64弾 苦戦の後だが手続しよう
手数が増えると、俺も防御しきれなくなってくる。
(ダン、大丈夫?、こっちはもう一人の相手してるから。)
念話術で、メムが状況を教えてくれるが、それに応える余裕がない。
そこへ、前の敵が右ストレートパンチで俺の左脇腹を狙う。
なんとかかわそうとするが、かわしきれずに喰らってしまう。
このままじゃ、ジリ貧か。そう思っているところへ、背後の敵が何かあったのか、俺にもたれかかって来た。咄嗟に、俺の両手が敵の片腕を掴む。俺は、その腕を引っこ抜くように、全体重をその腕にかけて、前に重心移動をしながら、俺自身が前に倒れ込みながら敵を投げ倒す。
体力が落ちているせいか、綺麗に投げられず、柔道の背負い投げか体落としか、中途半端な投げになり、俺と敵が折り重なって倒れる。
そこへ、3人目の敵と対峙していたメムが姿を見せる。3人目の敵と対峙したままであるが、見たところ俺を相手にしていた二人より、頭2つくらい小柄な感じであった。
俺と一緒に倒れた敵は、俺を強引に引き剥がし、俺の前で相手していた敵と一緒になり、俺は四つん這いになりながら、敵の2人を睨みつける。
煙が少しずつ薄くなってくる。
(二人は、私が相手するわ。ダンは、あのチビの相手を。)
そう念話術でメムが伝えてすぐに、俺の相手をしていた敵2人に飛びかかる。
「集中」
ここでさっきのようにクイックドローでやれるか、そう思いながらも、体が動き出し、起き上がりながら反転し、膝立ちで拳銃を抜く。メムの相手をしていた小柄な敵に、残り2発、火球の魔弾を放つが、1発は明後日の方向に火球が破裂し、もう1発は、小柄な敵の覆面を掠めて破裂する。それなりにダメージは与えたみたいだ。
その途端、3人の敵は、素早く撤収し出した。街道を外れて茂みの奥へ向かう。一人は右の片腕を押さえながら、小柄なもう一人は、腕で顔半分を覆いながら去っていった。
そして、俺たちを覆っていた煙はかなり薄くなり、そこへ、
「おおーい、何かあったかー。」
そう言いながら、農夫らしき者が乗ったドラキャが、こちらに近づいて来たのだった。
「いやー、賊らしき者に襲われまして、とりあえず組合本部まで乗せてくれませんか。依頼中だったので。」
「いいけど、どうしたんだべな。」
「いや、襲われて、応戦したら体力がなくなって。」
「んん、なら乗っけてやるでな。」
そう言ってくれて、俺はホッとする。農夫に本人登録証を見せて、疑いを解き、しばらく乗って一息つきながら進んでいると、街の正門付近で警備隊が6人ほど集結しているのであった。
「兄ちゃん、ちょうどいい具合じゃ。警備隊に話してみれば。」
「そうですね、じゃここで降りて話してみます。」
ということで、ドラキャを降り、警備隊員達のところへ。
「どうしましたか、おや、ニシキ殿。」
一人は、顔見知りの警備隊員だった。
「いえ、配送達の依頼中に賊らしき不審者に襲われまして。合計16人に。」
と言うと、
「おい、事件だ。16人だと。相当な数だな。」
と警備隊員の一人が言い、
「怪我は、体調はどうですか。」
「ニシキ殿、とりあえず警備詰所まで。」
そう言って、近所の警備詰所まで連れて行かれたのであった。
警備詰所で体力を回復させながら、事情聴取に応じる。
「配送達依頼で、あそこの、鉱山跡近くの祠に持っていってくれと、はい、書類はこちらに。受け取り後の書類等のやり取りをしていたら、襲われまして。」
「ふーむ、じゃあ、受け取った後に囲まれて襲われたということですね。」
「ええ、そこでは合計9人、応戦して、最後一人は逃げ出しました。」
「ふむふむ、その後は。」
「組合本部に知らせたかったので、急いで戻っていたら、第2波というかまた襲われまして、4人に。」
「場所は、街道近くの森と茂みのところですね。」
「ええ、そこで再度、応戦して4人倒したのです。その後、街道に出て、そこを進んでいたら、煙幕をまかれまして、視界を奪われて、その状態で3人襲って来ました。」
「なるほど、話はわかりました。確かに、あの地点で、短期間に激しい煙が上がっていたので、そこまで警備隊員をやって調べようとしていました。火事か何かトラブルかという確認になると思っていました。」
そういうやり取りをして、しばらくいつぞやのように、小部屋で待たされる。
ドアが開くと、
「ニシキ様、ご無事でしたか。」
商業ギルドのイドサさんが顔を出す。そこに、
「ニシキ殿は、やはり引きが強いですねー。」
そう言って、ステファン隊員も顔を出した。そして
「いいですか、ちょっとお話させてください。」
と言って、
「襲われたという現場、3箇所に各場所へ隊員を送ってみました。1箇所を除くと、何も残っていませんでした。」
と告げた。
「うーん、まあしょうがないか、現場保存より組合本部へ戻ることを優先したからな………。」
俺が呻くように言うと、
「ただ、1箇所、最初に襲われた、鉱山跡近くの祠に配送達した荷物が残ったままでした。」
「じゃあ何か証拠はあったので?」
「いえ、あの荷物は中は衣類に似せた布切れと、魔力、体力回復ポーションに外見だけ似せた、中身は水の代物でした。あとは、少しの血痕が落ちてましたが、これだけだと事件として調べにくいですね。」
まあ、前世の警察みたいな科捜研とか鑑識とか、この異世界には無さそうだしな。科学的証拠から事件として、犯人達をたどるというわけには行かないか………。
「ところで、なんでまた、こんな事に巻き込まれたのですか。」
と聞かれたので、俺とイサドさんで、ローウェル隊員に、メムの買い取り話の経緯を話しておく。
「まあ、なかなかのお値段ですね。買い取りたいと言うのがファチオア商店という事ですか。でも、この話って状況証拠だけなんですよね。うーん。」
ローウェル隊員少し悩ましげに感想を言う。
「俺は、しっかりと買取は拒否しましたが。」
「ええ、事情はわかりました。お帰りになって大丈夫です。」
「では、次は組合本部へ。」
とイサドさん。
そのまま、組合本部の受付へ直行する。
書類上は、配送達は終わっていることになっているので、代金は支払ってもらえた。
警備詰所での事情聴取と同様に、イサドさんとセイクさんへ話をして、その後、組合本部の治療院へ連れて行かれ、湿布やら包帯やらで体を包まれる。意外にダメージを受けていたのだった。そして、イサドさんと組合本部の食堂へ。
メムがたっぷりと食事をしているのを、イサドさんが驚きの表情で眺めながら、
「食事代はおごります。どうぞどうぞ。」
と言われ、ご馳走になる。
「そういえば、ファチオア商店のアンチージョ氏は、今日の昼前にこの街を離れたそうです。情報としてお伝えさせていただきます。」
とイサドさんが教えてくれる。
「ふーん、そうですか。その話とはちょっと違うのですが、昨日、この街にきた大道芸人集団の方々は今どうされていますか。」
「残念ながら、その情報は押さえておりませんので。」
「いや、いいですよ。じゃあ、ゴチになりまーす。」
俺はそう言って、焼いた肉を頬張った。




