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第22話 唐突な晩餐会

 女の子2人を泣かせた罪深い俺は、その次の日からもバハリスさんとクラリスさんの容赦のない授業でぼこぼこにされては、ラミリアとフィリムに癒されるような生活を続けた。


 雨の日も風の日も外に出てはひたすら走らされ、素振りをさせられ、殺されかけ、その後は魔力の操作の練習をひたすらさせられ、罵られ、えげつない量の課題を出され……。


 ――つっら!!

 高校のときよりも課題多いし、肉体的にも精神的にもつれぇ。


 でもラミリアとフィリムも一緒に剣術と魔法は学んでるし、2人とも頑張ってるし癒してもらってるし、余裕……ではないが、なんとか耐えられた。


 ちなみにフィリムが妹になった件で、ラミリアは驚いていたが認めないと思いきれないような、複雑な面持ちをしていた。


 そして、ついに魔力の操作を習得した。

 といっても、かなり集中して数十秒とかけてやっと発動する程度だ。

 それが高等部入学式の3日前である今日。


 前日にはここを離れ王都に行かなくてはならない。

 そして、前々日もとい明日は準備やらがある。

 だから魔力操作の練習はほぼできないだろう。


 いったいタイミングがいいのか悪いのかわからない。


 ――明日でラミリアとフィリムとお別れか……。

 最後2人に抱き着いてクンカクンカでもしてラミリムパワー溜めとこうかな。


 心の中で冗談気味に思うが。

 そうでもしないと王都に行ってラミリムパワーが枯渇して死んでしまうかもしれない。


 ――俺、ラミリアとフィリムに依存しまくってんなー。

 まぁしゃあない。

 美少女で優しいんだもの。


 察しているとは思うがラミリムパワーとは、ラミリアとフィリムと楽しくおしゃべりしたり、可愛い姿を見たり――まぁいつも可愛いんだが、あわよくば接触したりすることによって溜められるパワーのことだ。


 それがないと俺は寂しくて泣く。


 それからしばらくすると、食欲をなくし寝たきりになる。


 もっと時間が経過すると、ラミリアとフィリムが橋の向こう側のお花畑で手招きしている景色――いわゆる走馬灯が見えて、死ぬ。


 ――だろう。


 そんなことを考えながら、俺は自室で1人魔法の練習をしていた。


 感覚を掴めば失敗することもあるが、かなりの頻度で発動するようになった。


 発動したとき、うれしくて騒いだらクラリスさんにしっかりお叱り受けたのはいいとして……ほんとに感動的だったわ。


 物質が何もないところに出現するという非科学的な現象をこの手でやってのけたんだからな。


 俺は暗くなった外を眺め一息つくのだった。



 次の日、俺は王都へ旅立つ準備をしなければならなかった。


 準備をする俺の心は、四分の期待と六分の寂しさで複雑な気持ちだった。


 王都に行けて高校にも通える。そんな期待。

 ラミリアとフィリムと離れなければならない寂しさ。


 俺は準備するものがほぼ無い中、自室で1人静かにトランクと見つめ合った。


 しかし午前中みっちり稽古と魔法の練習をした俺は、いつしか心地の良い陽気にベッドで眠ってしまった。



 目を覚ますとラミリアとフィリムが俺の横に座っていた。


 この目覚め美少女、なんかデジャヴだ。


「なんでラミリアとフィリムがここに? 俺的には最高だけど」


「なんでって、もう夜ご飯の時間よ」


 ラミリアは少し呆れたように言った。


「え、もうそんな時間か! えべぇ寝過ぎた」


 外を見てみると、もう紅に染まった世界が視界に飛び込んできた。


 ――この景色とも、この部屋ともしばらくお別れなんだよな……。


 ラミリアとフィリムは、ベッドに座りながら浸る俺を微笑みながら食堂へ行きましょうと促した。


 食堂につながる廊下を俺たち三人3は進む。

 俺の前にはラミリアとフィリムが歩いている。


 ――この廊下ともこの屋敷ともしばしの別れだな。


 そう思いながら食堂へ着いた。

 途端、先程からの感傷的な気分はどこかへ吹き飛んだ。


「「「「「「ミナト!! 王立学校高等部入学おめでとう!! 行ってらっしゃい!!」」」」」」


 屋敷に住む全員の声が食堂に響いた。


 その食堂はパーティーのように飾りが施され、テーブルにはたくさんの皿とともに大量かつおいしそうな料理が並んでいる。


 服こそみんないつものと変わりはないが、これが人を招くものなら正装でなければ立ち入れないレベルのものである。


「え、あ、ああ、ありがとう。行ってきます!!」


 正直、パーティーなんてものが催されるとは思っていなかった。


 だから戸惑ってしまったが、催される側からすればありがたいことだ。


 その後みんなで楽しく食事をしたり、会話を楽しんだりと晩餐を満喫するのだった。



 そのパーティーもそろそろ終わりかなと思ったころ、


「そろそろプレゼントを渡しましょう。皆さん用意はいいですか?」


 ノークラスはそう言った。


 するとみんなが俺の前で1列に並んだ。


「私はミナト様に何もすることができませんでしたけれど、受け取ってください」


 1番端に並んでいた薄赤髪の子供のようなメイド少女、フィアリスさんが差し出してきた物はネックレス。

 装飾はほぼされておらず、男の俺でもつけやすそうなものだ。


「ありがとうございます」


「このネックレスは肌身離さずつけていてください。絶対にです」


 少し圧を感じる言い方に違和感を感じるが、美少女が肌身離さずというのだから、従わないわけにはいかない。

 俺はそのネックレスを首にかけた。


 次にノークラスが出てきた。


 ――こいつからもなんか貰うのか。


 メイドさん人形を渡されたらどうしよう。

 ほしいけど、いらないわ。

 ほしいけど。


「私からは羽ペンを差し上げます。学校に入学する人に羽ペンを送るのがこの国の文化なんですよ」


 まともやな。


 安心したというか、どうせだったら人形がよかったというか、すごくありがたいけど。


 次にラミリアとフィリムがやってきた。


「これ、2人で作ったの。寂しくならないようにって。ネックレスにはかなわないけどね……」


 そうラミリアは言いながらフィリムとともに人形を手渡してきた。


 ――なになに?

 対抗心が出ちゃってるのかな?

 オジサン萌え死んじゃうよ?


 冗談を脳内で言いながら、手渡された二つの人形をよく見るとラミリアとフィリムにそっくりだった。


 フィリムとラミリアは死んでいることになっているために外に出ることができなかった。

 そんな買い物にも行けない状況でも、俺のためにこんなそっくりで愛おしい人形を作ってくれたのだ。

 そりゃあネックレスに物理的な価値では勝てないかもしれない。けどフィアリスさんのを否定しているわけではないが、思いの量と質ではそれこそ桁単位で違っているはずだ。


 だから本当に感謝しかない。


 ということでこいつらは感謝の意を込めて携帯型ラミリムパワー分泌機と名付けよう。


「ラミリア、ありがとう。……ネックレスにかなわないなんてことないさ。思いが大事なんだぜ」


 キラン!


 ――確実に決まったな。


「そう? ……ありがとう!」


 ラミリアはいろんな意味で困惑した表情を見せたが、すぐに嬉しそうに微笑んだ。


「これで私たちを思い出してね。お兄ちゃん」


 でたよ。

 あと急だよ。

 お兄ちゃん。


「あ、ああ。忘れるわけないだろ」


 俺はラミリアとフィリムの人形を大事に抱えた。


 そして、クラリスさんがやってきて、分厚い本を渡してきた。


「え、何ですか? ここにきて教材ですか?」


 俺はその分厚さについ言ってしまった。


「違います。魔法書です。これにたくさんの種類の魔法陣が入っていますので、暇があれば覚えてみてください。まあいつも暇でしょうけどね」


「辛らつだな、クラリスちゃん。ま、ありがとうございます」


 さすがにクラリスさんのノリにも慣れてきた俺はそんなことを口走る。

 もちろん当のクラリスさんはふざけんなという顔で俺を見てくるのだが……。


 最後にバハリスさんの番だ。


 何を頂けるのか、もう正直検討はついている。

 あの長さにあの細さ。


「ミナト様が欲しておられた、刀でございます」


 やはり刀だ。

 なんか緊張してきたな。


 俺はとりあえず近くのテーブルに今までもらった物を置いておいて、バハリスさんの差し出す刀をゆっくりと手に取った。


 そして鞘を外した。


「ワンダホー……」


 俺はその刀身の美しさについ見惚れてしまった。

 素晴らしい角度の反り。

 刃文は美しく、肌はよく詰んでいる。


 文句のない、素晴らしい一品だ。


「ありがとうございます」


 俺は試しに誰もいない方に向けて一振りしてみる。


「やっぱ重いですね。刀は」


 木刀と比べても重い。


「それでしたら、魔力で身体強化をすればどうにかなるかと」


「そうか。ありがとう」


 なるほど。

 身体強化なるものがあるのか。

 ほんとなんでもありだな。


 そして俺は刀を鞘に納めた。


 その後は名残惜しさにみんなと話をしたりして楽しい時間を過ごしてから、眠りについたのだった。


読んでいただきありがとうございます。

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画面越しに作者が舞います。

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