63弾 襲いくる敵ぶちのめそう
(変ね、尾行の気配も視線も感じないなんて。)
受付で依頼を受け、組合本部を出てしばらく、配送達の目的地へ歩んでいると、メムが念話術で異変を伝えてきた。
(これは………、もうあきらめてみんな撤退した、わけはないか。)
メムは意外にもノリツッコミをしてきた。
(どこかで、いや多分、街を出てから配送達の目的地までにやる気じゃないでしょうか。偶然はそう重ならないかと。)
(わかったわ、警戒度を最大にしておくわ。)
そのまま、配送達の目的地の鉱山跡手前の森の中の古い祠へ向かう。
しばらく歩いて、目的地へ。祠の前で一人の男が手を振っているのが見える。
(気をつけて、周りに人の気配が、8人かしら。)
隠れている者8人か、予想以上の数かな。手を振っている奴も含めると9人か。
「えーと、モーブさんですか。」
「ええ、本人です。」
そのまま、その手を振っている男のところに荷物を届け、モーブさんと相対する。
依頼完了の書類に署名したものを受け取って、カバンに収めた瞬間、その受け取った男モーブさんが、警察官がかつて使っていた棍棒のような長杖を、刀を振りかざすように、上段に振りかぶり襲いかかってきた。
「集中」
俺が呟くと同時に、フードを深く被って仮面をした怪しい奴らが短杖を持って、わらわらと湧いて俺たちの周りを囲んでしまった。
それと同時に、俺がモーブとの間合いを一気につめて、右ショートアッパーをモーブの顎にかまし、続けて左ショートフックを奴の右顔面に叩き込む。
敵どもの動きは、ゆっくりに見えている。
勢いと威力で、見事にヒットし、モーブが鼻血を出しながらふらつく。
二人が、俺の背後に接近するところで、そのうちの一人の喉笛に、メムが噛みつきにかかる。相手は喉笛を右腕でガードしたものの、メムは構わずに右腕に喰らいつく。
俺は、ふらついたモーブの襟を掴み、俺の背後に接近してきたもう一人に投げつける。重ね餅になった二人は地面に転がる。その二人の頭に思いっきり蹴りを入れる。モーブはのびて気を失ったようだ。もう一人もダメージをかなり受けたようで、うめいて地面を転がる。
メムを見ると、敵の右腕に噛みつき、敵は必死にそれを引き剥がそうとする。
囲んでいる敵どもは6人、メムと俺の反撃が予想以上だったのか、動きたくても動けない、といった感じになっている。
「ファイヤーボール!」
敵の一人が、そう言って、腕を噛みつかれた敵とメムに向けて魔法を発動させる。
「ばか、あのグランドキャットは傷つけるな。」
敵リーダーらしき者が、慌てて止めるが、発動したファイヤーボールはメム達の方に飛び、メムがさっと敵から離れる。
腕を噛まれていた敵は、ファイヤーボールを喰らってしまい、しばらく立っていたが、木が倒れるように前のめりで、ずしりと倒れてしまう。
その隙に俺は、拳銃を抜き、敵リーダーらしき奴に狙いを定め、ハンマーを起こし、引き金を引く。
ドシュ
静かに低い音で火球の魔弾が発動し、敵リーダーらしき者はそれを喰らってそのまま崩れ落ちる。残り5人か。しかし、敵どもは、まだ俺たちを囲んだままで戦う気だ。
魔法と集中により、意外と俺の体力は削がれている。
俺とメムは互いに背中を預ける形で体勢を取る。
「集中」
俺がもう一度呟くと同時に、メムが俺の背後の一人に襲いかかる。
俺の視界に入っている敵3人が、メムの動きに目を奪われる。
俺は立て続けにその3人に向けて、火球の魔弾を次々ぶっ放す。
ドシュ、ドシュ、ドシュ
3人に次々にヒットして、3人は、さっきの敵リーダーらしき者のように、その場に崩れ落ちる。
一方でメムが2人を相手に、ひらりと敵たちをかわしながら、飛び下がり、噛みつきつつ、爪で引っ掻きつつ戦っている。
しかし、形成不利とみたのか、踵を返して逃げ出そうとする。
「逃すかあ。」
俺はそう叫び、2人を狙い引き金を引くが、1人には当たったが、もう1人は逃げ出してしまった。
「どうするの、ダン。あの1人追うの?」
「いや。無理でしょう。一旦この場を離れましょう。そして組合本部へ急ぎ報告しましょう。今後は、念話術で会話しましょう。」
そう言って俺たちは、倒れた者はそのままにして、素早くこの現場を離れる。
しかし、予想以上の人数で襲撃してきたし、俺の体力もこんなに消耗するとはな………。
体力回復ポーションを飲みながら、急ぎ足で街の組合本部へ。拳銃に新たな魔弾も装填する。
街の組合本部へ安全に向かうため、街道を目指し歩みを進めると、
(敵ね、4人、右側から接近しているわ。)
念話術で知らせてくれた。そのまま、街道へ進みもう少しで街道に出る直前に、遭遇した。さっきの奴らと同じように、フードを深く被り仮面をした曲者たち。
俺たちを見るや否や、短杖を抜きながら、駆け出して一気に間合いを詰め、街道への行く手を抑えようとする。
俺たちの動きは止まり、前に3人後ろに1人の状態で囲まれる。
この4人の敵集団のリーダー格らしき者が、俺たちに声をかける。
「大人しくしろ。悪いようにはしない。」
「そうだな、大人しくしろ。悪いようにはしない。」
俺は挑発的に、リーダー格の言ったセリフをそのまま返す。どうせ、メム目当てで俺に危害を加えるつもりだろう。
「集中」
俺は呟く。
前に、このタイムマネジメントの力の仮説として、戦闘時の情報処理能力の速度向上ではないかと考えていた。相手の動きがスローに見えるのは、相手の動きの分析と予測を、ものすごいスピードで行っているからだと。しかし今回は、情報処理能力のみに限定するものではなく、体の動き、脳の処理能力の速度の向上も可能ではないかと思えてきた。ここで試してみるか。実際にやるのは初めてで、ぶっつけ本番である。
2回深呼吸をして、一気に、
ドシュ、ドシュ、ドシュ、 ドシュ
拳銃で火球の魔弾を発動させるとはいえ、クイックドローによる早撃ちで、相手に全て命中する。4人は、静かに崩れ落ちた。
崩れ落ちた4人を放置し、そのまま、街道へ急ぐ。
(すごいわ、アメリカの西部劇映画を彷彿とさせるクイックドローね。)
メムが感嘆して念話術で伝えてくる。
しかし、結構代償はあるか。俺の少し回復した体力がまた落ちたようだ。とりあえず、体力回復ポーションを飲みながら、街へ向けて歩みを進めると街道へ出ることができた。どこかで装填できるか。装填するタイミングを探る。
(街道ね、もう少し進めば、街の門前に着けるわね。また、敵かしら。3人。)
(結構人数かけてくるな。)
合計で13人と対峙し、12人倒している。結構体力は使ってしまったか。
しばらく急ぎ足で街道を進む。
(この3人は距離を維持したままね。敵じゃないかも。)
メムが念話術でそう伝えたと同時に、目の前に煙幕が広がって、俺たちの視界を遮った。
(視界を遮るなんて、やるわね。白昼堂々と。来るわ。2人?)
真っ白い煙が、もうもうと俺の周りの視界を奪い、ますます煙は粘っこく絡み、俺たちの周りを覆っていく。
この煙はただ視界を奪うだけのものか。
そう思いながら両拳を上げて身構えると、目の前に黒覆面の敵が現れて、左足で蹴りを、腹部に浴びせようとする。
バックステップをしたところで、背後から拳がきて、俺の左後脇腹に刺さる。
「くっ、しまった。」
思わず呟き、背後にいる敵に狙いをつけ、右拳を裏拳の要領で振り回すが、掠った感触だけで、相手にかわされる。
この2人、とてつもなくコンビネーションがいい。攻撃のタイミングが実に絶妙だった。
前で攻撃をするのを俺がかわすと、背後から攻撃し、背後の攻撃を俺が意識すると、前から攻撃してくる。




