77弾 新たな住まいを探してみよう
「まあいろいろあったけど、どう、どう、私の言うことも当たるものでしょ。」
部屋に戻ると、メムが早速口を開く。
「住まいの件ですね。まさか一気に冒険者ランク4級にアップするとは、思っていなかったです。強獣もあの魔弾で倒せたわけですし。まあ、でも、問題は残ったままなんですよね。」
「問題って何が?。」
「獣のランクに応じて魔弾を使えるようにしたいのですが、あの時は、高威力の魔弾で魔法を発動させたものですので。より上位の狂獣、災獣にどこまで今の魔弾が通じるかわからなくなってしまって。まあ、髪の毛0.5ガラム入りなら、強獣クラスはなんとかなりそうな気もしますが。」
「ああ、そういうことね。まあ、事前情報がないのならないなりに、初手から高威力の攻撃がベストじゃない。でも、私ならもう少しトレーニングすれば、能力が上がって、囮としてだけじゃなく、もっと攻撃的にも戦えそうな気はするわ。あなたの力になれそうだし、あなたも力が上がっていると思うわ。」
たまにはメムも褒めてくれるのかと思うと、少し照れてしまう。
「まあ、まずは住まい探しを開始しますか。」
「でも、冒険者ギルド長は、決まるまではこの寮にいてもいい、と言ってたわね。」
「うん、そうなんですが。セイクさんに言われたら、探さざるを得ないでしょう。」
「お金の力で行けるのじゃない。配当もいい感じだし。」
メムも前向きに言ってくれるが、
「あまり、お金の力を使っても、目立ちすぎますしね。手頃で安い物件があればいいのですが、この白粉石鉱山の操業拡張で、いまだに住宅問題も不足感があるままですからね。」
そう言って俺は、ため息をつく。お宝を発見したが、そのお宝で別の問題に悩まされるという、まるでマッチポンプのようだ。
「とりあえず、街を歩き回ってみるしかないのじゃない。意外と解決策が見つかるかも。」
メムはそう言って、街中の散策を提案する。
「いいですけど、屋台や食い物屋での食事はなしですよ。」
どうせ、メムの魂胆は見えているので、先に釘を刺す。
「ちっ、読まれたか。」
メムは舌打ちをする。
しかし、どうやって探そうかな。そうだ、先に組合本部の食堂で昼飯を食ってから考えよう。
昼食後から、組合本部受付に行き、セイクさんとも話をした後、組合本部の掲示板を眺めながら、住まいの情報について探す。この異世界じゃ、不動産屋みたいなものがないので、この街の組合本部が、組合本部内での掲示板の使用許可を出す形と、組合本部付きの冒険者に紹介をする形をとっている。
「うーん、これと言ってなあ………、本当にめぼしいものがないな………。」
住まいの需要の急増がここまで響くとはなあ、そう思いながら俺はため息をつく。
なにせ、掲示板にあったのが
『急募、採掘者用の宿舎、10人分、寝床だけあれば構いません。益獣用小屋も可。』
『住まい捜索中、20人分、風呂、便所共同で可。』
のような、住まい募集の貼り紙ばかり。
かといって
『住み込みの管理人募集、住居付き。上級魔法使い希望。』
『住み込みの配送人募集、住居付き。上級魔法使い、極剣士、もしくはそれ以上の能力を持つと特に認められるもの。』
これじゃあ、どんな住まいかわからないし、おまけに何を管理するのか、何を配送するのかよくわからない仕事付き。
うーん、困った。
「どうしました、うちの掲示板を見ながらすごく怖い顔されてましたが。」
イサドさんが声をかけてきた。
「いやー、住まい探しに苦労していまして………。まさか一気に冒険者ランクが4級まで上がると思ってなかったもので。」
「まあ、規則上、両ランク3級以上になると、組合本部付きが変更契約になりますからね。そうなると寮も離れなきゃいけないですものね。」
「ええ、そうなんです。住まいが見つかるまでは、寮にいてもいいとは言われましたが。」
「そうですね………、もしよろしければ、曰くつきの物なのですが、住まいの調査をしてもらえますかね。調査の結果、もしニシキ様さえよろしければ、住まいとしてそこに居住されても。」
「いいのですか、イサドさんの一存でそんなことしても。」
いい話かもしれないが、一担当員の判断でとばっちりを喰らうのは勘弁してほしいが。
「構いませんよ、商業ギルド長からも住居問題の解決に必要な手段なら、許可は出るでしょう。」
「一応、調査の前に商業ギルド長に話を通してもらっても。そうすれば、俺も引き受けますよ。」
「ふむ、わかりました。少々お待ちください。」
イサドさんが事務所の方に消えていった。
しばらく掲示板の前で待っていると、事務所から出てきたイサドさんは、俺たちを受付まで連れて行く。
そして、
「不審住居の調査に彼を使いたいのですが、依頼という形で対応できますか。商業ギルド長は了解済みです。」
とセイクさんに話を持って行った。
「じゃあ、今回の依頼は、商業ランクにかかる依頼ということですね。わかりました。ニシキ様はそれでも大丈夫ですか?。」
と、俺に話がいく。
「俺としては、特に問題はないです。」
そう答える。
「では、本格的調査は明日からにしてもらいましょう。ではこの依頼をお願いします。代金は。」
セイクさんがそう言って、
「5万クレジットで、条件さえ折り合えば、ニシキ様の住まいとして契約も、ということで。」
イサドさんが俺とセイクさんに、そう条件を告げる。
一気に話が進んだ気もするが、情報は欲しい。
「依頼は受けるとしても、どういう住居なのですか?。」
俺が聞いてみる。
「そうですね。もともと、商人の住居だったのですが、その商人は王都に住居を構えるようになりまして、今までは空き家になっていたのです。ところが、ここ最近、あやかしが出るとか、変な人物が出入りするとかいう目撃談が相次ぎまして。今までいなかったのに、急にそんな目撃談が出たら、誰だって不審に思うもので。」
「調査は全くしていなかったとか?。」
俺は素朴な疑問をぶつけてみる。
「一回、その商人が自分の部下に頼んで調査してみたのですが、その頼まれた部下が、その住居内で大怪我をしまして、骨折と打撲で医者に来てもらう羽目になったのです。それで、誰か冒険者か誰かに調査してもらおうという話があって、こっちに話が来ていたのです。」
「へえ、これが怪我した時の。」
「ええ、供述書です。住居が変化した、階段が崩れたと言っているのですが………。」
「調査に入ったのは、この怪我した方だけですか。」
「今のところはそうですね。入ったのは、約2ヶ月ほど前ですね。」
まあ、もらえた情報はこんなものか。




