262弾 冷静さ欠くこと反省しよう?
「ニシキさんにそんな弱点があるなんて。」
「何か気の毒に思えますね。」
「まあ、空路便に乗らなくても生きていけるからな。」
空路便でデー・イッカホ国王都から2日でこのサンイーカー王国王都につきヘルバティア、ミアン、ミヤンに助けてもらいながら王都の宿に一泊してそのまま眠りこける。
「本当に情けないわ。ダンってこんな男とはね。」
メムがそう言いまくるが
「メムちゃん、言い過ぎはダメよ。あなたも船酔いしてたでしょ。」
ヘルバティアにそう言われ、追い打ちをかけるように
「ホンマにそん通りや。メムはんも言うほど大したことないやん。」
バンナがそう言ってくる。
メムも流石に言い過ぎと思ったか、
「まあ、空路便にダンが慣れればいいのよね。」
と言いすてる。それを耳にしながら、お前は、この元女神猫は船便に慣れてみろ、と心の中で言いながら宿で伏せることになる。
その翌日はドラキャでイチノシティの街に向かう。体調は元どうりに回復した。
「お疲れ様でした。お見事です、皆さん。」
セイクさんが夕刻に組合本部に戻ってきた俺たち華束舞踏を出迎えてくれる。
「さあ、どうぞどうぞ。」
盛大な祝賀はないから、いつも通り受付の場所に行きセイクさんと対面する形になる。
とはいえ、
「いやー、この街から久しぶりに冒険者ランク10級のパーティが出るのかと思うと楽しみですね。あとは、組合本部長及び警備隊総隊長の推薦する者と戦闘で勝つこと、になりますから。それで勝てば10級ですから。」
セイクさん、かなりテンションが上がっている様子である。
「それはいいのですが、この、組合本部長及び警備隊総隊長の推薦する者と戦闘で勝つこと、というのは具体的にはどうすることになるのでしょうか。」
俺がヘビースネークの退治とイダーゴンの葉の採集のクリア後も、浮かない表情をしていたのはこの条件が引っかかっていたからである。
「うーん、このパーティのメンバーが4人。となると、コンビ戦とシングル戦2試合してということになるかと思いますが。」
「ふーん、つまりは。」
「例えば、こちらの双子さんと被推薦者2名で戦い、そしてこちらのリーダーと被推薦者の一対一、そしてニシキ様と被推薦者の一対一という形で3試合を戦って先に2戦を勝つみたいなことになるでしょう。まあ、パーティのメンバー数で変わるので、あくまで、ですが。」
セイクさんが考えながらそう言って推測する。
「へえ、もし最大の9人がメンバーだと。」
「ええ、一対一を9試合行うかと。」
なるほどね、まあ話は分かったが。
「では、こちらの魔石と採集した物はお預かりします。確認後、お返ししますので。」
「はい、では最後の条件を満たす推薦する者との戦闘は。」
ヘルバティアがセイクさんに魔石とイダーゴンの葉を渡してそう聞いてくる。
「申し訳ありません。2条件をクリアするのが予想以上に早くて、被推薦者がまだこっちに来れていないのです。もう10日ほどお待ちください。時期が決まりましたら連絡いたしますので。」
セイクさんがそう言って頭を下げる。
「ティア姉さん、一旦家に戻りましょう。」
ミアンがそう進言する。
「そうね、では家に戻りますので連絡は。」
「ええ、組合本部から使いが行くと思います。」
俺たちはヘルバティア達の家に戻ることにした。
家に戻る途中で夕食を買い、戻って夕食にすると、留守にしていた家を軽く片付けて今日はもう休むことになる。
「ふー、とりあえず2つはクリアしたわけだけど……。」
俺は灌水浴室でのシャワーで、メムとバンナが入浴を終えて、自部屋で一息つく。
「明日は今後の組合本部長、警備隊総隊長の推薦者との戦闘について話し合うことになるらしいけどね。」
メムがそう言いながら、ヘルバティアと一緒に入浴を終えて、先にミヤンとミアンと一緒に入浴を終えたバンナと一緒に自部屋に戻ってくる。
「思い返せば、ヘビースネークとの戦闘は反省点ばかりだったな……。」
思いっきり冷静さを欠いていたからなあ。そう思いながら呟く。
「まあ、メムはんがあんなんなったら、冷静じゃなくなるのじゃないでっか。」
「バンナ様は優しいですね。」
「何、私がドジったみたいじゃない。」
バンナの俺へフォローしてくれる発言で、メムがムッとしてバンナに食ってかかる。
「まあまあ、メム様。でもあの時バンナ様がメム様を拾って飛行してたのがよかったのですから。」
「結果論だけどね。」
メムがそう言い出すが、
「でもウチも咄嗟の判断でメムはんのカバーしたら、急に『上昇しろ、急降下して頭突きを喰らわせて必殺技をお見舞いする。』って言い出して……。」
バンナがメムの行動を教えてくれる。
「もしかして、メム様は、バンナ様に必殺技を見せるつもりでいたとか………。」
「……ええ、そうよ。」
「で、頭突きから必殺技を放つつもりが、頭突きの勢いがありすぎて呑まれた、いや口の中に入っちゃったと。」
「いい、ダンの言い方には誤解があるのを感じさせるわ。そのあとその偶然を咄嗟に応用して、あの口内で必殺技を使うことを思いついたのよ。」
まあ聞いている限りはそうなのかもしれないけど。
「俺が冷静にならなきゃダメだったな。魔弾をあれだけぶっ放したら下手すりゃ無駄撃ちになりかねないからな。」
「本当。冷静になってよね。私が口の中にいるから、まとめて倒そうとか思っていたりしてたのじゃないかしら。」
メムの発言を聞いたバンナがため息をつき、
「結果論を言うんやったら、あのヘビースネークとメムはんを一緒に焼いてしまっても良かったも知れまへんな。そうしたらメムはんの減らず口も少しはマシにはなるやろうかと。」
と言うと、
「ちょっと、バンナ。何、私に含むところがあるのかしら。そう言えば以前、私の必殺技を見たいって言ってたわね。今ここであなたに喰らわせればよっく見ることができるし、おまけに体感もできるわね。」
「へん!、そんなヘボいもん、誰が喰らうか。」
「はいはい、もうこの話は終わりにしましょう。どちらにしても俺が冷静さを欠いたことは反省しなきゃならないから。」
メムとバンナが熱くなるを止めながら、やはり俺自身が反省することばかりだと実感する。
「まあ、反省して次に繋げればいいのよ。ダンにはそれができるから。」
「そんな落ち込まんでもよろしいでっせ。やれることはやったと思いますさかいに。」
先ほどまでの険悪な状況から一転して、メムとバンナが揃って俺を励ましてくれる。
「まあ、今度は警備隊総隊長や組合本部長の推薦者との戦いか……。メム様もバンナ様も加勢はできないようですが。」
「大丈夫よ、ダンなら。」
「いけまっせ、ダンはんなら。」
「そうはいっても俺一人で戦うわけじゃなさそうだからな……。」
「ヘルバティアは大丈夫よ。」
「ミヤンはんも大丈夫でっしゃろ。」
そう会話してふと気付く。組合本部長の推薦者って誰になるのか……。そう思いながらも別のことを口にしてしまう。
「そういえば、ミアンはどうなのかな。ヘルバティアはメム様に、ミヤンはバンナ様にハマっているような感じだけど。」
「言われてみればね。」
「確かに。」
俺がふと口にした疑問に対して、メムにもバンナにも同様の疑問があることが判明する。
「だって、ヘルバティアは私を気に入ってるようだし。」
「ミヤンはんがウチに懸想してはるのは間違いないし。」
バンナの言い方は古式ゆかしい気もするが。
「よし、だったら、やっぱダンをミアンに差し出して、私たちのように扱ってもらう感じにすれば。」
「ああ、なるほどなー、そら結構な考えでんなあ。」
メムとバンナがとんでもないことを言い出すので、拳骨でポカリポカリやっておく。
「いてっ。」
「いたっ。」
「メム様、バンナ様。俺を飼うって何ですか!。一応あなたがたの飼い主ですから。話がややこしくなるでしょう。」
相当効いたようである。
「うう、……そーねー、ダンが誰と結ばれるのか。ドラマティックな展開がしにくくなるでしょうからね。」
「うう、痛い……。ああ、メムはんと少し見てて思いましたわ。ニシキはん、意外にモテるんとちゃいまっか。」
「まあ、でもね、バンナ……。」
「メム様、分かっているのならそれ以上は立ち入らないでください。昔の話に。」
俺はそう言いながら自分の顔から血の気が引くような音を聞く。
「ニシキはん、その……あんさんの居た異世界で何かおましたのか?。」
「まあ、本人はそう思っちゃってるだけなのよ。」
「いや、あれは……、俺が殺したようなものだ……。」
俺はそれだけ言うと、寝床に潜り込む。
「いや、あの、何か、すんません。勝手にニシキはんの内側に土足に上がるような真似して……。」
「まだ、そう思ってるのね。ダンに罪はないのよ。何もそこまで自分を縛らなくても。」
「もういいでしょう。放っておいてください。」
そう言う俺の眼から涙が出てる。なぜだろう、この事でもう感情をも殺したはずなのに。
それを見てメムもバンナも申し訳なさそうに寝床に入り眠りについた。




