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決着そして



 【…………っふぅ……やるわね、流石は魔剣使いだわ……まさか、振動その物を限定的に制限するなんて……これじゃ手も足も出せないわね?……ま、付いてないけど】


《サンドクィーン》は、効果範囲の外に逃れて冷静に分析し、デフネとアジサイの二人が繰り出した効果をそう断じつつ、事態の収拾を思案していた。


デフネはアジサイの能力を用いて、効果範囲の一定の振動のみを打ち消す【逆位相効果】で砂漠鯨の力を削いでしまったのだ。


娥者髑髏(がしゃどくろ)》のアジサイは、効果範囲の音を自由自在に操る力を持っていた。その能力は範囲こそ狭いものの、その実状は正にチート、正に超能力だった。

小さな範囲に特定の人物の言葉を発生させたり、大きな範囲内の特定の単語(人名など)を消したり……能力の応用は多岐に渡り、使いように依っては強力……しかし、単純な力業のみを求める者には無用の長物でもある。


デフネも手に入れた当初はさっさと保管庫に入れてしまおうか、と思っていたのだが、相棒のギルガメッシュに「武ばかり求めると、駆け引きも算術も出来ない木偶の坊になる」と嘆かれて意地になり持ち歩いてきて、やっとこれでギルガメッシュに大きな顔が出来る、と小鼻を膨らませていた。



さて、そんな状況とは露知らず、ギャ~ギャ~と大騒ぎしていたクァイナだったが、とうとうマニトバに双眼鏡を託して一人駆け出して砂漠へと向かっていった。


「……ま、あの速度じゃ、着いた頃には終わってそうだわな……さーて、こっちはこっちで楽しもーじゃないの!なんたっけ?マーニトゥーヴァだっけ?」


「あの……マニトバです……微妙に強そうな勘違いですけど……」


シャルロットに付き合うように促されるマニトバだったが、泥酔した彼女がシャルロットに激しく詰め寄ったりしたのは、またいずれ……。



✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳



「……それはともかく、あんだけ居た化けクジラ共が、すっかり見えなくなっちまったね。アンタ助かったみたいじゃん?」


「そうみたいですね……ところでデフネさんって、この辺りのヒトなんですか?」


お互いに当地の事情には疎い二人。そのせいもあってかデフネとハジメの会話は実に噛み合っていなかった。横で聞いていたギルガメッシュとアジサイは、何とも言い難い微妙な表情のまま、それとなく関係ないことを引き合いに出しつつ話題にしていた。



そんな些末事はさておき、いつものハジメは淡白気質だったが、今回は違う。今回だけは違うのだ!!ハジメはいつになく真面目に攻めていたのだ。デフネ相手に口説きかねない勢いで食い付いていた!!


(……な、なぁギルガメッシュ……な、何かコイツ……やたら必死なんだけど……私、どうしたらいいんだ?)


「何を小娘のようなことを……貴女の実年齢を話せば離してくれるのではないでしょうか?」


小声で耳打ちするデフネに、躊躇い無く返したギルガメッシュの提案に迷うデフネだったが、その答えを出す前に事態は急展開していく。


【……やっぱり、話し合いするつもりだったのね……こうやって出てくれば、攻撃せずに言語通話も容易く出来るのだから……そうだったんでしょ?】


「判って貰えて光栄ね……お互いに随分と長生きしているみたいだし、ここは女子会よろしくお話する?化けクジラの御姉さん♪」


【いえいえ……流石の私も出産に育児の繰り返しで……すっかり年を取ったけれど、加齢は生き物に必然の枷……その流れから外れた吸血鬼(バンパイア)におばーちゃん扱いされても……嬉しくはなくてよ?】


「……話に着いていけません……」


……と、主人公は主人公らしさを諦めちゃいました。まぁ、仕方ない。中身は只の二十代なんだから。……こんな状況下で、我が物顔で割り込めるなら第一話からそうしてましたがな。



✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳




さて、全長三百メートルの砂漠鯨と(外見的には)妙齢で魅惑的な女性の対談は、ハジメの知らぬうちに終わったらしく、手打ちの算段も有ったようで。

砂漠鯨から離れたデフネはハジメに近づくと、


「ほら、ハジメったっけ?手、出してみな?」


デフネに言われて大人しく右手を出すハジメ。


「片手じゃなくて、両手出してっての……それじゃ、ほい」


デフネは真っ白でシワひとつ無い、細くそしてしなやかな手を握り締めたまま突き出し、その長い爪の手をゆっくりと開いてハジメの掌の上に手渡したのは、子供の握り拳大の黒い塊だった。


「……石炭ですか?これ……」


「あのねぇ……何で砂漠鯨が手打ちの秘蔵品として、そんなありきたりな物を寄越すのよ?……それ貰って喜ぶのは暖炉位でしょうに……」


だが、元は現代人のハジメが悪い訳ではなく、その塊は見た目と違って呆れる程に軽かったのだ。そして一個一個が異なる形と断面を有しているにも関わらず、どこか法則性を感じさせる共通的な何かを感じるのだ。


「……これって竜涎香(りゅうぜんこう)……って言うんだけど、生きた砂漠鯨の体内に溜まる物なのよ?……で、これって魔力を長年蓄え続けて来た彼等だけに授かる物で、大きな物だとヒトの身体と同じ位になるって……」


……と、そう言うデフネにハジメは「いやいやいやいや!それってつまり……胆石とか尿管結石とかですよね!?違ってもそうとしか思えないんですけど!!」

と言いつつ砂漠鯨からの贈り物を嫌気に満ちた様子で持つハジメ。



「まぁ好きに使えばいいけど……それ、()()()()()()()()()()言ってたわよ?一つ有ればハクギンカ一枚並みって……で、ハクギンカって何なの?」


片や体内残留物を渡されて困惑するハジメ、そして相場を知らないデフネ……そして折り悪く、


「ハジメぇ~ッ!!生きてる!あぁ~よかったっ!!……って、その女性(ヒト)、どなた?」


最近すっかり影の薄くなったクァイナもやって来て、


「……うちのリーダーと、何かなさってたんですか……?」


自分より数ランク上の胸元をしっかりと凝視しつつ、彼女にしては珍しく若干冷ややかな表情で、デフネと対峙した。



……砂漠に新たな戦いの火蓋が今、切って落とされようとしていた……。





「……って感じじゃない!?ねぇ~ねぇ~シャルロッちゃあ~ん!!ねぇ~ってばぁ~♪」


「キャラ崩壊どこじゃねーぞ?マニトバちゃんよ?」


すっかり出来上がり、周りにビール缶を散乱させながら周りも気にせずに、シャルロットにしなだれかかるマニトバも……ある意味修羅場。


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