真打ちは美女でした
やっと辿り着いたぜ。戦い、闘い。続けて書けば戦闘。
……うっわぁ……えげつなぁい!見てよあれ……動物って単刀直入過ぎなのかしら……頭ん中ぐっちゃぐちゃに眺めて集団で催眠かけてるわよ?
……えぇ、私にも簡単に感知出来ますね。露骨を通り越してわざと周囲に見せるつもりで、派手に誘導催眠をおこなっている節が有ります。あざといですね。
一人の女が砂丘の上から眺めるその先は、ハジメが恥態を晒している真っ最中……なのだが、それは常人が見ても【灼熱の砂漠で身悶える遭難者】程度にしか見えない。しかし、彼女には砂漠鯨達の行為が魔力感知によって手に取るように判っていた。つまり、彼女から見て通常視点……そして魔力を感じての視点から言っても、ハジメは……御臨終寸前なのだった。
……ギルガメッシュ、ちょっと掻き回してもいーい?
……そう言うと思ってました。しかし、砂漠鯨達とまともにやり合えばお互い無事に済む補償は有りませんよ?
傍らに佇む心配げな相手に……ハン!と鼻で笑いながらタンッ!と煙管を腰掛けた岩場に打ち付けた後、
……んなもん戦場のどこら辺りに転がってるさね?ギルガメッシュ、私は義弟と違ってチャンバラが好きなんだからさぁ!
……ま、そうでしょうね。ロイ様は収集者、デフネ様は使用者ですから。
……ま、そーいうこと!それじゃあ、化けクジラ共をお仕置きしにいきましょーかね!
そう言うと煙管を煙草入れに収め、彼女は立ち上がり……背中のホックを器用に片手で外すと飛び出した黒い翼をはためかせ、青空へと舞い上がって行った。
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「ハジメッ!?……何だかヤバくない?さっきから倒れたまんまだし……うゎ、完全に囲まれちゃってるわよ!?」
クァイナはいつの間にか手にした双眼鏡(レンタル品)でその様子を眺めながら、彼の身に起きているピンクな状況には気付かずにやきもきしていた。もし彼女がその状況を的確に理解していたらそこまで心配せずに軽蔑していただろう。
「そ、そうなんですか!?……あの、それそこまで見えるんですか?凄いですね……で、ハジメさんは何処に居るんですか?」
マニトバはクァイナのそれを羨ましげに眺めながら、遥か彼方に点在する岩や砂礫に紛れたハジメの姿を見つけられずにやきもきしていた。もちろん彼女も実情を知ったら……ちょっと距離を取ってハジメとは接するだろう。当然だ。
「きゃはははははははははぁ~♪やっぱ私の見立て通り!!いーい酒の余興になってるなぁ!おもちろい!じっつにおもちろい奴だな!ハジメ君は!」
ごきゅ、ごきゅ……と露の付いた冷たいビールを流し込みながら、上機嫌のシャルロット。立て膝に肘を預けながら反対の太股をパンパン叩きつつ、愉しげに喜んでいる彼女は、彼の置かれた状況を全て理解して尚……愉しそうだった……さすがはパンキーな女神様。ついでにハジメの恥態も彼女には愉しい余興でしかなかった。流石は懐と胸元の広い広~い女神様……余裕綽々でやんの。
「今から急いで行ったら間に合うかな!?あ~もう何でスキル使わないのよアイツは!!」
苛立ちながらクァイナは一人でも行こうと立ち上がりかけたが、
「止めとけ止めとけ!今更オメーが行った所で勝負に水を差すだけだぜ?それにあの砂漠鯨とサシで殺り合って勝てる自信が……あるんかい?」
シャルロットの言葉に反論も出来ず、力無くまたペタンと座り込んでしまう。
「あぁ……もう!どうしたら……っ?」
憔悴するクァイナは自分の前をスッ、と通過する影に気付きその動きを目で追ったが、それが大きな翼を持った何者かで、その姿がどう目を凝らしても人の姿にしか見えずに困惑する。
「な、何あれ……っていうか、誰なの?あんなの見たことも聞いたこともないわよ……?」
呟くクァイナ、そして受け取った双眼鏡でその姿を確認したマニトバも首を振りつつ、
「……た、確かに翼を持った人……みたいですが、ならば他の転移者か何かでしょうが……」
「あ~、あれか?アイツこそ真の《チート保有者》って奴だよ。まぁ、アイツが出ちまったら……ハジメ君も死ぬことはないと思うぜ?あーあ、つまんねーの!!」
唇をへの字にしつつ、手をヒラヒラとさせながら【否定!!】アピールをしつつ愚痴るシャルロット。
「……よく見とけよ?アイツはデフネ……真の《チート保有者》って奴で……【世界の創設者から愛された】奴なんだよ。判ったか?」
意味深に語るシャルロットの言葉に【?】を頭の上に浮かべるクァイナとマニトバ。しかし彼女達はこの後、シャルロットの言った意味を目の当たりにするのだが……。
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ハジメはその精神内で繰り広げられ続けていく、めくるめく素晴らしい刻(ピンクタイ~ム♪)に文字通り、心を奪われていた。
しかしその模様は実況出来ない程、くんずほぐれつでウヒャヒャ的な感じで実に困った……しかし本人的には時間が止まればいいのに……と非科学的且つある意味ファンタスティックなことを願うのも当然な、ヤバいシーンの連続だった。
一応……適度に描写すると……う~ん、例えば女御輿の御輿に変化したハジメはそんな自分に戸惑いつつ、しかし全身に触れる担ぎ手は全員女性な訳で、実にわっしょいわっしょい!だった……なんだそれ?ハジメ君のおつむは大丈夫か?
(ああ……しゅごすぎりゅ……みこし最高……もう、俺このまま、みこしになったまま海まで運ばれて投げ込まれたいぃ……)
……まぁ、通常営業みたいだからヨシ!心配して損したわ。
【楽勝楽勝~♪今ならコイツ、パンツ脱いで町までダッシュして鉄腕して即御用されちゃうわよ!!】
【なーにがチート保有者よ~!ヘッポコ過ぎてお話になんないわよ!】
【あー、飽きてきちゃったわぁ……コイツ、そろそろ御開きにしちゃわない?】
【そーねぇ……ま、面白いオモチャだったけど、壊れ難いってだけだったわね……そんじゃ、みんな!最大出力で揺さぶるわよ!?】
【……じゃ、いっせーの、せ】【……みんな!!急速潜行ッ!!】
ハジメに対する共振波動を行い、瞬殺しようと息を合わせた瞬間、リーダー格の砂漠鯨の警告が走り、砂漠の上に出ていた者が即座に身を翻したその場を強烈な熱波が通過し、砂粒を瞬時に溶解凝固させてしまう。
【あちちちちちぃ~っ!!何よ!?一体何が起きたの!?】
【判んない!!でも、確かに攻撃みたいなのはあったわね……】
【……まさか、上空から魔導以外の方法で狙われたの?】
【しっ!!……リーダーが教えてくれなかったら……私達でも黒焦げだったわよ?……確実にね……】
用心深く砂の奥底まで逃げ延びた砂漠鯨達は、慎重に上空の状況を調べ始めたが、不可思議なことに敵の姿は見当たらなかった。
【どーゆーこと!?人間の姿はおろか、連中が操っていそうな者も何も居ないなんて……】
【落ち着いて!まだ居なくなったと決まった訳じゃないわ……】
【そうね……リーダー、どう思います?】
【……各自、一定の間隔でグリッド陣形……そして、共振を用いて並行探査……針一本でも、見逃しちゃダメよ?】
【【【【……ハイッ!!】】】】
彼女達、鉄の結束を誇る砂漠鯨は本気になり、広大な砂漠の下で深く潜行しながら等間隔で広がりつつ、お互いに小さく共振しながら微弱な探知波動で砂の上の様子を探り始める。
次第に共有する情報を驚く程の速さで伝達し合い、短い時間が過ぎた後……、
【……やるじゃない?……猿(※①)のクセに……】
リーダー格の砂漠鯨はそう呟くと、配下の鯨達に向かって、
【奴は……ハジメとか言う男の身体の上に載ってるのよ!!】
そう伝えた後、ハジメを包囲するように集まるように指示を出した。
(※①)→マカコとは、ポルトガル語で猿の意味。この世界でポルトガル語が使われている訳ではなく、リーダー格の鯨がたまたま単語として知っていて、人間→猿→転じてチート所有者の蔑称として使っただけ。よくある蔑みとはこうして定着し、幼児から老人まで意味を知らずに使われることがままある。オートフォーカスカメラの別名等と同じである。
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「あーあ、バレちゃったみたいねぇ……華麗に舞い降りた場所があんちゃんの上だなんて……化けクジラには判んないと思ったのに……」
《……デフネ、確かに作戦的には悪くないと思いますが、騎士道的には最低の行為である、と断じておきます……誠に最低です》
直立不動のまま俯せになった、ハジメの背中と後頭部に両足を載せてサーフィンよろしく仁王立ちしていたデフネは、長い朱髪を片手で振り上げながら、
「最低です……?……あーそうですよ、私は確かに負傷者らしき男の上に立ってます、あーそうですよ立ってますよ!だから何だってのよギルガメッシュ!!」
腰に差した一振りの朱塗りの鞘をバシバシと叩きながら、激しい口調で叫ぶデフネだったが、
「……まったく、これだから私の心労は何時も晴れず……そして、不運な犠牲者は増えるのです。まぁ、犠牲者にしては随分とお元気そうですが……」
いつの間にか傍らに立っていた、所謂礼服を身に付けたギルガメッシュと呼ばれる男が、デフネに踏まれ続けていたハジメに手を伸ばし、その肩をポンポンと叩きながら、
「……いつまで寝た振りをしているのですか?健全な男性にあるまじき被虐主義者ならば……まぁ、そっとしておきますが、如何なさいますか?」
「……いやいやいやいやいや、別にそれを望んでいる訳じゃありません!どちらかと言うと降りて頂けたら幸いですからっ!!」
背中にデフネを載せたまま、降りてもらえなかった為やむ無くじっとしていたハジメは慌てて否定しつつ、やっとこ降りて貰えたのでうんしょ!と、立ち上がりパンパンと服を叩きながら、
「いやはや何だか判らないうちに……うん、まぁ……助けていただけてありがとうございます!……って、あなたが上に載ってた訳じゃないの?」
と、ギルガメッシュに向かって戸惑いながら答えつつ、振り向いた先のデフネの姿を見た瞬間……、
「……って、あれ?ここ、夢の続きじゃ……ないよね?」
……また、戸惑っていた。そんなハジメに見つめられて、またデフネも戸惑いつつ、
「夢の続き、って……あんた、何言ってんの?初対面なのに?」
デフネは全く気付いていなかったが、ハジメはデフネみたいなタイプがド直球だったのだ。長い朱髪に少しだけきつめな印象の顔立ち、しかし……切れ長の眼や整った眉、そして意志の強さを表しているような口許とは対称的な……、
「まぁ、いいや!……私はデフネ……で、そっちの二本差しが魔剣のギルガメッシュ……見ての通り、コイツは魔剣で私はその使い手……つまり、魔剣士って呼ばれてる……なぁ、聞いてるのか?」
……少しだけハスキーな声、そしてやや砕けた口調と……、
「はい!聞いてます!!ただその……実に美しい方だなぁ……と、そう思って……つい……見とれてしまいましたッ!!」
……その豊かな胸元は、窮屈そうに白いシャツと黒い革のチョッキの下に収まってはいたものの……確実にはみ出し衿元の絶対的境界線を侵犯していました。ここ、かなり重要……でもハジメ君、だからと言ってガン見しちゃダメだよ?……紳士的に。




