除霊?
ぼちぼち
「結局スキル発動しなかったのかよ……ならば、今すぐガチンコ勝負だ!……もちろん教会の外でねぇ……あ、よいしょっと……」
そそくさと屋外へと向かうハジメにいや折角閉じ込めた教会の中でやるつもりだったのに……と言いたげな亡霊だったが、自棄になったハジメが扉横の壁を軽く一蹴りして新しい出口を作り出すのを見て、何となく諦めたようにユラリと滑るようにハジメの後を追い、外へと滲み出して行く。
「何よ……ハジメのあの茶番劇は不発だったってこと……?呆れた……。あ、でも……戦うとか、何だかそれらしくなってきたじゃん!?……でも、まぁ……スキル発動しなくても結局はあの格好なのよね…………相変わらず乳首透けてるし……」
移動するハジメと亡霊の姿を認めたクァイナは腕組みしたまま呟き、仕方なく外へと向かって歩き出した。
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「ねぇ、そーいやさぁ……個人的な愚痴なんだけどって話が通じるかは判んないけど、たぶん俺には剣とか槍とか効かないよ?って言っても……まぁ、そうなるよねぇ……?」
音も立てずにハジメの眉間に見事突き立った鋭利な切っ先は、突き出された時と全く同じように眉間から離れて、揺らめく亡霊の鞘へと収まり一瞬の沈黙が訪れる。
【……信じられん……血の一滴も流れんし、刺さった筈なのに一歩も動かないとは……貴様、死ぬのが怖くはないのか……?】
地の底から湧き上がる障気の如き冷徹な声は、確かにその亡霊から発せられたものだと判るのだが、しかし揺らめく亡霊の声には若干の驚きと戸惑いが見てとれた。
「あ、意思疏通出来た……じゃ、大人しく引き下がっててててっ!!あららららららら……だ、だからちょっとちょと……あ~ぁ、脇切れちゃったでしょ……」
棒立ちのハジメに降り注ぐ激しい剣撃の嵐が容赦なく襲い掛かり、銀色に煌めく刃が幾度も幾度も脇や腿の付け根、そして……首元やこめかみ、そして眼球や口蓋に至るまで容赦なく斬り付け横凪ぎにし通過していった……その光景は、流石のクァイナにしても眼を覆いたくなる程に衝撃的だったのだが……、
「……は、ハジメがッ!!ああああぁ……、って、やっぱり服だけバッサバサになって身体は無傷なの!?」
……しかし、髪の毛一本すら落ちることもなく、代わりにズッタズタのぼろ切れに変わり果てたお馴染みのユニフォームは、もう乳首が透けるとかそんな問題に止まる筈もなく……クァイナは思わずクルリと身を反転し、
「……ほんっとに馬鹿でしょアンタ達ッ!!真っ昼間っから何で全身フル御開帳してんのよ!!もーっマジで信じられないッ!!二人ともさっさと成仏してェ~お願いだからッ!!」
「ええええええええぇ~~ッ!?俺まで浄化対象なの!?何で!?どーしてイテッ!!や、やめてクァイナさん石は投げないでイヤほらだから手を離すと各方面で問題になっちゃうから……あぐぅ!!わっ、いててっ!!」
クァイナの投石攻撃をその身に受けて、堪えきれずに痛みを訴る、ボッロボロのテープみたいな元ユニフォームを裸にぶら下げたおバカな格好のハジメと、
【……口惜しい……こんな破滅的に破廉恥な輩に……我が剣の切っ先が一度も届かぬとは……】
亡霊は剣を握り締めたまま、その場に佇み身動きをしなくなっていたが、その怨念に満ちた眼差しを、元気一杯にフルスイング・to・MAX160キロに迫らんと投擲を続けていたクァイナへと向けて、
【……ならば、せめて一太刀……未だ湧き止まぬ程の活力を有した者へ……せめて、一太刀でも……】
……ゆらり、と動いた瞬間には、完全に投擲し切って全荷重を軸足から前に踏み切った左足へと移したクァイナの前へと移動していて、
「死ねっ!!もうホントにッ!!どりゃあ~ッ!!……あっ?」
両手で掲げ、振り上げた剣を振り下ろしクァイナへと到達させる為に必要だったのは……、
「……あ~俺、別に動くのが遅い訳じゃないよ?……ただ、知覚出来る限界が普通の人間と変わらないってだけだから……」
……亡霊の目の前で身を挺して、クァイナを護るように立ち塞がるハジメを両断することのみであり、それは叶うことは無かった。
【……それほど早く動けるにも関わらず、貴様は何故……避けようとしなかった?】
額に剣を押し付けたまま退きもせず、そして追撃もしない亡霊の言葉に律儀に返すハジメは一呼吸置いてから、
「……そりゃ、効かないからだってのは見れば判るでしょ……ほら、服は切れてるけど別に俺はキレてなーい!……し、その、何と言うか……あ、そーだ、これってもしかしてこのまま……」
額に剣を載せたまま、片眼を瞑ってウインクし、
「……《あたたかなおもてなしの心》を使ったらどーなるんだろ?」
ではでは




