超時空戦艦な女優
「……これは……なんて荒唐無稽なの!?つーか、何なのよ……コイツ!!」
【スキルラーニングの魔女】は、容易にハジメへと近付き、自らのスキルを開放してハジメの能力を分析しようと試みたのだが、その途方もない耐久性、そして防御能力は完全に常軌を逸していた。
それは【ステータス閲覧・無制限】の能力をフルに実行しても伸び続けて止まることのない数値を指し示し、知覚できる限界を優に突破しても尚止まなかった。
……しかし、彼自身の身体能力は平均値よりもまぁまぁ大きい程度で、それだけならば異能者の端くれにもならず、一笑に付してさっさと彼を殺して立ち去っていたかもしれない。だが、彼女はそうはしなかった。何故ならば……、
「……【超時空戦艦】……の、船首人形……?何よコレ……オマケに、この普通の人間の総全長が……三十キロメートル?……有り得ないわ!」
……どー考えても出ない答えが知りたくなり、ついついその秘密を垣間見たくなり……好奇心の赴くまま、
……いつもと変わらぬ調子で【スキル・ラーニング】を開放……した。
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「…………はっ!?……あれ、私……ここは?……いつの間に?」
気がつくと彼女は真っ白な部屋の壁に設置された、小さな机に突っ伏していた。いや、よく見れば壁には鏡が張り付けられていて、その周囲を取り囲むように所謂《女優ライト》のような電球が付けられていた。
「……こ、これってもしかして……【控え室】……よね?……と、いうことは……ッ!?」
ハッ、と気付いた彼女は自らの姿を鏡に写すと……いつの間にか上半身は白いシャツ、そして白いピッチピチのパンタロン姿に変わっていて、足に履いていた筈のサンダルは品の無い真っ赤なブーツになっていた。
「なななななななに何これっ!?何なのよコレ……ってか白シャツだからブラ丸見えじゃんっ!!バッカじゃないのっ!?」
慌てて胸元を両手で隠しながら部屋から出ると、扉の脇にはこう記してあった。
【大村・美恵子 控え室】
「ブッ!?な、何で私の本名がぁ……てか!何で控え室なのよ!一体何を控えてるのよっ!!」
思わず吹き出してしまった美恵子は、唖然としながら食い入るようにそのプレートを凝視していたが、
「あ~っ!!美恵子ったらこんな所にいたの~?さぁ早く中に入って!!チャッチャと終わらせて撮影スタジオに行くわよっ!!」
背後から掛けられた声に振り向くと、そこには……、
髪を結い上げて団子状に纏め、真っ赤な眼鏡をかけた半袖シャツ(そこにはスタッフ専用のhyperbattleship Minakoと印刷されていた)を着た……見慣れた顔の……、
………………美恵子その人がメイク道具を抱えながら、立っていた。
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「……どーしたの?さっきから口をパクパクさせて……脳梗塞?」
「んな訳ないでしょっ!?……て、言うか……【ミエ子】……?」
美恵子は相手の胸元に光る名札の「メイク係 木村・ミエ子」の文字を目敏く見つけたのだが、しかしそれでも納得出来る筈がない。
「あ、ボーッとしてる間はないわ!さ、早く中に入ってメイクしないと!!」
手を引かれるまま部屋へと連れ込まれ、椅子に座らせられると、彼女のテキパキとした手腕によって、美恵子は【主演女優のミエ・ミエコ】へと変貌させられていく。
「あ~っ!あなた昨日寝る前にヘアーオイル塗らなかったでしょ~?あれほど言っておいたのに……全くぅ……自覚あるの!?もうスッピンじゃ表歩けない歳なんだからねっ!!」
くどくどと愚痴りながらも手は休めず、ミエ子は仕上げにトリートメントオイルを塗り伸ばしながらドライヤーを使い、髪の毛をセットし仕上げに入る。
「ねぇ、何か食べたの?……さぁ、今日も長丁場になりそうだから、何でもいいから胃に入れておいた方がいいから……ね?」
自然な気遣いを見せながら、ミエ子は後ろに置いてある籠からどっしりとしたお握りを美恵子に手渡すと、ぼんやりと手に持っている美恵子を見つめながら、
「まぁ……いきなり主演に抜擢されれば、そりゃプレッシャーも大変でしょうけど……ここで一発売れて名を轟かせれば……きっと大女優の道が拓けると思うわよ?……正念場なんだから、シャンとしなくっちゃ、ねっ?」
無言の美恵子に励ましの声を掛けるのだが、美恵子は沈黙し続けていた。
「……どうしたの?……何か悩みが有るなら……私でよければ、聞いてあげるけど……?」
「何が……?何がって……何でスケスケ白シャツで映画女優なのよッ!?何で私が私にメイクされてんのよ!?映画って何?女優って一体どーゆーことなのよ!?」
突然叫び出す美恵子に驚いたミエ子だったが、はた、と気付いたのか、振り向いて後ろ机から冊子を手に取ると……、
「ははぁ……さては台本の台詞か何かの練習だった?ごめんね?気が利かなくて……ハイッ!これ見直して練習の仕上げしたかったんでしょ?」
ポン、と手渡されたそれは、
「超時空戦艦・ミエコ」
と、記された表紙の映画用台本そのものだった……。
「ひいいいいぃ~っ!?な、なんなのよ……このダッサダサなタイトルは……絶対売れないわ!絶対に即刻お蔵入りの臭いしかしないわっ!!」
「……そう?ハ○コや映画秘○でも特集号出てたわよ?ファッショントレンドを取り入れた素晴らしい作品だってさ?」
台本を捲ると、
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主演・木村 美恵子
監督・木村 美恵雄
脚本・木村 美恵吉
演出・木村 美恵朗
撮影・木村 美恵太
美術・木村 美恵蔵
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……と、呆れる程に木村木村木村木村……目がおかしくなる錯覚に陥る程の木村大ラッシュに、思わず机へと突っ伏してしまう。
「あははは……何よ本当にコレ……あのハジメとか言うバカは……こんな茶番をクッソ真面目にやって……あの馬鹿みたいな能力を得てるのッ!?気は確かなの!?」
突っ込み疲れて、もはや力の抜け切った脱け殻のような美恵子の耳に、バタバタと廊下を走って部屋へと近付く足音が響いたかと思うと、
「美恵ちゃん!!さぁ本番だよっ!!早くスタジオ入りしてよね!?……ん?どーしたの?」
ガチャン、と扉を開けながら入ってきたのは……サングラスにハンチングを被り、鼻の下に髭を蓄えた……、
「いやああああああぁ~ッ!!またぁ……私なの~ッ!?しかも付け髭とかマジ頭悪いんですけどッ!!」
……やっぱり美恵子が……監督のトレードマークのメガホンを首からぶら下げながら、ちょっとだけ美恵子の胸元をチラ見しつつ、エヘン、と咳払いしながら残念な笑顔を浮かべて突っ立っているのでした……。




