65弾 襲った敵の分析しよう
おごりの夕食を終え、寮の部屋に戻り風呂を終える。ちなみに、おごってもらった夕食の請求書を見ていたイサドさんの顔は、少しひきつっていた。
「ふぅー、おごりの飯は最高ねー。その後の風呂もいいわねー。」
メムはご満悦でリラックスした状態だったが、
「ダン、もしかして今日はヤバかった?」
と、表情を変えて聞いてきた。
「ああ、少し予想外だったかなと思っています。相手の戦力、結構ありましたね。」
「最後の3人、かなりやるわね。」
メムも戦ってみたからか、何か感じたようだった。
「ええ、視界を奪ってその上で、2人のコンビネーション、俺は翻弄されましたね。」
正直キツかった。
「最初と2回目の攻撃は、うまく対処できたのだけどね。特に、2回目のあのクイックドローは見事だったわ、完璧だったわ。」
「しかしまあ、おかげで、魔弾を使う攻撃の方法に課題が見つかりました。それに、波状攻撃にどう対処するかも、考えなくてはならないですね。」
よし、前向きに考えよう。そう思いながら課題を見つけ出す。
「そうね。ところで、最初と2回目に襲ってきた奴らと、3回目に襲って来た奴ら、覆面が違っていたわね。」
メムにそう言われて、俺もそういえばと、今日の戦闘を思いだす。
「確かに、言われてみれば。戦闘スタイルも違ったしな。」
「それにね、あの3人、どこかで会ったようなの。多分、あの茶店、ノン………ボエ?。」
メムがさらりと仰天発言をする。
「え………、えー、おい、なんでまたそんなことが言えるの。店の名はノンブリだし。」
驚いてしまい、思わず言葉が妙に乱れる。
「いやね、匂いの記憶?。私の相手していた奴から、匂っていたのよ。緋茶や碧茶の香り。それに、前に私をなでなでした時に、体臭を嗅いだし、その匂いが記憶にあったのよ。」
確か、犬の嗅覚は、人の100万倍。猫の嗅覚は、人の25万倍。犬の嗅覚が凄すぎるだけなのであって、猫もなかなかの嗅覚は持っている。
「まあ、いわゆる猫と女神のハイブリット能力ってものね。大したものでしょ。ダン。」
「もしかして、匂いだけで他の方々を判別できるとか、ですか。」
「まあ、本気出せばね。むふーん、どう。」
メムはえらくドヤ顔をする。久しぶりに見た気もするが。
いや、確かに凄い。でも猫扱いできないしなあ。元女神猫なんて口に出した日にゃ………。
「やはり、さすが女神様、最強の囮です。最強です。」
こう言われたら、褒めるしかない。
「で、どうするの。あの茶店へ、私たちだけでカチコムの。」
いや女神様、あなた、そんな表現方法どこで覚えたの。カチコムだなんて。
気合が入って来たのか、メムは続けて
「やっぱ、やられたからには、返しはきっちりしないと。」
「えーと、メム様。そんな表現方法、どこで覚えられたので。」
「ああ、多分あなたにとっては、大昔の映画よ。日本の映画ね。それを見たことがあったから。」
「それも人間界の現状視察で、見に行ったとかですか?」
「そうよ。迫力のある言葉が飛び交う映画だったわ。」
「はあ。そうですか。」
人間界の現状視察って、本当に神様達の役に立っているのだろうか………。
「それより、どうするの。この後。やられっぱなしは癪に触るわ。」
「メム様、証拠もなしにあの茶店に乗り込むのは、こっちが不利になりますよ。あなたがいくら地球の女神様だとしても、この異世界でそれを信じてくれる者は、いないと思いますよ。それにグランドキャットとして、俺の益獣としているのに、証人として、いきなり言葉を発してしまえば、もっとえらい事になりますし。それで俺とメム様が捕まって、まとめて処刑や分解や解剖なんてされた日には、元の世界に戻るどころじゃなくなりますよ。」
「それはそうだけど………。じゃ、ダン、あなた何か策はあるの。」
「うーん、一応考えてみていることはあるのですが、………うーん。」
しばし考え込んでしまう。メムは黙って俺を見つめている。
「………まず、どちらにしても先に、一つ、例の大道芸人集団の追跡を考えています。多分………いや、とりあえず、明日の朝に足取りを追ってみましょう。その後、茶店に行きますか。茶店に行く際は………………、………………ということで考えています。」
俺は用心のため、あえて声を潜めて、メムに耳打ちをする。
「ふーん、面白そうじゃない。やってみましょう。」
翌日、組合本部受付へ行くと、セイクさんに、一昨日の大道芸人集団の泊まり先を聞き出し、商業ギルドの事務室へ行き、イサドさんに会って、アンチージョ氏の泊まり先を聞き出す。
アンチージョ氏はオテルノンカポというホテルに泊まっていて、大道芸人集団は、シルウェティとアピンサウェルという宿屋に分宿していた。
まずは、宿屋シルウェティに行き、
「ごめん下さい。こちらに大道芸人集団の方々が止まっていると聞いたのですが、誰か代表の方にお会いできますでしょうか。お届け物の確認で。」
と嘘の面会依頼をしてみる。
宿の受付は、
「いや、昨日の昼過ぎに、王都に急用ができた、と言って、こちらは引き払いました。」
と話してくれた。
「ああ、そうですか。わかりました。王都ですね。」
そう言ってこっちも退散する。
その後、宿屋アピンサウェルへ行き、同様に面会依頼をしてみて、同じ回答をもらった。それに、
「何か、大道芸の練習で失敗して怪我をしたとかで、何人か結構な人数を抱えて帰って来ましたね。」
という話ももらうことができた。
最後に、オテルノンカポ・ホテルへ行き、宿屋の時のように、
「アンチージョ様に御目通り願いたいのですが。お届け物の確認で。」
と聞いてみると、
「いえ、王都に向けて、昨日昼前にこちらをチェックアウトしました。」
との回答だった。
確認を終えて、メムと合流する。
(やはり、チェックアウトしていたのね。大道芸人集団の方々は、この街からも急ぎ離れた、ということかしら。)
念話術でやり取りする。
(ええ、メム様。そちらはどうでした。こっそり忍び込み、構造の確認できましたか。)
(ダンの読み通りの構造ね。あのホテルと、宿屋は裏庭が近接してるわ。)
やっぱりそうか。あの大道芸人集団は、ファチオア商店の荒事部隊のカモフラージュだ。
(例の大道芸人集団とやらは、総勢30名弱ほどでした。)
(じゃあ、半数近くを私たちの襲撃にまわしたのね。)
(いや、多分、逐次投入になったのではないでしょうか。)
俺の中で、一つの推察が固まってくる。
(じゃあ、今度はあの茶店に行くのね。)
(ええ、そうですね。用心しながら行きましょう。)




