270弾 第2戦は一気に決めよう?
「第1戦、勝者、ランポー・アールイス。」
立会人の宣告を受けて第1戦は終了する。ヘルバティアは回復ポーションを飲まされて、なんとか起き上がるが担架で運ばれて俺たちのいる場所に戻ってくる。
「ふー、悔しいわね。ニシキさんのアドバイスは効果あったのだけど……。」
心底から悔しそうに呟くヘルバティア。
「ティア姉さん、今は回復に努めて。」
「ええ、次は私たちの番だから。」
ミアンもミヤンも闘志はむしろ燃え上がっているようだ。
「いや、素晴らしい戦いでした。惜しかったと言うべきか。」
ヘルバティアの戦いを見守っていたセイクさんもそう言ってくれる。ただそうは言っても負けは負けなのは事実。
(ねえ、もう後がないのよね。)
(ミアン、ミヤンが負ければ終わりですね。そうなれば俺の出番は無しということですから、むしろそれもありかもしれません。多分、3戦目、俺の相手は、あの大師匠兼組合本部長でしょうから。メム様の動きが妙におかしかったのでそう思っていましたが。)
(何、分かっちゃってたの。でも、なぜノーリアクションなのよ。)
(今ここでそれを言ってどうこうする意味ないですから。それはメム様も同じでしょう。)
念話術でそう会話すると、メムが俺に軽く頭突きを喰らわせそのままヘルバティアの様子を見守るべく彼女の枕元に行き体をすり寄せる。
「ああ、メムちゃーん。慰めてくれるの。ありがとう。」
ヘルバティアにとっては一番の回復薬かもしれない。
「メムはん、ニシキはんに何ぞあったんですか?。」
事情は知らないバンナが俺にそう聞いてくる。
「まあ、これで負けたら俺の第3戦は無いなと言ったんですよ。ちょっと不快な発言だったかもしれません。」
「でもそれは事実ですけどな。まあ、ミヤンはんとミアンはんが取り返してくれますやろな。」
バンナがそう言いながらミヤンのところへふわりと飛んで行く。
「バンナちゃんも応援してね、私の活躍を見てて。」
ミヤンがそう言ってバンナに頬ずりをする。
「ニシキさん、勝って繋ぎますから。」
ミアンが俺にそうささやく。
「では、第2戦。受験者、チャティーア・ミアンとチャティーア・ミヤン、こちらへ。対戦者、アダムズ・メアリとアダムズ・リディア、こちらへ。」
立会人の声が響く。
「へえ、10級に昇格したばかりのアダムズ姉妹ですね。魔法が上手とは聞き及んでますが。」
セイクさんはそう呟く。かなり情報通なのだなあ。
「昇格したばかりですか。」
俺がその呟きに反応する。
そのアダムズ姉妹は外套と覆面を取り去り試合場に向かう。鹿のように締まって細身の体型な姉妹だ。姉が青髪のサイドポニーテイルにしている。妹が青髪をボブカットにしている。身長では双子妹のミアン、ミヤンと同じくらい。スタイルの良さならミアンとミヤンの方が上か。と不謹慎なことを考えながら相手を観察する。
遅れてミアンとミヤンが試合場に向かう。精神集中をしているのか、それとも何かいきなりかまそうとしているのか。2人とも視線を下に落とし気味で試合場に向かう。
「姉妹と双子の対決ですね。どういうことになるのか。」
「魔術使用而已という戦いが、一体どういうふうになるのか教えてくださればありがたいのですが。」
セイクさんが少し興奮気味に言うところに俺が質問する。
「ああ、まあ、魔術限定ですので、主に魔法の発動合戦になりますね。これは長期戦になることもあります。」
セイクさんがそう教えてくれる。
「第2戦、この戦いは魔術使用而已方式で行う。では確認する。」
そう言って、試合場中央に集まったチャティーア姉妹とアダムズ姉妹に対して、第1戦と同様に立会人のリガダードさんは杖とボディチェックを行う。杖とボディチェックを終えて異常がないことを確認後、
「よし、では……初めっ!。」
第2戦が開始される。
アダムス姉妹が一気に後退して間合いをとるが、開始地点に立ち止まったままのミアンとミヤン。
「フローズンケージ!。」
壁際で身構えたアダムズ姉妹に対して、ミヤンがいきなり魔法を発動させる。
「えっ、いきなり大技?。」
驚きの声を上げるヘルバティア。メムもバンナも口をあんぐりとする。
虚をつかれたのかアダムス姉妹は2人とも短杖を上に掲げながら魔法の発動から身を守るように構えるが、そんなものでダメージは防ぎぎれないはずだ。
何か躊躇していたようだが、姉のメアリが氷の檻を破るべく短杖を振りながら、
「フレイムファング!、はーっ、フレイムファング!。はーっ、フレイムファング!。」
フレイムファングの魔法3連発でその檻を破りにかかり、魔法3連発の効果が出たのか、正面のその檻が溶け落ちる。
その瞬間に、ミアンが短杖を掲げて
「フレイムフラワーガーデン!!。」
檻の中を炎の床に変えてしまう。そして間髪を入れずミヤンが短杖を掲げて
「ダークライティングスマッシュ!。」
黒々した大きめの球を生み出して炎に包まれたアダムズ姉妹目掛けて発射する。
「きゃー、これは。」
「ヤバい。降参します。」
とのアダムズ姉妹の声が上がり、
「それまで!。」
立会人が声をかける。
「あー、あっさり勝っちゃいましたね。」
セイクさんが放心したような声でそう言ってくる。
「ええ、勝ちましたね。」
俺がそう相槌を打ちながら、試合場でアダムズ姉妹が炎の中から救出されるのを見ている。魔法の発動が修まるまで少し間が開くが、
「第2戦、勝者、チャティーア・ミアンとチャティーア・ミヤン。」
立会人がミアンとミヤンの勝利を宣言する。負けたアダムズ姉妹は髪が少し焦げてしまっている。
「おめでとうございます。1勝1敗のタイですね。」
セイクさんが戻ってきたミアンとミヤンにそう声をかける。
俺の思った通りというべきか……、ヘルバティアは嬉しさのあまりメムをギュッと強く抱きしめており、メムが苦しそうにヘルバティアへ必死でタップしている。
ミアンが俺の前に立ち、
「ニシキさん、勝って繋ぎましたから。」
と誇らしげに言う。
それを聞いて、俺は、
「じゃあ第3戦ですね。」
そう言うと、遅れて、ヘルバティアにミヤンにメムにバンナが俺を取り囲む。
「じゃあ、サクッと決めちゃいましょ。」
とヘルバティア。
「そうですね、ニシキさんに期待大ですね。」
とミヤン。
「やっちゃいましょう。」
とバンナ。
「相手があの大師匠ですからね。思いっきりやってやりますが。」
と俺。
俺の発言を聞いて3姉妹が
「「「えーーーーっ!!!。」」」
異口同音に驚きながら相手方の方を見る。
3姉妹に見られたことに気が付いたのか、その3人目の相手が覆面を取り、外套を脱ぐと、大師匠兼イチノシティ組合本部長のマックトッシュ・マーグレノア、いや、俺たちにはディマック・パトアイと名乗っている方が姿を現した。
(あの格好だと、大師匠時の名乗りで参戦かしら。)
(まあ、組合本部長時の名乗りだといろいろバレてしまうかもしれませんからね。)
(しかし、3姉妹が驚きまくってるわね……。)
(漫画で言えば目が飛び出て、口が開き、顎が地面まで落ちているような表現ができそうですね。)
(上手いこと言うじゃない。で、どうなの。)
「精神集中の真っ最中にすみません。勝てそうですか、ニシキさん。」
メムとの念話術での会話中に、詫びを入れながら少々誤解した状態でミアンが割って入ってくる感じになるが、
「はぁーーーーーーーっ。まず戦いたくないですよ。正直。」
俺は、大きく大きくため息を吐きながら、はっきりと言う。
「まあ、師匠が参戦してたなんてね……。」
「動揺しちゃうわよ。」
ヘルバティアとミヤンが各々俺の感想にそう反応する。
「ヘルバティアさんもミアンさんもミヤンさんも、もう戦い終わってますから気楽にいてください。まあ、俺はやれることをやるしかないでしょう。」
「で、勝てそうですか。ニシキさん。」
ミアンがまた聞いてくる。
「ああ、その答えは、……分かりません。」
そう答えると、側で俺たちの会話を聞いていたセイクさんが
「あまり見たことも聞いたことのなさそうな方ですが、大丈夫です。ニシキ様なら。気負わずに行けば勝てるかもしれません。」
と少し的外れなコメントをしてくる。
まあ、組合本部長の真の正体を知らないからそう言えるのだろうな。というか、なぜ組合本部職員に対してまで変装して組合本部長でいるのかなあ……。




