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《くえばわかる亭》ビールフェスタ!①

この物語は……書き始めると驚く程に日常描写が多い。



 この世界には様々な現世的物品が存在している。そりゃもう嫌味な位に。だが、この《星降る地》に、唯一存在しない物があるとすればそれは……、



……日本酒、らしい。



✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳



ここは《星降る地》に点在する地方都市の町【ベリアント】。自由貿易地区の為、人と物資の行き交う活気のある町だ。その町の一角には《役の神》達が陣取る《職業斡旋所》も開設されていて、様々な人や情報が行き交い、更に熱気を与えている。


そんな町の中程に最近出来た《くえばわかる亭》と名付けられた飲食店が、界隈での話題をさらっていた。何せ、料理は安くて旨く、そして誰も見たことの無い独創的なメニューばかり……しかも、主人は(見た目は)若くて可愛らしい異人さん……と来れば、誰でも一度は脚を踏み入れたい、と思うだろう。

そんな店の中からは……明るく弾んだ、酔っ払いの笑い声が通りにまで聞こえていた。



「ぎゃはははははははははぁ~♪おらぁ!脱げ脱げハジメぇ~♪」


「理不尽っ!!」


シャルロットが酔っているようには到底見えない機敏さで、離れた場所に居たハジメの腰の下にタックルし、押し倒す。

勿論直前に足を絡めて逃げられないようにすることは忘れていない(反則です)。


モルフィスの思い付きで夕暮れからビール主体のイベントが開始され、噂を聞き付けた常連客(大半が役の神だったが)が次々とやって来ては、自慢のソーセージとビールに舌鼓を打っては帰ったり担ぎ出されたりしていた。

そんな中、当のモルフィスはさっさとアーレヴに店番を任せると、自分はビール→ソーセージ→ビール→ピクルス→ビール→……の無限コンボに突入し、メートルを上げていた。


そんな中、未だ残っていた面々のシャルロットにハジメは肉弾戦を挑まれて、苦戦していたのだった。


単純な力比べで負ける筈のないハジメだが、シャルロットは間違いなく女神様。怪我をさせてはいけないと、多少の気遣いもあるにはあったのだが……

どうやら無用らしい。

《放埒》の化身たるシャルロットは、文字通り枠に嵌まらない女神。そんな彼女にしてみれば、宇宙戦艦だろうと何だろうと関係ないようだ。


最初のうちは申し訳ないので、そっと力を入れて身体に廻された両腕を外そうとした。しかし意外に彼女の力は強く、あれ?あれれ?と思いながら力を込めていったが……、


「にっひひひひひひぃ~ッ!!ハジメよぉ~、それがおまえのぜん力かぁ~ッ!?まぁ~だ、まぁだだなぁ~♪」


明らかに拘束の意図がセクハラだったらしく、シャルロットはハジメの足に脚を絡めて股で挟み、横抱きの姿勢からハジメの耳に舌を這わせて「はいはいそこまでだからね~!ウチは性的衝動(リビドー)の解放スポットじゃありませんからね?…………ふぅ……。……全く、世話の焼ける女神様だわな……」


店主のモルフィスがシャルロットの顔に唇を近付けると、不思議なことにシャルロットの身体から力が抜けて、安らかな寝息を立て始める。


「……た、助かりました……シャルロットさん、力が強くて全然太刀打ち出来なかったです……」


「そりゃそーだ!《放埒》ってのは、枠から放たれた馬の意味、なんだぜ?逆に言えば枠が無い状態だから、ノーリミットで行動出来る究極のチート持ち!……ま、普通に催眠の息(スリープ・ブレス)が効くからまだいいけど……寝落ちしてなかったら、ハジメ、飽きるまで()()()()()()()()()


ムニャムニャ……♪と呟きながらしどけなく寝入るシャルロットを肩に担いで、とりあえず急拵えの寝台を椅子で作って寝かし付け、やれやれ……と戻ったハジメに、


「まぁ~まぁ~、ハジメすぁ~ん!!キュ~ッてやってちょ~らいよぉ~、キュ~ッ、てねぇ~!!」


……一難去ってまた一難。両手に持ったジョッキの片方を押し付けて、もう片方は自分でキュ~ッ、を実践しているマニトバさんでした。


「あ、あのこれはどうも……って、ほら、アッチにソーセージ有りますよ?だからあんまりくっついて来るとそのうわぁっ!?」


「そー、せー、じぃー、は、ここにもあるぅっ!!きゃははははははははははははぁ~♪うぷ、…………っくん。……うぃ♪」


明らかに↑↓入力を食道辺りで終了させながら、マニトバは素面の時なら絶対に口にしない下ネタを放ちつつ、ハジメの脇に陣取って、


「ハッジメさぁんはぁ~、ど~してぇ~、わたひもぉ~、くぁいなぁさぁんもぉ~、抱いてくれないんつすかぁ~っ!?」


ぶふぉッ!?と、全く同じタイミングで、クァイナとハジメはビールを噴いた。


顔まで真っ赤にしたマニトバは、どうやら男女の細やかな心の機微が織り成す恋愛模様……のような議題としてではなく、ハグ程度の意味で言ったらしい、と判ったのは次の瞬間だった。


口元とテーブルをそそくさと拭いていたハジメ(クァイナもだが)の肩に、横から抱き着きながら軽く力を籠めて、それから静かに身を離したマニトバは酔いの廻った赤い顔ではあったが、その口調は落ち着いていた。


「ハジメらぁんはぁ、真面目しゅぎるんれすぅ……。ちからのたりないわたしれすけどぉ……もっとぉ、たおっていーんれすからねぇ?(頼っていいんですからね?)」


言葉は呂律の回らない舌足らずではあったが、きっと普段からそう感じてハジメと接していたのだろう。マニトバはゆぅら、ゆぅら……と頭を揺らしながらもハジメの手に自らの手をそっ、と重ねてから、


「……ハジメらぁん、こーいぅー時だからぁこそぉ、気をぬいてくらはいねぇ……判りまひたかぁ~?」


「は、ハハハ……判りました、気を抜きますよ?わざわざありがとう……っ!?」


ハジメの語尾を遮るように再度体当たりのようなハグをしながら、マニトバはハジメの耳元で、


(……ですから、たまには……()()()()()()()()()()()()()……ンフフ♪)


と小声で囁いてから、何事も無かったかのようにジョッキを空にしていった。


✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳


……主人公が死ににくいと、自然とこうなるのかもしれませんね。

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