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砂漠の王

遅くなりましたが更新します。う~、この言葉久々に書いたな。



 転移者……って言っても……人間だけとは限らない。




ほら見ろ、ま~た一人ぶっ殺された。あらら~直撃ッ!!ペチャンコになっちまってるじゃん。


あ~らら、チートだ何だと言っても所詮、中身は小物ばっかりだな~♪



✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳



未だ薄暗い黎明の時、(すみれ)色の空の下。


…………………………ぽん。…………………………ぽぽぽぽぽぽぽぽん!


……若干間の抜けた……いや、ハッキリ言うと、実にアホくさい音が砂漠に木霊する。それは地中深くに埋められた特殊な壺が、連鎖的に破裂音を奏でていたからだが……しかし、その意味はアホくささとは真逆であり、その壺の破裂音に反応するように調整された式神が宙へと舞い上がり、白い巨大な竜巻へと変わった瞬間……、


連鎖的に式神の竜巻が砂漠の外縁部を取り囲み、【能力保有者以外立ち入り禁止・死んでも知らない】の御触れが行き渡ることになっていた。隊商を率いる商人達は足止めされて、乗り合い馬車も運行を見合わせる箇所が現れるのだけど、


……代わりに即席で見物用の物見の塔や櫓が組まれ、その周囲に出店が立ち並び活況を呈するのだから……彼等の商魂の実に逞しいこと。



そんな景観が当たり前のように見受けられる中、数年に一度と言われる《大狩猟祭(だいしゅりょうまつり)》は開催された。


《大狩猟祭》とは、特定の標的を狩り獲る為にかき集められた面々が、渡りの途中で【星降る地】の都市に最接近する巨獣の群れを狙う催し事……である。




✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳




ずずずずずずぐ……、


地中を進む何者かが発する地響きが鳴り渡り、ハジメは(はらわた)へ直に打楽器を当てられ乱打されているようだな、と思うのだが……、


【いやぁ~それにしても今回の《群れ》は、近年稀に見る規模まで膨れ上がってるねぇ!こりゃ長年続けてきた対策も、通じないかもしれないねぇ?】

【まぁ、私らは基本的に人間以外の生き死には関与しない方針だから、あの子達を何とかするのは人間自身の役目なんよねぇ~♪……あ、見てみてジャンプしたすご~い!】


物見の塔で酒片手にそんなことを話す【役の神】達のことを、ハジメは今ほどコンチクショ~!と思ったことはなかった。


「ハジメぇ~ッ!!一頭でも狩らないと承知しないからねェ~ッ!」


「ハジメさぁ~ん!!無理だと思ったら撤退も考えてくださいねぇ~!!」


クァイナとマニトバの両人は、町外れに設置された物見の塔(木造のやぐら)に陣取りながら、口々に煽りつつ心配してくれて……、


「てかクァイナさん!!こーゆー時こそパーティとして一致団結するべきなのではッ!?」


「んなこと言っても絶対に無理!絶対に無理ですからっ!!シッシッ!!」


ハジメとクァイナが押し問答している間にも、町の外縁部から疾風の如き人影が地を走り、砂煙を真上へと噴き上げながら近付く巨獣へと向かって高々と跳躍し……、


「うわっ!!あれって強化装甲服(パワードスーツ)じゃん!しっかもミサイルランチャーとかキャノン砲やらいっぱい付いてるしぃ……まさにチート!まさに強引~ッ!!そこに惹かれる憧れるぅ……って、あれ……?」


物々しい武装を取り付けた、見るからに場違いな先端技術の結晶と呼ぶべきその者は、着地と同時にホイールダッシュしながら砂漠の上を疾走し、砂煙を上げる巨獣へと近付いていったのだが、暫く進んだ先で突然砂の中へと没し、姿が見えなくなってしまう。


「あ~ぁ、ありゃダメだ……おおかた待ち構えていた群れの斥候に先回りされたか何かで、真下の【砂漠の液状化】をモロに踏み抜いたみたいだね……一度ハマったら重みで抜け出せやしないぜ?」


すっかり見物に徹した【役の神】のシャルロットさん。だがしかし胡座(あぐら)をかく彼女の周りにはグルリとビールの空き缶が取り囲み、傍らに投げ出してある袋には何故かスルメイカがぎっしりと詰め込まれていて、


「まー今更、後悔しても仕方ないぞ?ハジメもとっとと現場に急行して、私の酒の余興になってこい!!骨はたぶん拾ってやるから心配すんなって♪」


口の端からゲソを出しながら、そう言いつつ傍らのハジメの背中をバンバンと叩いて急かすので、彼は仕方なく見物用のやぐらから飛び降り、テクテクと歩き始めた。


「……それにしても、もう何人の転移者が死んじゃってるだろ……生き返る訳でもないのに……死ぬの、怖くないのかな……?」


ハジメはそう独りで呟きながら、勢い良く砂煙を挙げる巨獣の群れへと近づいていった。今日の格好は青いシャツとデニムのズボン。たまには現代風の格好もよかろう、パンクロッカーな女神も居るんだし。そう思いながらのチョイスだった。



✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳



……時を少々巻き戻し、ハジメが物見の塔から飛び降りて着地した時からちょうど一日前、職業斡旋所に赴いた際の状況まで遡る。



「薄っぺらいんだよねぇ~その認識感がっ!!」


激しい口調で(なじ)られたせいで、ハジメは意識が萎縮するのを実感していた。そんなのは社会人一年生時代以来で、懐かしくもあり苦々しくもあったのだけど。


「……た、確かに……人間だけがその……転生とかするって訳でもない……んですよね?はい……」


「だ~か~らぁ~ッ!!高い知能を有する生き物だったら、何だろうとその資格を有するっ!!それは判ったんだろ!?」


目の前に仁王立ちしている猛々しい【役の神】がそう論じ、腕組みをしながら指先で肘の辺りをトントンしながら、目尻と口の端を吊り上げつつハジメを睨み付けて説明を続けていた。



事の始まりはこうだ。ハジメとクァイナ、そしてマニトバが三人揃って《職業斡旋所》にやって来て、何か効率的な仕事は無いかと掲示板を眺めていたのだが、


【数年に一度の大チャンス!!【砂漠の王】討伐者募集!!】


……等と言う告知を見つけた彼等が窓口で内容を訊ねて、係の【役の神】に詳細を聞いている最中に、


「……でも、動物の転移者なんて……よくあるんですか?」


と、口を滑らせてしまった事が運の尽きで……更に係の【役の神】が《放埒》の女神だったのだ……流石は【悪運】の持ち主……のハジメ。


《放埒》を掲げる女神だけに、その出で立ちは実にパンキッシュで、「いやそれは完全にハイレグですよね?」と言いたくなる位の食い込み具合のショートパンツ(デニム生地)に、黒いTシャツを脇腹でクイッと結んだ感じ(しかしプリントされているのはピアスだらけの舌を長々と垂らした唇)の格好で、実に目のやり場に困る確信犯的な服装。


「有るに決まってるだろ!?お前なぁ……薄ぼんやりと生きてるんじゃねーよ!

恥を知れよ!恥をよぉ~!?」


燃え上がるようなショートヘア(しかも赤とオレンジ色の(まだら)カラー)を逆立てながら睨み付ける様は正に《怒れる女神》だった。



(……でも、この役の神さん……ノーブラなんですけど……)


だが、ハジメは()()()()()()()()()()()()()()()に、窓口担当の女神様を直視出来ない状態だったので、ほんのり勘違いしたクァイナは割って入ることにした。


「すいません!ウチのリーダー、そういう世事に疎いもので……ほら!ハジメもゴメンナサイしなさい!」


「や!?クァイナさんちょっとあたたたたたたッ!!」


突然頭の後ろと背中に手を当てられ【申し訳有りません】の角度を強制ペコペコ状態にされるハジメ。勿論クァイナさんの力は悪戯っ子の母親よりも強く……そして、速く容赦もなかった。


「おっ!ヘッドバンキングか!?イカすじゃ~ん!!キャハハハハハハッ!!お前らCOOLだな!!」


口からピアスだらけの舌を出して、両手を交差させながら指先を《ピーッ!!》のサインにしつつ上機嫌になる女神様。古風な雰囲気の身なりの神様が多い中で異彩を放つ彼女だったが、作者的には《ピーッ!!》は止めてほしい。


「うんうん、久々にロックを感じたねぇ~♪何か転移者って言ったらみぃ~んなJ-POPの匂いがしやがって……ド演歌もたまぁ~に居やがるけどよ?パンクやロックな奴が少なくてなぁ……うんうん」


細い指先に鈍く光る、ゴツいスカルリングがトントンと動きつつ暫くリズムを刻んでいたのだが、無事に彼女は役割を思い出すことに成功したようだ。


「……っと!?そーそー、お前らも【砂漠の王】討伐に参加すんだろ?いや参加しろコラ!ぜって~参加しろ!!そして面白可笑しく散れッ!!」


カチン、とリングで硬質な音を響かせながら、一枚の書類を窓口の台の上に差し出し、


「ハジメ……と、クァイナ……と、マニトバ……な?うんうんよしよし、やれば出来るじゃねーか。さて、まずは詳細説明っと……あ、俺はシャルロット。気軽にシャルねぇ、って呼んで構わねーぜ?」


シャルねぇ……もといシャルロットはそう言うと、手元の書類を仕舞いつつ説明を始めた。



✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳




……【砂漠の王】ってのはよ?むかーしむかし、この【星降る地】に堕ちてきた生き物だったんだけど、そりゃすげー沢山落っこちてきたんだぜ?


何でも奴等曰く、《槍で刺されて活きたまま包丁で脂身だけ削がれて棄てられた》らしくてよ……何頭も何頭も……。人間ってのは、酷なことしやがるよな?雑に半殺しにしてほったらかし……自分がされたらぜってー許さねぇことを平気でやらかすからな。


……でだ、可哀想なその連中に聞いてみると、《昔は陸で生きていたから、これからは陸で生きてみたい》って願ったんだよ、最初の奴が。


そっからは想像の通り、群れごと《転移者スキル》与えて自由に暮らせるようにしてやった……って訳。ま、俺がやったんじゃねーけど。


……ただし、この辺の砂漠には【魔素】が豊富に含まれてて、それを取り込んだ奴をまた別の奴が食って……そーやって上位捕食者の一翼になってるから……すげぇ強えぇぞ?普通の連中よりもデカいし、力も桁違い……オマケに《転移者スキル》も有るからハンパないかんな?覚悟しとけよ?



✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳



そう言いながら話を締め括るシャルロット。


「……強い……んですか……例えば、ドラゴンよりも?」


怖々と訊ねるマニトバに、シャルロットは手をヒラヒラと振りながら、


「強い?そりゃ強いに決まってんだろ~?砂漠に適応した全長三百メートルのカッチカチのデカブツだぜ!!そいつらが束になってドドドッて押し寄せてくんだかんな?しかもドラゴンなんかと違って群れで押し寄せてくる!!そりゃ~見物だぜ?俺も毎回酒呑みながら見んのが楽しみだからな~!」


そこまで上機嫌になって話した後、突然口許に手を添えながらハジメ達の方に寄せつつ、


「……んでよ?自称【最強】とか、【無敵】とか言ってるチーター連中が一発でぶっ殺されるの見んのが面白くてよぉ……ゾクゾクするぞ?マジで!」


ククク♪と悪そうに嗤いながら右拳を突き出すシャルロットさん。しかし親指は人差し指の下からからコンニチワしてました。だから止めろって。(※①)



(※①)彼女がチョイチョイ為されているハンドサインは、万国共通語ではない物ですが直接表記はしません。ノクターンでなら出来るのだろうか?






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