表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

33/38

竜涎香の使い道

気になる作家さんの新作、自作品の更新、仕事、そしてタイトルにヤラれた作品のレビュー……今日も深夜に更新、申し訳ありません。



 「ただいま戻りました!!……あれ?マニトバさんは?」


見慣れたテーブルとカウンターに点在する人影に、白基調の衣装と印象的な二つ纏めの髪型のマニトバの姿を見つけられなかったハジメは、奥に陣取る小柄なモルフィスを認めて声を掛ける。


声に気付いて顔を上げた彼女は、無事に戻った二人ににこやかな笑顔を向けながら、しかしハジメの語尾に直ぐ反応し、


「そっ!ついさっきまで居たんだけど、ちょっと出掛けるって言って出ていったよ?ま、すぐに戻るみたいなこと言ってたから心配いらないんじゃない?」


言いつつハジメとクァイナを手招きしつつ、注文の料理を少し離れた席に運んでほしいんだけど、いい?とお盆に載った肉汁弾ける熱々の鉄板料理を差し出し、テーブルに陣取る女性の方を指差して、よろしくッ♪とハジメに手渡してくる。


「ハイハイ了解しましたよ~!……って、このお肉……うわぁ、丸鶏のオーブン焼きですか……激しいことで……お待たせいたしました!!」


「……やっと来たかぁ……って、おおぅ……凄いな、よくぞ注文したな自分……と、言いたくなるボリュームよね?うんうん……いただきますっ!!」


テーブルに付いていた若い女性は、言葉とは裏腹に水色のシャツを腕捲りし、髪の毛を束ねながら暫く料理を眺めた後、意を決したようにナイフとフォークを手に取り解体作業を開始する。


良い具合に焦げ目の付いた鶏肉は、香ばしい漬け汁を掛けながらじっくりと蒸し焼きにされていたらしく、皮にナイフを入れた瞬間、パリッと小気味良い音を立てながらじわじわと肉汁を流し、白い美肉からもうもうと湯気と程好く火の通った料理特有の食欲をそそる香りを放ちながら、肩身、股肉、そして胸肉と外されていく。


席から離れながらついその様子を見ていたハジメの眼には、一心不乱にナイフを煌めかせながら作業に没頭する少し髪の短めな若い女性(自分よりも若く見える)の姿に、いつも美味しそうに料理を平らげるクァイナの姿を重ねてしまい、苦笑する。


ナイフが胸元から尾部へと切り進み、ついに鶏が半分に別れた瞬間、中からゴロッとしたニンジンにジャガイモ、煮卵や押し麦等の食材が現れて、見た目以上のボリューム感溢れた料理につい注目してしまい、彼女の注文を運んだハジメもつい見取れてしまったが、とりあえずクァイナとモルフィスが待つ席へと戻ることにした。



「おぅ!ゴクロー様!!どーだった?何か言ってたか!?」


「いや、夢中になって解体してましたよ?余程お腹が空いてたのか待ってたのかなぁ……それと、見たこと無いヒトだったけどココの常連さん?」


席に戻ったハジメにモルフィスは質問するが、ハジメは気付けば客の女性から話し掛けられてもいなかった。そのことを含めて答えてから質問を返すと、


「ん?一見(イチゲン)さんだよ!最近になってココに来たって言ってたから、アンタ達と同じよーなヒトなんじゃない?」


言いながら、あ……骨壺忘れた!と言いながら小ぶりな壺を手に取り女性の方へと駆けるモルフィスの後ろ姿を眺めながら、チャッチャと走る彼女のスラリと伸びた足の動きに、小型犬特有の足さばきを思い出してハジメは軽く噴き、


「どーしたの?モルフィスさん見て何か面白いことあった?」


「…………こ、こんな感じで……っ!!」


ハジメは人差し指と中指を下に向けながら交互に動かして、小型犬の動きを説明した瞬間、


「……ば、バカっ!!も、モルフィスさんに失礼じゃないのよ!?……う、でも……チャッチャカとか……ブフッ!?」


次第に脳裏に浮かび上がるモッフモフの犬(小型)が夕闇の町を飼い主を引き連れながら、猛烈な速さで歩を進めているにも関わらずあんまり先に進んでいない映像が再生されたクァイナは、即座に悶絶してしまい、


「ん~?どーしたのクァイナ?それにハジメも~?」


折り悪く戻ってきたモルフィスが、柔らかな頬っぺたの片側をテーブルにふにょん♪と載せながら、やや顔を傾けて二人に語りかけたので……、


「いやぁ~んカワイイぃん☆キャハハハハハハハ~っ♪」


ツボに嵌まったクァイナがモルフィスの顔を両側からふにょん♪と優しく持ち、ふにゃにょん♪と揉みつつ笑い出し、代わりにモルフィスは事態についていけず困惑から唇を突き出し仏頂面になり、


「ぶ~っ!!ワタシだけ判んない盛り上がり方はや~め~て~よぅ!!」


不機嫌そうな彼女にハジメは、まぁまぁ……と宥めながら、砂漠での顛末を語り始めるのだった。



✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳



砂漠鯨との死闘を語るハジメ達に、入り口の扉をタンッ!と開けながら誰かがやって来る。


「ただいま戻りました!お二人もお戻りになってたんですね?」


それは手に紙袋を持ったマニトバで、三人の元へと歩み寄る。彼女は手にした紙袋を持ったまま厨房へと入り、ゴソゴソと何かを氷室へと入れてから戻って来て、


「モルフィスさんの言ってたお店にありましたよ、アレ!いやぁ、探す手間が省けて助かりました!!見たことも聞いたこともないのに、簡単に手に入ったから驚きました!」


ニコニコと笑顔の彼女は言いながら、やや小さな紙袋をモルフィスに手渡し、


「はい、コッチも言われて買ってきた品です!同じお店にありましたよ?……何だかよく判らないモノですけど、食べ物なんですよね?」


「そーそーこれこれ!!ソーセージにはコレがピッタリなんだよね~♪後でみんなで楽しもうじゃないの!うんうん……あ、思い出すだけでもヨダレが……」


はしたないモルフィスに、ハジメとクァイナは(今日も通常営業だなぁ……)と思いつつ、


「あ、そーだ!モルフィスさん、これ……見たことありますか?」


言いながらポケットに仕舞っておいた革袋から、ハジメが竜涎香を取り出してモルフィスに手渡すと、


「ん?……なにこれ……ん~?……はて、どっかで見たことあるよーな?……ちょい待ちね?……ん~と……んむむ……」


暫く唸って考えていたモルフィスだったが、ピコン♪と音が鳴りそうな表情へと変化した瞬間、


「あ!思い出した!これ、魔宝玉(まほうぎょく)じゃん!!よーくこんなモン手に入ったなぁ~!!」


ポン、と手を打ち鳴らし、その塊を掌で転がしながら、まぁ見てなって……と暫く凝視していたが、


「…………もうちょい、もーちょいねェ……いー子だから言うこと聞いてチョーダイね……っと!!」


モルフィスの手の中で突然蒼白い閃光が迸ったかと思うと、それは猛烈な勢いで手の中で発光し周囲を照らし出し、店内を隈無く照らし出す。


「うっわ!!何これモルフィスさん熱くないのっ!?……って、熱くないんだぁ……何で?」


「綺麗な光……でも、眼がチカチカしてきちゃう……ハジメが持ってても何も起きなかったのに、不思議ねぇ~」


二人が驚く中、ドヤ顔のモルフィスはしてやったりの様子で鼻腔を膨らませながら、


「んふふ~♪魔力の高い者が手にして魔力を注ぎ込めば、コイツはそれを溜め込んで……臨界突破の瞬間、猛烈にそれを放出すんのさ!!例えば、魔導の心得のある者が駆式の真ん中にコイツを据えて魔力を注ぎ込んで、完成する寸前に止めてコレを持ち歩いていけば……必要な時に、最小限の魔力だけ注ぎ込むと、瞬時に準備完了っ!!ってなって、一気に駆式が完成するって使い方が一般的だわさ!!使い方に依っては連鎖式戦術型大魔導だってお手の物、って訳!」


「な、何だかすっごく沢山喋ったわねぇ……でも、よく判ったわ~。つまり、キー・ストーン代わりにもなる凄い石だって訳ね?でも、これって……高い物なの?」


クァイナは感心しながらも、即座に算盤を弾く変わり身を見せたが、モルフィスの次の言葉を聞いて絶句してしまう。


「……価値?アハハハハハ!!そんなもんあるに決まってるだろ~に!!だって今ワタシが螺じ込んだだけでも、軽く見積もって魔導師十人が寝食を忘れて十日間ぶっ通しで練り込んだ量に匹敵してんだよ?ワタシをなめちゃ困るからね~♪……まぁ、それはそれとして……コイツ一個で、同じ重さの竜白銀貨と同等の価値があるぞ?噂じゃ宇宙戦艦の発進装置(スターターパーツ)の部品に、似たような素材が使われてるって聞いたこともあるからな!」


「マジでぇ~!?……って、う、宇宙戦艦って実在するの!?」


驚愕するクァイナに、はぁ?何言ってんの?と言いたげな顔のモルフィスは、


「当たり前じゃん……ココの先にある砂漠の真ん中に《星を航る船》が転がってるじゃん……アレ、そんなに珍しいもんでもないだろ?」


そして、だってさ~ワタシだって宇宙を渡る種族なんだぞ?と、さも当然のように言いながら、手の中の魔宝玉を転がしつつ、


「……転移者が居て、神様が居て……魔物に魔獣……ほんでもって魔神にチーター……残るはオーバーテクノロジーが有っても、不思議じゃないじゃん?普通だぞ?こんな世界ならね!!」


愉快そうに言いながら、傍らに置かれた紙袋から大きな瓶を取り出して、その瓶に嬉しそうに頬擦りしつつ、


「それはそれとしてぇ~、やっぱソーセージとアレと来たら……この子が居なきゃ始まんないよぅ~♪なぁ?ハジメもそー思わないか?」


「いや……アレとかコレとか……何が何だかちっとも判りませんけども……それって、もしかして……?」


ハジメが指差す瓶の中には、何やら黄色がかった粒が表面に見えていた。


「……あ、私判った!それって……粒マスタード!?」


クァイナの言葉にニヤリと笑うモルフィスは、瓶をゆっくりとなでなでしつつ、至福の表情を浮かべつつ、ピッ!と人差し指をクァイナに向けて、


「……クァイナちゃん、正解っ!!そう!粒マスタードちゃんだよぉ~ん♪」


モルフィスは上機嫌で瓶を持ち上げ腰に手を当てながら、


「今夜は《くえばわかる亭》のビールフェスタと洒落こもうじゃないのさ~♪みんなも参加決定だかんね~!!」


フルフルと身体そして触角を揺らしながら、嬉しそうに破顔するモルフィスの姿に、ハジメは嵐の予感をひしひしと感じているのだった……。





次回は酒池肉林……茶番劇?そろそろだな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ