62弾 相手の出方みてみよう
ファチオア商店の情報は俺も調べつつ、組合本部も裏でこっそり調べてくれている。集まった情報によると、前世でいうところの、ブラック企業オブブラック企業のようだ。
まず、広報料がエグく、勝手に店の名前を了承もなく防具に入れて売り、その後広報をしたからと言いがかりをつけ、強引に広報料をその店から取り立てる。
次に、技術のある店の防具職人やその弟子を破格の高給で引き抜くと、持ってる技術を回収した途端に、色々な理由をつけて給料を減らす。または、別の業務をさせて、難癖をつけてクビにする。
又、交渉して傘下に入らない、買収に応じない商店の職人や店員は、不慮の事故とやらで怪我が相次ぐし、買収に応じたり傘下に入った商店には、厳しい売上ノルマが設定され、ノルマ未達だと激しく罵倒され、原因追及とやらが行われる。
じゃあ、不平や不満、文句が商店主に上がったり、厳しい情報が外部に漏れる、漏れそうな時は、『ファファロイ』というファチオア親子直属で荒事専門の集団が、そういった者をシメるという噂もある。
ただ、どうやっても、資金源が不明なのは変わらなかった。
一番難しいのは、この異世界の法律ギリギリをつきまくっているのと、証拠を出さないらしいので、罪に問えない、ということ。
……でも、これって犯罪集団に近い気もする。もはやブラックを超えてダーク企業になっている。
「本日は商業ギルドの依頼になります。配送達をお願いします。」
翌日、セイクさんにそう言われながら、実は、組合本部が集めてくれたファチオア商店の情報を、こっそりともらっていたりする。そして配送達の依頼をしながら、街を動き回り、相手の出方をみることにする。
(すごいわね、私への視線が増えているわ。敵意のこもった感じのが4つくらい。尾行するのかしら。)
メムが念話術で、俺に報告してくれる。
街中で依頼をこなすと、メムが敵意のこもった視線が増えたのを感じたようだった。俺の方でも、俺たちをチラチラみながら、尾行している者がいるのも認識できた。
(とはいえ、流石に街の人に溶け込むつもりで尾行していますね。)
(当たり前でしょ、覆面つけていかにも怪しい者です、みたいな格好で尾行はしないわよ。)
念話術は、こういう時便利だ。
この日は、街の中をうろうろして、配送達の依頼を淡々と完了させて組合本部に戻る。
「配送達の依頼完了しました。異常ありません。」
そう受付に言って、完了代金を受け取って本日の分は終わる。
「こちらが代金です。では、明日も配送達の依頼がありますので、よろしくお願いします。」
とセイクさんが言う。
「承知いたしました。よろしくお願いします。」
と俺はそう返事する。
寮の部屋に戻って、夕食、風呂を済ませると、一息つく。
「ふー、尾行はいたけど、何もなかったわね。」
と、メムは当てが外れたかのように、ため息をつきながら呟く。
「まあ、しばらくは、このような日々が続くでしょうし、相手も様子見でしょう。」
「なぜ、それがわかるのかしら?」
「今、組合本部とは、符牒を使った会話をしていますので。」
「はて、どこに使っているのかしら?」
メムは少し勘違いをしているようだ。
「符牒と言っても、日常会話に紛れさせています。『異常ありません』と言えば、ファチオア商店の動きなし、ということになります。『明日も配送達の依頼がありますので、よろしくお願いします』と言えば、組合本部もファチオア商店の情報と動きに変化なし、ということになります。」
「なるほど、あらかじめ打ち合わせか何かして、符号の準備をしていたのね。」
「ええ、さりげなく手紙のやり取りで。」
そう言った後、俺は一つ伸びをして、寝る準備にかかる。メムも欠伸をしている。
「さあ、寝ましょう。」
翌日も淡々と配送達の依頼をこなして、組合本部の受付へ戻ろうとすると、組合本部前に3台のドラキャが並んでいる。何のイベントが起きるのかと思いながら、メムと眺めていたら、すぐに3台ともどこかに去って行った。
(今日も相変わらずの尾行ね。4人くらい。一人は囮の尾行かしら。)
(あえて目立っているような、気付かせているような感じですね。)
念話術で会話した後、受付へ。
「配送達の依頼完了しました。異常ありません。ところで、今来ていた3台のドラキャは、何ですか。」
そう受付に言って、完了代金を受け取って本日の分は終わる。
「こちらが代金です。では、明日も配送達の依頼がありますので、よろしくお願いします。あの3台のドラキャは、大道芸人集団の方々だそうです。宿の場所を確認したいと問い合わせに来られまして。」
とセイクさんが言う。
「なるほど、承知いたしました。よろしくお願いします。」
と俺はそう返事して、追加の質問をするために、
「ああ、そう言えば一つ最後に聞きたいのですが。」
「はい、なんでしょう。」
セイクさんが怪訝な顔をしながら返事をする。
「さっきの大道芸人集団の方々は、この街では、何か大道芸を披露する予定とかはあるのですか。いえまあ、気晴らしに観に行こうかと思いまして。」
「いいや、あくまで休息と食料や物品の補充、だけになると聞いています。」
「ふーん、どうもありがとうございます。」
本日も寮の部屋に戻って、夕食、風呂を済ませると、一息つく。
「うーん、やはり明日以降何かありそう、いや起こりそうですね。」
「ダン、あなたがそう言うのはなぜ?。」
「いえ、今日見かけた3台ものドラキャ、あれ本当に大道芸人集団ですかね。時期的にどうも臭うのですよ。」
「言われてみれば、たしかに………。」
「それに、こういう街に来て、芸を見せる予定がないって、何か矛盾している気がしますしね。」
「もしかすると、この街で芸を披露する許可が取れなかった、とか。」
「だから、芸を披露できない、という事ですか。でもそんな不手際な状態でこの街に来ますかね。せっかくの大きな街、このイチノシティ、稼ぐにはもってこいの筈ですよ。この街の外の村より人もいっぱいいますから。」
「ふーむ………。」
「それに、まるで人目につかないようにコソコソしている感じだったのも、違和感というか。」
「この異世界に来て、まだ大道芸人みたいなのに会っていないから、あなたがそう思い込んでいるとは考えられないかしら。ダン。」
「まあ、状況が状況なので、怪しいもの全て疑ってはいます。まあ疑心暗鬼になっていますね。でも警戒度を上げても問題ないでしょう。メム様としても。」
「………そうね、それは否定しないわ。」
「俺としても、本当に大道芸人の集団ならいいのですが………。」
俺は、そう言って大きなため息を一つ。
「じゃあ、明日以降、警戒度を上げるということね。じゃあ寝ましょう。」
メムがそう言って、俺たちは眠りについた。
「本日は商業ギルドの依頼になります。配送達をお願いします。」
いつものパターンで、配送達の依頼をこなそう。とはいえ、本日はこの一件だけか。この荷物を、鉱山跡手前の森の中の古びた祠まで。って、前にランクアップ試験とやらで向かった場所だけど、受取人が、個人名、モーブ・イッパンノか。
「この場所って、前に俺がセイクさんをパンチした場所ですね。」
「………ええ、試験じゃないですよ。ランクアップ試験をそんな抜き打ちではやりませんから。」
セイクさんが、痛そうな顔をして答える。
「そう言えば前は聞かなかったのですが、この場所で受け取りをすることは、よくあるのですか。」
「まあしょっちゅうとは言いませんが、冒険者や、パーティの補給等で途中まで送って受け取ることはありますね。落ち合うポイントとして、ここもまあ分かりやすいので。」
「そうですか。じゃあ、行ってきます。」
「お気をつけて。」




