273弾 結構ダメージある模様
「ああ、受付に、戻ったのですね。」
俺はそう言いながら担架から起き上がり椅子に座る。まだちょっとふらつくような感じが残っている。
まあ、回復ポーションの効果が出ているのか、体力は戻った感じである。ただまだ腕が痛い。
「試験お疲れ様でした。では、5日後にこちらに来て下さい。冒険者ランキング10級の昇格の手続きをいたします。それと研修を受講してもらいますので。」
セイクさんにそう言われる。
「5日後ですね。」
ヘルバティアがそう言って確認する。
「はい。それと今日の昼食と夕食は組合本部からのおごりといたしますので。」
セイクさんがそう言うとメムが小躍りする。メムは喜ぶけど、あれ、なんかおかしくないか?。前に俺に対して食い意地を張りすぎないとか宣言したのは一体なんなんだろうか。
そう思った俺を尻目に、セイクさんが続けて
「ヘルバティア様とニシキ様は、ダメージが大きいようですので一時的に療養所へ入ってもらいます。回復ポーションの効きめはあるようですが、状態を確認します。」
と言ってきた。
そうなると、メムの大食いのストッパーがいなくなるのだが……。
「療養所に入っている間に私たちだけで食事というのも、ちょっと……。」
ミアンがそう言い出す。ナイスだ、ミアン。
「そうです。ミアン姉さんの言う通りです。別に今日の昼食と夕食でなくていいのじゃないですか。」
ミヤンがミアンを援護する。ナイス援護、ミヤン。
「ああ、そうですね。確かに2人が療養所に入っている間じゃ祝賀気分にもなれないですからね。では……、あれを渡しましょうか。」
双子妹に言われて、セイクさんはそう言いながら何かを探す。しばし席を立っていたかと思うと事務所の奥の方に行っちゃう。数分後に戻ってくると、
「この食券をどうぞ。」
とヘルバティアに渡してくれた。
「じゃあ、私とニシキさんは療養所に入って経過観察ということで。その後この食券を使って食事にしましょう。」
ヘルバティアがそう言うと、皆がうなずく。
ということで、俺とヘルバティアが療養所に入って経過観察をして、ミアンとミヤンの双子妹とメムとバンナは一緒に下宿先、家に戻ることになる。
「じゃあ、ヘルバティア様、ニシキ様はこちらにどうぞ。」
「じゃあ、ニシキさん、ティア姉さん。ミヤンたちと先に家に戻ってるから。」
「じゃあ家で荷物の整理とかお願い。」
(じゃあ、私もミアンらと一緒に大人しくしてるから。)
(ええ、お願いします。)
「ところで、ヘルバティアさんと俺はどのくらい療養所にいることになるのですか?。」
家に戻るミアンたちと話をしてから肝心なことをセイクさんに聞いてみる
「そうですね、ヘルバティア様は明日くらいかと。」
へ、じゃあ俺はどうなるの?。
「ニシキ様は2、3日いることになるでしょう。その弱り具合からすると回復ポーションが効いているにしても、ダメージが意外に残っているようなので。」
うーん、何にもできないようなものか……。
「え、じゃあしばらく動けないようなものですか?。」
「ええ、当然です。あんな激しい戦いをしておいて、しかも、尋常じゃない動きまでして。その後の足元も覚束なさも見れば大人しく経過観察で療養しておいた方がいいでしょう。」
「う、うーん………。」
セイクさんに、何も言い返せないくらいはっきりと断言されてしまう。
そして俺は療養所のベットの上にて天井のシミの数を数えながら、しばらく大人しくしていることになる。やっぱりダメージの影響かうつらうつらしながらの状態である。前世だとまるで経過観察で入院しているような感じか。隣のベットにはヘルバティアが横になっているが、俺がウトウトと眠る様子を気にしてだろうか、あまり声をかけてこないように気を使ってくれているようだ。
ヘルバティアの方は予想以上に回復したこともあったようで、翌日の昼には療養所から出て家に戻れそうとのことである。
翌日、朝の検査でヘルバティアは家に帰れることになった。どうやら異常はなさそうとのことらしい。俺はまだ体が眠っているような状態なのか、もう少し様子見となってしまった。
「療養所の食事って何か今ひとつよね……。」
昼食後に帰宅を許されたヘルバティアが、最後の療養所での食事を前に体を前後屈させながらそんなことを言い出す。
「まあ、ヘルバティアさんはもうここから出られるわけですし。」
俺がそう返すと、
「ニシキさんは、結局明後日の検査次第ということよね。まあ、あんな戦い方してたらそうかもしれないけど……。ねえ、師匠と戦ってどうだったの?。急に動きが洗練されて、最後は思いっきり優位に立っていたような感じの戦いだったけど。」
「うーん、それについては……ノーコメントで。」
俺がヘルバティアの質問にそう答えると、
「何勿体つけちゃって。」
「いや、いろいろ第3者の目で見てみたいところはあるのですけど、俺の頭の中でまだ整理ができていない感じが……。」
意識が半ば飛んでいたような状態でよくあの相手をぶっ叩き、意識が戻ると今までにない感覚があったことについてまだ脳内で整理しきれていないのだから。
「まあ、私は先に戻るわ。しっかり休んでね。」
ヘルバティアにそう言われる。
昼食後、ミアンたちがヘルバティアを迎えにきて、それと同時に俺の様子を見舞いに来るので、上半身を起こし足を伸ばして座っている体勢になる。
「ニシキはん、まあ、無事で何より。」
バンナが俺の見舞いに来て開口一番にそう言い出し、俺の頭の上にふわりと止まる。
「ああ、メムちゃんとバンナちゃんは私がちゃんと面倒をみてますので。ゆっくりして下さい。」
「バンナちゃんは私がずっと面倒みててもいいのですが。」
ミアンとミヤンがそう言って笑いかける。
「ああ、そうですか。メムとバンナはちゃんとやっていますか。俺がいなくても。」
俺が少し安心した気持ちでそう言うと、
「メムはんの様子が少し変な気もしますが……。」
とバンナ。
ベットに飛び乗り俺の耳元に口を寄せてささやくメム。
「違うわよ。戻ってくるのを待っていて少し調子が狂っているだけだからよ。」
俺はメムを撫でながら、
「まあもう少ししたら戻ってくるのですから、いい子で待っててださい。メム様。」
俺がそう言うと
「ねえ、何か変わったのかしら。あのディマックとの戦いで何があったの?。ダンの醸し出す雰囲気が大きく異なっているような感じがするの。」
メムにそう言われて俺は首を傾げながら、
「戻ってきてからいろいろ話をしますから。今ここで説明するにも……。」
「ああ、そうね。」
俺が今後のことを考えながら説得をすると、メムも納得してベットから降りる。
「じゃあ、私は先に帰るから、ちゃんとしていなさいよ。ベットが退屈だからって勝手に外にでちゃダメだから。」
ヘルバティアに何か読まれて釘を刺されたような気もするが、皆が引き上げて俺は一人療養所のベットに横になる。そのまま眠りに入り夕食時に起こされ夕食をとり、入浴を許可されて入浴し体を拭いてさっぱりとしてもう一寝入り。
翌日になるとすっかり体調は元に戻ったようであった。その日の朝の検査でもどうやら回復したようだと言う見立てになり、翌日の朝食後には家に、下宿先に、戻ってよしとの話になる。
そうなると妙に退屈なものである。メムとバンナの面倒を見ながらで3姉妹は忙しいだろうしな。ベットにじっとしてられないのであるが、前世の日本の病院と違い娯楽や暇つぶしになるものがない。全くない。散歩もしたいが、療養所付近を一周しても、家の周りを回っているようなもので大して退屈潰しにもならない。
昼食を食べ終えると、体がむずむずしてきてじっとしてられない気分である。
「ふぅーっ、どうしょうか……。」
ベットに起き上がって胡座をかき、何もしていないのもな。そうだ、診療所の事務室に行って紙と書くものを借りよう。そうしてあの戦闘時の俺の状態を記録しておこう。
そう思って紙と書くものをもらい、あの戦闘を思い出しながら記録しようと思ったところに、
「よう、邪魔するよ。調子はどうだい、孫弟子よ。」
大師匠が見舞いに来たのだった。




