、俺は重い気持ちのまま寮へと向かったのだった。


読んでいただきありがとうございます。

期待できそうと感じた方は、ぜひ☆たちを塗りつぶしてやってください。

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よろしくお願いします。

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