260弾 試験の条件クリアしよう
「いやゃーーーーっ。メームちゃーーん。」
ヘルバティアがとんでもない声で悲鳴をあげる。半ば涙声だ。
「今は奴を倒す!!。それだけだ!!。」
背後で動揺して硬直した3姉妹を俺は叱咤激励する。早く倒せば、メムも奴に消化なんてされないだろう。今は一刻も早く、一刻も早く奴をぶっ倒してメムを救い出す。
「うぉおおおおおお。」
俺は獣のように叫んで、手当たり次第に魔弾を装填してぶっ放す。
ドシュドシュドシュドシュドシュドシュ
ドギャドギャドギャドギャドギャドギャ
【剛岩弾】だ。しかし俺も動揺しているせいか全弾が狙った顔面には命中しなかった。二発が長い胴体に当たる。
もう余裕もなく焦りながら魔弾を装填をしてまたぶっ放す。
ドシュドシュドシュドシュドシュドシュ
ドギャドギャドギャドギャドギャドギャ
また【剛岩弾】だ。狙いが外れた。体に当たってしまう。こうなったら。
「バンナ!!。俺を乗せろ!。奴の顔面の前まで連れてけ!。」
叫んでバンナを呼び、背に乗ろうとする。
「ダメよ!!。無茶よ。死ぬつもりなの!!。」
「やめて!!。危険よ!!。」
ミアンとミヤンがそう言いながら俺の背に抱きつき止めようとするが、
「どけっ!!。」
強引に振り解き、バンナの背中に飛び乗る。背中に乗りながら魔弾を装填して、奴を見る。
奴に異変が生じている。動きを止めたまま、まるで硬直したかのように、しかし頭部が妙な揺れかたをする。
………ニャニャニャニャラニャラニャラニャラニャラニャラニャラニャラニャラニャラニャラ
何だ、この声は?。この声を聞いて、俺は何故か冷静さを取り戻す。
「焦りすぎたか。バンナ様、ゆっくり奴に接近してください。」
「はいな。」
奴の顔面付近2マータルくらいに接近するとはっきりと声が聞こえる。
「ニャラニャラニャラニャラニャラニャラニャラニャラニャラニャラニャラニャラニャラニャラニャラニャラニャラニャラニャラニャラニャラニャラニャラニャラニャラニャラニャラニャラニャラニャラニャラァー!。」
叫び声と共にメムが奴の口から飛び出してきた。何やら液体とか破片とかと一緒に。
「メム様!。」
俺が呼びかける。バンナがメムをキャッチすべく急旋回してメムを前足の爪でキャッチする。
「ちょっと!、もう少し優しくしてよ!。」
メムが文句を言う。
バンナが俺とメムを地上に降ろす。
奴を見ると口を開けたままグロッキーになっている。しかしまだ奴の戦闘意欲は衰えていないようだ。眼光は鋭く輝いたままだ。
「メム様、回復に努めてください。バンナ様、俺を奴の顔面の前まで連れていってくれますか。ケリをつけます。」
「はいな。」
再度バンナの背に乗る。カバンからラキーテの入った小さめの樽を出す。実験依頼を思い出したのだ。牽制の意味もこめて魔弾をぶっ放す。【氷結弾】だった。顔面に命中して口内にも命中する。口は開いたままである。メムのおかげだろう。
バンナが接近してくれたので奴の開いた口の中にラキーテを一気に注ぎ込む。空樽は放り捨てる。すると奴が口を開けたままで、のたうち回り出す。
シュァーーー
今度は落ち着いて魔弾【火炎弾】を装填する。そしてバンナの背に乗りながら奴の開いた口の中を、口の奥を狙って魔弾をぶっ放す。
ドシュドシュドシュドシュドシュドシュ
ドバッドバッドバッドバッドバッドバッ
口の中から火が燃えてできたような光が発生して、肉の焦げる匂いがして、奴はどさりと倒れてそのまま動かなくなる。
魔弾【火炎弾】を装填しながら飛行するバンナの背から奴の状態を見守る。動きは全くない。もう一匹も見てみる。いい感じでこんがり黒焦げとなっていた。
「よし、降りましょう。」
バンナに指示して地上に降りる。
「ヘビースネーク2匹退治完了、ですね、リーダー。」
「ああ、よかったわ……。」
メムの毛に付着した汚れを拭いてあげながらヘルバティアがほっとした表情になる。
「本当、どうなることかと。」
ミアンが俺を見ながら言ってくる。
「バンナちゃん、はい、携帯食糧で。」
「ああ、ほなら。また元の節約モード体型で。」
バンナに携帯食糧を渡そうとするミヤンとそれを見ながら元の節約モード体型に戻るバンナ。
「あとは、急ぎイダーゴンの葉を収集しましょう。バンナ様は食後にまた警戒を。」
俺がそう言い2匹のヘビースネークを見て続けて、
「それと、こいつらから魔石を回収しましょうか。」
倒した2匹のヘビースネークから魔石を回収にかかる。
「しかし、こいつがデカかったのは2つ持ちだったのか……。」
「まあ、よく倒したわね。私自身で私に感心しちゃうわ。」
合計で3個のバレーボール大くらいの大きさの魔石が手に入る。これは退治の証拠となるが、あとはイダーゴンの葉を収集して、街に戻ってか……。
「でも、メム様が飲み込まれた時は焦りました……。」
「いやー、頭突きを喰らわせた後の反動だとはいえ、ああなるとは思っていなかったのよね。」
「そうですか。よく無事に口の中から出れましたね。」
カバンに魔石を入れながらメムと話をして感心する。
「ええ、私も咄嗟の判断でここで必殺技を放てばいけるかもって思ってね。」
「じゃあ、あの声は必殺技を出していたのですね。」
「もうちょっと早く必殺技を出したかったのだけど、ズドンズドン衝撃があってね。体勢がうまく取りにくかったの。」
「へー、焦って魔弾を撃ちまくったからですね。呑まれたので急いで倒そうと思いまして。」
そう言いながら周辺の警戒は怠らないようにする。
「ダンがそう言うのは納得だわ。逆の立場であったら私もそう判断するわ。速攻で倒して救出すればなんとかなると思うわよ、普通。」
「まあ、メム様も今回はすごかったですね。まるで一寸法師が鬼に呑み込まれて体内で針の剣を振り回して倒すみたいなものですから。」
「でも、あのヘビースネーク、カルシウム不足かしら。歯、牙、どっちにしても私の必殺技でぶっ壊してやったからね。」
まあ、あの必殺技が口内もしくは喉や食道内で炸裂したら、肉体的にも精神的にもきついものはあるだろうな。
そう思いながら2匹のヘビースネークの死体を見回り、3姉妹の採集作業を進められるように周りの警戒は怠らないようにする。
「異常はないですか。」
「大丈夫よ、何も敵らしきもの感知しないわよ。ああ、ついでに、その牙持って帰りましょう。」
メムが叩き折ったヘビースネークの牙を右前脚でパンパンと叩きながら俺にそうねだる。
「まあいいですよ。メム様の戦果ですから。」
そう言いながら、その折れたとはいえ長い1.5マータルほどの長さがある牙をカバンにしまう。牙はするりとカバンに収まる。
「え、今のは何ですか。」
背後からミアンの声がして、
「そのカバンは、もしかして……。」
そう言いながら少し驚いた表情をする。
「ああ、これですか。しかし、ミアンさん。何かあったのですか。」
「あ、そうでした。イダーゴンの葉を所定数以上は収集したので、一旦この現場から引き上げます。それを伝えにきたのです。」
直接、街に戻るには夜遅くになりそうだということで、近くにある村へ向かうことになる。村の宿に一泊し、村人に試験従事証明書と大型のヘビースネークの話をすると目を白黒させる。翌日には村人の一部が俺たちと一緒に現場を確認しに行くことになり、案内する。その後、俺たちはその現場からラムノシティの街へと戻っていき、昼過ぎに街に着いたのだった。
街に着いたその足で、まず組合本部に向かい、イダーゴンの葉の重さを測り、16カログラムあることを確認する。収集の方はもちろんクリア。それと狂獣2体退治の証拠として、ヘビースネーク2匹を倒して得られた魔石3個を示すと、最初は信じてもらえなかったが、1匹が報告の上がった大型種のヘビースネークということで、そこから魔石が2個出たことも納得してもらい、証拠上からもクリアとなる。
「ツカイドリでイチノシティの街の組合本部には先に一報しておきます。いやはや、一気に倒してしまわれるとは。」
そうラムノシティの街の組合本部の職員が感嘆込みで話すのを聞きながら、ヘルバティアが、
「わかりました、一報お願いします。」
少し得意満面の表情で答えたのだった。




