271弾 何故に俺の相手がこれなのだろう?
「では、第3戦。受験者、ニシキ・ダン、こちらへ。対戦者、ディマック・パトアイ、こちらへ。」
立会人の声が響く。
「じゃあ、ちょっと行ってきます。」
俺がそう言って試合場に向かおうとすると、
バシっ、バシっ、バシっ、ボカっ
背中を3姉妹に平手で叩かれ、メムには思いっきり猫パンチを喰らい思わずへたり込む。
「いてぇ……。」
(えー、みんな激励を込めてくれたのに何へたり込んでるのよ。)
(いや、メム様、手加減してくださいよ……。マジで。)
(何、だらしないわね。)
まあそんな会話をしながら試合場に向かう。
立会人のいるところまでゆっくり歩み、深呼吸する。
「よう、孫弟子よ。こんな日が来るとはな。」
とディマックが挑発気味に言ってくる。
「大師匠ならあっさりと降参してくれてもいいのですよ。可愛い弟子と孫弟子のために。」
俺がそう返すと、立会人が
「口を閉じてください。第3戦、この戦いは総合戦方式で行う。では確認する。」
第2戦と同様に立会人のリガダードさんは杖とボディチェックを行う。お互いの杖、俺の場合は拳銃だが、それとボディチェックを終えて異常がないことを確認後、少し首を傾げ
「ニシキ殿、これは……杖なのかな?。」
「ええこれで魔法を発動させます。」
俺は明快に答える。
「ふむ、そうか。」
そう言ってうなずくと、
「では……初めっ!。」
第3戦開始の号令をかけた。
「よう、孫弟子。まさかこんな形でやりあえるとはな。」
いきなりディマックさんがそう話しかける。
「第3戦開始だというのによく話しする余裕ありますね。」
「そう言ってノって来てるじゃないか。なに、総合戦形式だ。言合戦も総合戦に含まれているようなものさ。」
ディマックがニヤリとする。言合戦か、戦国時代の戦の形態の一つであったと学校の授業で習ったことはあったが、要は口喧嘩、もっと砕けて言えばトラッシュトークみたいなものか。
「じゃあ、言合戦で戦いますか。こっちもいい勝負をする自信はありますが、決着がいつ着くかわからなくなりますよ。」
俺もそう言ってニヤリと笑みを返してやると、
「双方、ちゃんと戦え!。」
立会人から注意がかかる。
「さあ、じゃあ、ちょっと孫弟子の力量を観てみるか。」
注意されたからか、そう言ってディマックの表情がガラリと、ニヤついていた表情から能面のように無表情に変わった。
「じゃあ、こちらも。」
俺もそう嘯うそぶいて、一旦間合いをとるべくバックステップで交代するが、そこにつけ込むように一気に間合いを詰めてくる。
え、まさか殴り合いにするつもりか。
「集中。」
『タイムマネジメント』の能力を発動させて、ディマックの動きがスローリーに見えるが、それでもスピードがあるのか……。右のストレートパンチが予想以上に早いのでかわすのは諦めて、ガードに切り替える。
ドガッ
ガードは間に合ったが、もう次の左のジャブが来るのが見える。もっと思いっきり退くしかない。とにかく間合いをとることに専念する。しかしディマックの左ジャブもかなり伸びてくる感じだ。ガードをしながら必死に後退すると、
「よう、そこからどっちに躱すんだ。」
俺は余裕満々のディマックにそう言われる。結構いいパンチだ。ガードしてた両腕がかなり痛い。そんな状況の中でふと考えてしまう。もしや俺は、この『タイムマネジメント』の能力を使いこなしていなかったのか、と。
そう考えて無言になった俺に対して、ディマックが猛攻撃を仕掛ける。蹴りも含めてのコンビネーション攻撃だ。受けるな、打ち返せ。自分自身にそう言い聞かせて思い切ってこちらも左のジャブ、右のボディブロー、屈みぎみに腹部への右肘鉄を喰らわせる。ジャブとボディブローはいなされて不発気味だが肘鉄が腹部にきっちりヒットする。しかし、こっちもキックはガードしたものの数発、頭にパンチを喰らうことに。なんとか強打で喰らわないようにはしたが。
今度はこっちが攻める。そう決意して、踏み込むとカウンターのつもりか、ディマックの左蹴りが腹部に刺すように来るのを敢えて喰らいながら受け止める。
「ウォリャー!。」
すぐに足を掴み、そう叫びながら、ジャイアントスウィングの要領で無我夢中で、壁めがけて放り投げる。と同時にそのままダッシュで一気に間合いを取るためディマックから離れる。
「集中、集中、集中、集中。」
そう呟きながらここで一気にとばかりに拳銃を抜き、なぜか周りの動きが止まってしまったような感覚を覚えながら、一気に魔弾【火炎弾】をぶっ放す。
ドシュドシュドシュドシュドシュドシュ
ドバッドバッドバッドバッドバッドバッ
こっちもディマックに対して奇襲攻撃的に魔法を発動させる。しかし、
「アイスブリッド・ガトリング!。」
の声がして、予想以上に煙が上がる。なぜ?。いや、湯気か。もしかして、これは……。
「いやー、まあ、こんな流れになるかとは思っていたが、結構威力あるな。ファイヤボールの強化版みたいな感じだがな。意外に喰らっちまったよ。」
そう言いながら、ディマックさんが短杖を出した状態でもうもうと上がった湯気の中から姿を現す。
「いやー、すごいですね。」
こうなると俺はそう言うしかない。ダメージは与えたようだが、あの口調が虚勢やハッタリ込みで言っているのかそれとも余裕がまだあるのか全く読めない。
もう一度、
「集中、集中、集中、集中。」
と呟き、ここは一気に魔弾【豪岩弾】を空いた弾倉に6発込めて、一気にぶっ放してやろうとしたが、
「それはやらせないよ。それっ。」
集中力を上げたはずだし、さっきのように周りの動きが、風景が止まってしまったような感覚の中で、ディマックが俺めがけてゆっくり突進してくるように見える。
これは無理だ。直感的にそう判断して拳銃を収納して身を躱す。
拳銃は収納できたが、カウンターも打てないし、ガードで精一杯か。
ディマックの右のミドルキックが、サッカーのボレーシュートのような蹴り方で俺の体目掛けて飛んでくるのでガードするが、ガードごとぶっ潰すような威力に結構なダメージを感じる。
「孫弟子の戦い方の予想はついてるからな。高速かつ連続でその短杖を使い魔法を発動させる。ただその連発数は最大6発。その後魔力とか魔法式を込めるか何かをして再度発動させる。その何かをするタイミングを与えなきゃ、お前は魔法を発動できない。それに、あたいの今の蹴りで腕の力はかなり落ちているから短杖も使いにくくなる。どうだ。」
ディマックがそう解説してくる。しかし表情にイマイチ余裕は感じない。まあこっちも余裕は微塵も無くなっているがな。
「さすが、大師匠です。」
言葉少なくそう返すのが精一杯。
「じゃあ、言っておく。わかっていると思うが、ここからはあたいの一方的な蹂躙になるぞ。降参しろ。」
ディマックがそう言ってくる。
「いやですよ。そんな素直に、大師匠の言うことを聞く孫弟子じゃないことは、もうわかっているくせに何言ってんですか。」
俺が意地悪そうにそう返してみると、
「ハッハ、そうだったな。全く性格の悪い孫弟子に育ったものだ。誰のせいだか。」
と言ってくるので、
「いや、あなたのせいです。というか、やけに話しかけて来ますね。大師匠、ダメージ回復のための休憩ですか。」
と返してあげる。
「ずいぶん言ってくれるじゃないか、このバカ孫弟子が。ハーハッハッハッハ。」
「ハーハッハッハッハ。」
互いに空笑いして、睨み合う。
「集中。」
俺が呟くと同時にディマックは一気に間合いを詰めてパンチのラッシュにかかる。ガードをするが、腕のダメージが蓄積されてガードが下がる。
動きはゆっくり見えているのに捌ききれない。その上、手数も多い。
ドギャッ
ディマックの右フックが俺の顎を捉える。必死でダメージ軽減のためにヘッドスリップでなんとかしてみると同時に吹っ飛ぶことにする。
よし、これで、と思ったが、吹っ飛んだ先を考えてなかった。囲った壁に頭を強かに打ちつけてしまう。意識が遠のいてしまった。




