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クエスト終えて



 剣と魔法の世界と良く言うが、魔法が強いか、剣が強いか。それを決めるのは間違いなく、切ったり撃たれたりする対象があるからだ。


では、俺のスキル《超時空戦艦》は、一体誰を、いや何に向かって放てばいいのか?まぁ……それ以前に何が出るかが判らないけど。



✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳



「それじゃ、《あたたかなおもてなしの心》……いってみよーかぁ~!」


そう言うとパチンッ、と指を鳴らしてハジメはスキルの発動を……、

(……考えろ考えろ……昨日のベッドイン・ザ・俺!……の時は確か窮地になって……じゃ、肉体的な危険性よりも精神的な危険性を……そりゃそうだ、追い詰められたのはクァイナとモルフィスさんにだったからな……それと、二人から狙われたのは俺の……いや、俺の危機じゃない、二人のどちらかに辛い気分を味わってほしくなかったから……そ、そうか……そうだ、そうなんだ!!)


……ポンッ、と手を打ち付けたハジメは遂に気がついた……そう、真の《あたたかなおもてなしの心》の意味を、そのスキルの存在理由について……だ。


「……はぁ、俺はなんて馬鹿なんだ……あ、額の剣が冷たくて気持ちがいいなぁ……。まぁ、そうなんだよ……()()()()()()()()()()()んだよ……最初から……」


額に押し当てられた亡霊の操る剣は、確かに業物ではあったが、魔剣等ではない。力を込めて握り締め、振るって初めてその威力を発揮する。同様にハジメは自分のスキルを魔剣から火が出たりするような【ボタンを押したら勝手に発動する便利な技】だと思い込んでいた……自分の身勝手な思い込みで……。


「……さぁ、それじゃ味わっていただきましょうか?……()()()()()()()!」


【なっ!?あ……な、何故……それを……?】


肉体のない筈の亡霊の狼狽え振りを見ていると、それはそれでほっこりと穏やかな気分になるのだから、妙なものだ。


今までの人生を振り返れば、自信や実力の無さ故に慌てふためき取り乱し、小さな失敗を大きな損害にしてきたことばかりだ。自らの死に至る過程も振り返れば自己管理と予測予防を怠った結果、哀れな結末を迎えたに過ぎない。

そこまで達観視出来るのも、こうして冷静さを失わないのも……このうざったい程、頑丈一徹な身体のお陰かな?……と思えば、多少不便でアホなスキルも……まぁ、許せるか。


しかし、先程は亡霊の性別を断定しただけなのに、その相手が目に見えて動揺しているが……種明かしをすれば()()()()()()()()()()()()()()()、胸部装甲の半径とウェストの平均値から割り出した性別判定で、そーならいいな~?程度の当て推量の結果だったのだけど……何かそれなりに推理で導かれた結論ぽく言った方が説得力あるかな?……あるよなぁ……?よし、その線でいってみるか。

 


……と、言うことにしたハジメは、エヘンッ!とわざとらしく咳払いをしてから、(……ちょっと恥ずかしいかも……?)とか考えはしたものの、まぁ、その辺は直感に基づいてって感じで……、


「いや、冷静に考えれば簡単だよ?……最初から俺狙い一択、出来なくてクァイナってのは、亡霊特有の妄執とも思ったけど、太刀筋っての?生まれて初めてザクザク刻まれたから何とも言えないけどその……軽くてさ、服ばっかり切り刻まれて……あ、これは違うような気がするって気付いた。……それなのに、クァイナ相手に斬り付けた時は、苦しまないように一太刀で殺そうとしてた。……そんな気遣いあるか?……だって普通なら……」


そう呟くハジメから、ほのかな……気付かない位に弱々しい光が立ち昇り、やがて太い柱のようにしっかりと伸びていき……気付けばそれは、辺りを柔らかく包み込んでいく。


「……普通なら、殺したい位に憎む相手なら、残忍に……長く苦しむように、急所外したりすんだろ?……腱や筋を断ち、自由を奪ってな……でも、アンタはそしなかった。俺の動脈や気道、眼や首筋、まぁ素人だから詳しくは判んないけど……腕は確かな割りに……優しいんだよ、亡霊のくせに。……だから、えぇっと……その……ま、何だか上手く言えないが……」



すっ、と差し出したハジメの右手に、亡霊は剣を離して左手を載せて、


「……成仏してくれ、な?」


あたたかい光に包まれて、次第に影のようだった姿がハッキリとしてきて、心無しかか……長い髪の毛を蓄えた、首元や線の細いうなじが見えたような気がして……、



【……ありがとう……恥知らずな()()()()()()……】


……最後の最後に要らんことを言って、光の中へと吸い込まれて行った。


ふーっ、何だかんだ有ったけど亡霊は成仏したし、俺のスキル【あたたかなおもてなしの心】の真理もちょびっとだけ判ったような気がするし……これはリーダー的な活躍をキッチリカッチリ出来たと思っていーかな?いーよな!?


……と思いながらクァイナの方へと歩き出そうと一歩踏み出した瞬間、


「だーかーらーっ!!ハジメッ!!アンタってばいちいち言わないと自分がほぼ裸族だって気付かないのッ!?バカバカバカバカバカァ~~ッ!!こんのフ○チン大魔王ッ!!」


「……のおおおおおぉ~~ッ!!!……く、クァイナさぁん……くひぃ……」


……まさかのMAX165キロの豪速球な石(直径8センチ)が……ポンポコピーな部分へとストライクするとかマジ勘弁なんですけど……。


あ、俺……基本的に触感や痛覚は平均的に備わってます!……じゃないと、食べ物を噛んだり服のボタンを留めたり出来ないからねぇ……そんな訳で、俺は軽く一瞬、意識を手放しました……。(※①)


(※①)→ハジメの肉体的苦痛は、本体である超時空戦艦のマザーコンピュータが必要と判断した時はいつでもどんな場所でも無制限に与えられる。結局、死なないだけで大抵の痛みは《ま、必要でしょ?痛みの無い人生なんてつまらないし》と認可されている。



✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳



「……と、そんな結末だったのね……了解いたしました。……ちなみに、二人に依頼した内容は確かに教会の亡霊駆除の話だったのだけど、遭遇したのは目撃談とは似ても似つかぬ猛々しい鎧武者だったのですね?……まぁ、流石は【悪運】の持ち主……不幸も極大まで膨らむってとこかしら?……ま、どちらにしても教会の浄化はイーッ!!さん達に確認して貰いました。その結果は確かに完了した、との報告は頂いていますので、これにて依頼は完了しました。お疲れ様でした!クァイナさん、ハジメさん!」


トントン、と書類の束を纏めたアドニスさんは、そう言うと引き出しから一枚の長細い板を取り出し蝋を垂らしてトンッ、と封印を施してから、クァイナへと手渡した。


「……それは霊符……私達、役の神が与える手形みたいなものよ?それを収配窓口で見せれば今回の報酬が支払われます。……何か質問は御座いますか?」


「……いえ、俺は有りません」


「あ、……私もパスです……一人だけ別盛りなら話は別なんだけど……それはないみたいだから……大丈夫です」


そこまで聞いた話に相づちを打ってから霊符を受け取って、今日の報酬を確認し、ひとまず《くえばわかる亭》へと戻って行った。



✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳



「いらっしゃいっ!!……あ、クァイナに居候か!で、首尾はど~だったの?」


店内に入った二人に声をかけてからモルフィスはクァイナとハジメだと気付き、配膳を済ませてからカウンターへと手招きする。


「いやいや……なかなかしんどかったんですが、キッチリカッチリ終わらせて来ましたよ!……んで、ここをこーやって……ホイッ!」


手渡された蒸しタオルをお手玉した後に手を拭いて、丸めて畳んでペンギンを作るハジメと、


「相変わらずつまんない所が器用よねぇ……あっつ!熱いってコレ!……はぁ、ビックリしたぁ……」


ハジメに倣って手を拭こうとして熱さに身悶えしつつ、やっぱり熱かったクァイナはと言えば、


「ふぅ……な、何よ、もぅ……ニヤニヤして……バカ。」


……妙に照れて赤くなってたりで、そんなクァイナを見ながらモルフィスは、


()()()()()()()()()()()()に決まってるだろーに?……ま、その様子じゃ上出来だったみたいだな!よかったよかった!」


ニィ~~♪と笑いながら、ホレホレさっさと注文してよね!と、モルフィスが二人を促す最中(さなか)、店の扉が開き、一人の甲冑を身に付けた女性がツカツカとハジメの元に歩み寄って来る。


「それじゃ……俺は安心安定の……ん?あ、どちら様で?」


背後の気配に振り向いたハジメの視線は、記憶に無い黒のロングヘアー、そして胸部装甲(ブレストプレート)とガントレットを身に付けたお堅い雰囲気の女性の顔へと移動し、硬直する。



(……こんな綺麗なヒト見たことないけど、……何故だろうつい最近会ったような気が……いや、まさか……だったら()()()()()()()()())


そう思いながら一人で結論を弾き出したハジメの目の前で、彼女は突然膝を折り、恭しく頭を垂れながら、


「……ハジメ殿、この度は重ね重ねの無礼を承知で参上した……」


堅苦しい言葉使いに、まだ話の途中で事情に疎いモルフィスは(……こーゆー言い方は【現地人】だろーけど……したら、大陸の端っこの帝国領出身かな?)と地元民らしく分析し、


同伴していたクァイナはと言えば、(……誰?この宝塚っぽい奴……)と断じ、何故か冷ややかな視線を投げ掛けていて、露骨な警戒心すらチラチラと見せている……。


「あー、俺の方はあなたのことを知らないんだけど……何と言うか、勘づいちゃったんだけど……元亡霊さん……でしょ?」


……しかし、空気を読むのも面倒になってきたハジメは、(……【悪運】が導いた場合は結果が大事になるからなぁ……どーせそんなもんでしょ!?)と、御約束通りの茶番劇っぷりに呆れつつ、


「……ど、どうして判ったのですかッ!?」


……予想した通りの驚嘆振りを見せた女騎士に、ハジメは(あ、ハイハイそうですよね……)と思いつつ、メニューに眼を落としながら、


「んで、一緒に行動を共にしたいとか言い出すんじゃないの?……あ、俺この《目指せ体脂肪率百%!!メガトンメンチカツサンド》のセットで。」


と、まともな神経で付けたとは思えない、挑発的な名前を上げながら、


「……セットはオニポテとコーラのセット……あ、あなたもどう?ご飯まだでしょ?」


と、気さくに誘ってたのだけれど……、



「あ、あぁ……ありがとうございますッ!!ホンットぉにありがとうございますぅ……!!……ああぁああああぁぁ……」


……ガン泣きされました……俺、なにかした?


✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳



「なんとなーく、何だけどキミ、南の帝国領出身かもかな?ウチのお客さんではあまり見ないから、何となーく、なんだけど?」


やって来た彼女の横から、トレイに載せた同じセットを差し出しながら、モルフィスが訊ねる。いつでも押しの強い彼女にしては随分とソフトな聞き方だったのだが、


「……そうですか……判りますよね?……お察しのように私は南方のドルモール帝国領の出身です。……それが何か問題があるんですか?」


自らをマニトバ、と名乗ったその女性は、言葉使いは丁寧だったが明らかに(そうなんですけどー、だからって何が言ーたいんですかー)と言いたげな態度に豹変し、周りの空気が一変してしまう……。


「まーまーまーまー、マニトバさんもあんまりトゲトゲしないで……別にモルフィスさんも誰何(すいか)するつもりだった訳じゃないだろうし……ねぇ?」


ハジメが納めようとモルフィスに振れば彼女は彼女で、


「まーそうだけど~、あ、コッチはクァイナのね?《悩殺肉殺!アスパラ肉巻きモキモキ巻き》~♪何か言いたげねぇハジメ君?」


「うん、ネーミング担当の方のセンスに感服してるだけです、ハイ。」


「まぁ、いいセンスよ?……モキモキって部分に若干の違和感があるだけだけど……頂きます!……はむっ!!」


クァイナがかぶりつくと、複雑な名前とは裏腹に、直球勝負の豚肉アスパラしょうが焼きにレタスを巻き付けて更にパンを巻き付けた一品で、食べやすさを優先する為に、巻いた部分が切ってもバラけないように卵液を塗って焼き上げる手間暇を惜しまぬ力作。ただ、その分いつもの巨大さとはかけ離れていたが……添え物としてぐるりと取り囲むポテサラやベーコンエッグその他の激しいボリュームは圧巻だったのだが……それよりも、


「んむんむ……ふむ……それはそうとして……ハジメはどーすんの?この……マニトバさんをパーティに加えたいの?」


マナー的にどうかと思うけれど、マヨの付いた指先をペロリと舐めながら、クァイナが尋ねる。


「あー、うん……クァイナさんがイイなら別に構わないけど……」


ハジメがそう言いつつクァイナの方を見れば、彼女の方は添えられたポテサラにケチャップを少しかけつつ、


「……まぁ、いいんじゃない?……ただ、私もハジメもご覧の通り、変わった能力を持った転移者よ?貴女達から見たら化け物みたいなもんだから……果たしてついてこれるのかしら……ねぇ?」


そして彼女はそう言いつつ、フォークの先に載せたポテサラを、輪切りにされたアスパラ巻きに載せながら口の中へと運び、


「……ん、んむ…………ほぁ~♪美味しっ!!……あ、こー言っては失礼かもしれないけど、どーせ【チート持ち】を狩り倒して欲しい、とか懇願するつもりじゃないかしら?」


……クァイナの言葉に眼を見開くハジメと、無言になって料理に視線を落とすマニトバへと、交互に視線を流すクァイナだった……。



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