二回目は衝撃的に
さて、やっとこ本編のホントに中核な超時空戦艦召喚!……の儀式です。……あ、今回はアイツがあんな格好してます。……付けてます。
「……ッ!?……まーた、ここなのね……しかし、せめてポップコーンかチュロスの屋台位ないのかしら?……アイツと違って気回し出来てない映画館よねぇ~」
クァイナはブツブツと不満を漏らしつつ、ビロード張の安楽椅子に身を預けて辺りを見回した。周りはやはり無人らしく、心配した亡霊の影も見当たらない。
「あー、退屈……早く始まらないかしら?……もぅ……間を持たせるような物も無いし……はぁ、退屈……ハジメが居たらなぁ……って、何言ってるの私は……はぁ……」
溜め息吐きながら呟き続けるクァイナだったが、やがて薄暗闇が漆黒の闇へと照明が落とされていき、目前に巨大な光輝くスクリーンが浮かび上がる。
【……お待たせいたしました。……只今より《超時空戦艦・₴₹₷℘∝》上映を開始致します。】
上品かつ落ち着いた女性の丁寧なアナウンスが鳴り響き、クァイナは(……また同じアナウンス……)と、スクリーンへと意識を引き戻される。
【……尚、上映中のお煙草、ご飲食、並びに席を立っての化粧直しや激しいイチャイチャうふふ等は、他のお客様の御迷惑となりますので……御遠慮頂きますよう、御願い致します。】
(イチャイチャうふふ、にハジメの怨念と粘っこい執念が感じられるわ……それに嫌な想い出でもあるのかしら……?)
ビーーッ!!と鳴り響くブザーと共に、相変わらずの配給元を表す丸い球体が画面下から浮かび上がり、続けて宇宙の星々が画面を埋め尽くしていく。
「……宇宙、そこは愛と野望が渦巻く人類最後のフロンティア……」
前回と変わらぬバリトンボイスがらしいナレーションを始めるが、良く聞くと微妙に異なるニュアンスを織り混ぜて言葉を繋いでいく。
(変なところに凝ってるのよね……しかし、前回はとんだ茶番劇だったけど、今回はどうなんだろ……?)
クァイナは本当に少しだけ期待しつつ、話の本編が始まるまでの時間を爪をいじりながら、そこはかとなく退屈を紛らわせつつ待っていたが、
《第二話・故郷に寄せる若者の思い》
「……ブッ!?……た、タイトルから既に死亡フラグバッキバキに立ちまくりじゃないの!?……脚本家、馬鹿じゃないッ!!?」
思わず吹き出しながら罵倒するクァイナの目の前では、スクリーン一杯に写し出された例のユニフォーム姿の主人公(役のハジメ)が、惑星上で夕陽をバックに登場し、振り返りながら台詞を言い始めた……のだが、
「クッ……キャハハハハハハハハハハハハ~ッ!!!だーかーらーっ!!乳首透けてるっての!!馬鹿じゃないの!?馬鹿なの!!?もーいやぁ~!この映画のスタイリストは男の透け乳首フェチなのぉ~ッ!?た、堪えらんない……くっ、ぷふっ!!」
……やっぱりソコの破壊力に完全に眼を奪われて大爆笑し、肝心の台詞も演技に全力を注いでいる筈のハジメの姿にも全く気が向かなかった……。
「……で、お前はこの任務が終わったら……どうするつもりなんだ?」
背中を向けたまま足元の花を摘み、指先でクルクルと廻していた後輩役の男性に、透け乳首も意に介さず演技を続けるハジメ、そしてクルッと振り返った後輩の顔は……、
「ぶっ!?ブヒャハハハハヘハハハハハハ~!!!!バッカでしょ?演出家も脚本家も監督も全員バカばっかなんでしょ!!な、何でヒゲ付けただけのアンタが一人二役してんのよっ!?……そ、それに……や、やっぱりぃ……」
……その後輩(役の付けヒゲをつけたハジメ)も、乳首がクッキリと透けて浮き上がって見えていた……。
「……俺は、故郷に戻ってその……約束を果たさなきゃならないんです……」
「あー!あー!もー判った!もー判っちゃったもんねー!!クァイナちゃんピンポンピンポン大正解ぃ~!!【故郷には許嫁が居て帰ったら結婚する】フラグだもーん!!コイツ死ぬね、もー絶対死ぬから!!」
突然立ち上がり、振り上げた拳をブンブン振り回しながらわめき散らすクァイナの興奮を他所に、淡々と続けられていく(ハジメが一人二役で挑む)二人の会話……だったのだが、
「いやいや俺もそーだと思ってたんだ!!お前ずーっと前からこっそり宇宙無線使って連絡してたりしたからさー、怪しいと思ってたんだよ!!うんうんそーかそーか結婚するか~!よかったなぁよかったなぁ!……じゃ、帰った方がいーって、その方がいーって!!なぁ?そーしよーよ!!なぁ!!」
「うっわぁ~!!やるじゃんハジメ!!折ったね、死亡フラグをバッキリとへし折った!!脚本家の謀反か!?それとも迷俳優ハジメのアドリブか!?さーどうするどうする!?後輩ヒゲハジメ(無論そんな名前ではないが妖怪ヒゲモゲラ的な語呂の良さにクァイナ若干嬉しそう)~ッ!?」
立ち上がりスクリーンのダブルハジメにやんやの声援を送るクァイナは、沈黙するヒゲハジメのアップを食い入るように見つめて……、
「……いや、病気の親の面倒を見なきゃならないんですよ……俺が帰ったら生活支援打ち切りになるんで……」
「ヒゲハジメッ!!ヒゲハジメッ!!……ぅえ?……そうなん?ウッソ!?何その展開……あ、ヒゲ付けてないハジメも唖然だわ……そりゃそーよね、全力回避した筈の死亡フラグが変な方向にはみ出したわぁ……」
元気一杯に叫んでいたクァイナは、迫真の迷演技を見せるハジメを評しつつ、とりあえず大人しく座り、静観しつつ様子見をすることにした。
「……あ、そうなんだ……うん、元気出せよ……生活支援ね……確かに身内が健在で面倒見られるようだと……支援打ちきりになりがちだよね……っ!くそぉ……帝国軍め……血も涙もないのか奴等は……っ!?」
「……そこはたぶん関係ないんじゃない?あー、何か違うような気しかしない……あー、興奮して損したかも……あ、嘘っ!?これで!?こんなオチで!?マジなの!!?」
《第二話・故郷に寄せる若者の思い・完》
……毎度お馴染みの字幕を眺めつつ猛烈な消耗感、そして時間を無駄にした喪失感と共に、クァイナは現実世界へと強制転移させられていったが、離れる直前の会場の片隅に黒っぽい何かが居たような気がして、そいつからも言い知れない憤りを感じ取り……何となく何となくだけど……共感し、ホッとしている自分に苦笑した。
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「……はぁ、疲れたぁ……って!!やっぱりアンタそのハズい格好なの!?バカでしょ!?今回はハッキリ言ってやるわ!アンタそれ乳首透けてるわよ!!」
疲れきっていた筈のクァイナはハジメの姿にムラムラと妙な使命感を感じて、大きな声でブンブンと腕を振り上げ興奮しながら正面に周り込むと、指先でしっかりきっちり、ソコよソコ!!と、指摘したのだが、
「……クァイナ、俺は今……悩んでいる……この大いなる力を行使して……もし、亡霊一体すら……葬れなかったとしたら……俺は果たして……生きる価値があるのだろうか……?」
時代錯誤のピッチピチ白パンタロンに赤いブーツ、そして無印の白シャツにうっすら透けてる乳首を隠さずに、独りで悩みの言葉を呟くハジメだったが、
「んなことやらなきゃ判らないでしょ!?もーまどろっこしいからチャッチャッとやんなさいよ!!ほらほらグズグズしないで大砲でもビームでも構わないから発射でも何でもしなさいよっ!!」
かなり興奮しているクァイナは呆れながら手を叩き、ハジメを促し発破を掛けた。
「……あ。はい……何だか恐いなぁ……よっしゃ、やったろかーい……えぇと、ほい……亡霊出てきてくださいなぁ……」
【…………ふざけるなよ、愚鈍な若輩者が……我が剣の錆となって……地獄で詫びるがよい……ッ!!】
……どうやら《騒いだ方が相手を刺激して出やすくなる案》が当たったのか、ハジメの前に暗闇が凝固したかのように影が姿を形作り、一体の鎧武者を具現化させていく……だが、その姿は灰色の影のように薄くぼんやりとしていたが、その手に持った鋭く光を反射する剣が振られてビュッ、と鳴る音は、完全にその存在が在命している者を両断出来るだけの威力を有しているのは明らかだった。
付けヒゲ。




