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59弾 商業ギルド長と面会しよう

 お金の問題についてメムと話し合うことになる。


「使うなら、メム様の食費もいいのですが、今後は慈善事業に使っていくのもありじゃないかと思っていまして。」


「えっと、贅沢させてはくれない、ということかしら。」


「いえいえ、そういうわけではないのです。ただ、メム様に贅沢をさせるだけだと、周りの人から見たら、ふざけんなと言われて敵意を向けられるだけになるので。できれば、教育とか孤児の保護や育成に寄付なりするとか、財団みたいなものを作って慈善活動をとか。」


 益獣、愛玩動物のグランドキャットに、いいものばかり食わせていると、周りの見る目も気になってしまう。どうも俺は、小市民としての感性がよく出てしまうようだ。


「ダン、あなたが立派な人間なのはよっく分かったわ。でも、肝心なことを忘れていないかしら?」


「肝心なこと?、おお、元の世界に戻るのに、全額ぶっ込むということですね。」


「………たまに、あなたが阿呆なんじゃないかと思う時があるのよね。いや、家、家を買うのよ。」


 メムが俺をジト目で眺めながら言う。


「Oh Yeah!………俺もたまに、メム様が本当に女神なのかどうか、わからなくなる時があるのです。家は元の世界には持ち帰れないのじゃ。」


 俺もメムをジト目で眺めながら言う。


「元の世界に戻ることは肝心要のことだけど、3級にランクアップしたら、この寮は出ていくのよね。その前に家を買っておけばいいのよ。そして、元の世界に戻る前に売っちゃえばいいのよ。」


「その理屈だと、あらかじめ元の世界に戻る方法がわかり、俺たちのタイミングで、いつでも戻れてしまうことになりますが。そもそも、この異世界にきたのは、全く思いもよらない事、俺が前世、つまり地球で赤ん坊に転生するはずなのが、何らかの原因で、こうなっていますからね。」


「あ、そうか。原因も何もわかっていなかったわね。でも、今後のためにも家は必要じゃない。先に目星をつけるのもありなんじゃ。」


「まあ、そこについては、メム様の言うことにも一理ありますがね。」


「でも、お金の使い方でこんなに悩むなんて。ある意味贅沢な悩みね。」


「社畜だった俺には、あり得ない悩みです。」


 俺は、大いにため息をつく。

 持ち家がいいのか、賃貸で借りる方がいいのか。前世の地球界の日本で、社畜リーマンとして生きた俺には、常にマスコミ等を賑わす問題だったことは認識している。持ち家のメリット、デメリットと賃貸のメリット、デメリット。それらの比較と金銭的負担の問題。まさかこの異世界でも、そういう悩みをすることになるのだろうか。



「ところで、商業ギルドから呼び出しってどういう事かしら?」


「ええ、明日ですね。」


 商業ギルドの依頼完了の報告をしていたら、セイクさんから、商業ギルドの方から呼び出しがあり、明日きて欲しいとの話があったのだ。

 ということで、翌日になり早速、組合本部の受付へ行くと、セイクさんとイサドさんが一緒に俺たちを出迎えてきた。


「いったい何かあったのですか?、商業ギルドの方が受付の方と出迎えなんて、本当に何が。まさか俺に何か身に覚えのない罪が課せられたとか。」


「そんなわけないですよ。商業ギルド長が、ぜひあなたに会ってみたいと熱望されてましてね、そのために呼び出したのです。」


 と、にこやかにイサドさんが言う。


「ああ、ロジャー・ヤングさんでしたっけ。」


「いえそれは、冒険者ギルド長ですよ。」


 セイクさんが訂正する。

 そして2人に案内される形で、商業ギルド長の部屋へ向かうことに。


「失礼します。ニシキ・ダン様を連れて参りました。」


 イサドさんがそう言って、部屋の戸を開ける。さすが商業ギルド長、立派な部屋だ。


「ほーい、どうそー。」


 何か軽い感じの返事であったが、なるほど商業ギルド長、風格がある。小柄な男だが、まるでボディビルダーのような筋肉を持った感じの体、碧髪黒眼の人懐っこい感じの顔。これが、このイチノシティの街の商業ギルド長か。


「お初にお目にかかります。冒険者の姓はニシキ、名はダンと申します。」


「こちらこそ、商業ギルド長の姓はブーファロ、名はドーラゴと言う。まあ楽にしてくれたまえ。」


 そう言ってソファーへの着席を勧められる。


「では失礼致します。」


 セイクさんはそう言って部屋から退室する。

 ブーファロさんと、イドサさんが俺に向き合った状態で、話をすることになる。でも話って何だろう。


「そちらが噂のグランドキャットか、なるほどいい毛色、かつ、いい毛並みだ。美しいと評判だからね。」


「あのう、呼び出しとは聞いていますが、俺に何か依頼でもあるのでしょうか。」


「まあ、こんな呼び出し方をしたらそう思っちゃうか。いや、ただの懇談だよ。気にしないでくれたまえ。」


 商業ギルド長が、軽く笑う。


「本当に懇談したいだけなのです。まあ、ニシキ様、気を楽にしてください。」


 イドサさんもそう言ってフォローする。

 ブーファロさんが顔を少し前に出してきて


「実は君に会ってみたかったのは、あの鉱山、そう白粉石の。交渉の際の、タテミク商会への提案内容をイサドから聞いてね。面白いと思ったんだ。」


 イサドさんは無言で、うんうんと頷いている。


「しかも、鉱山が操業し始めてから、街の経済状況も治安関係も物価上昇も、君の予想通りになっているからね。君の思考経路を知りたくてね。じゃあ話を聞いてみようということになったのさ。」


「いやあ、正直まぐれ当たりですよ。あんなに当たるとは思いもしませんでした。」


 正直、前世での社畜リーマン時代の経験と知識です、とは言えない。


「そんな謙遜しなくてもいいよ。まあ、どうしてそういう経路でその考えに至ったのか、ぜひ教えて欲しいのだよ。」


「うーん、表現が難しいのですが。資源の発見があれば、それを活用するために、資源を掘る者、加工する者、運ぶ者、売る者、というような者が必要になってきます。そして、そういうものを雇い、掘るための道具、加工する道具、運ぶ道具、売るための道具も必要になってきます。雇うにはお金のやり取りが発生し、道具の買い付けでお金のやり取りが発生します。」


「お金のやり取りの発生か。今の話を聞いていると、採掘権でのお金のやり取りは省いたことになるが。」


「ええ、それを省くことで、商会側は初期投資の負担が軽減でき、さっき述べたお金のやり取りだけに絞れます。それで資金面の負担を楽にし、早期の操業を目指せます。さらに操業する事で

資源が売れて、また加工した物が売れて、お金が入ってきます。さらにまた、雇うためと道具のためにお金のやり取りが発生します。そして、お金のやり取りはこの場合、近くであるこの街にて行われます。そのやり取りで、街にお金が入ってきます。」


「なるほど、ここのお金のやり取りが経済効果を生む要素、というわけか。」


 すごい、さすが商業ギルド長だ。


「すみません、長々と話してしまったのですが、端的に言えば、どこにお金のやり取りと、お金の入りとお金の出があるのか、ということを考えたら見えてくるのかな、というのが俺の説明です。」


「面白い。」


 イサドさんが言う。


「ふーん、説得力があるな。」


 ブーファロさんが言う。


「よし、君の商業ランクは3級にアップだ。商業ギルド長権限で即ランクアップだ。」


 えー、いきなりかい。思わず心の中でツッコミを入れてしまう。


「どうだい。冒険者なんかより、ここの商業ギルドで働いてみないかい。」


 しかもヘッドハンティングまでー。


「いえいえ、そこまで評価いただくのはありがたいのですが………。」


「君なら、この街での将来の商業ギルド長も十分いけるよ。このグランドキャットと一緒に働いてもいいぞ。うちの商業ギルドのマスコットにもできるしな。」


 えらく熱心な口説き方だな。しかし、メムはどこでもマスコット候補だな。


「申し訳ありませんが、いきなりその話はちょっと、無かったことにして下さい。」


「まあ、いきなりそんな話もちょっと驚くか。まあ、何かあったら商業ギルドで相談に乗るよ。」


 ブーファロさん押しが強い。

 しかし、参ったな。宰相補佐官に警備隊総隊長、次いで商業ギルド長にまで誘われるとは。

 まさか………メム目当てか……………。

 とはいえ、こうして懇談を終えて、精神的に疲れてしまい、寮の部屋に戻って休息を取ることにする。


「ずいぶん軟弱ね、押しの強いおっさんに押し負けてんじゃないわよ。あなたも中身はおっさんなのだから、いい勝負できるでしょ。しかし、まあ、私ってこう、あちこちでマスコットになるくらいの人気なのね。」


 案の定、メムは増長しだしました。

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