258弾 情報の偏り認めよう
夕食をさっさと終えてまた再び作戦会議を続ける。
現場で微調整はするが、基本は3姉妹でイダーゴンの葉を採集してその間は俺とメムとバンナが見張りをして警戒すること、ヘビースネークを感知したらすぐに戦闘態勢に入る、距離がある場合はバンナが通常モード体型で対応することを確認して、作戦会議を終えて、翌朝からロトトロ山地に移動することになる。
「ダン、キリキリ唄わなかったわね。」
メムが部屋に入るなり俺に文句を言ってくる。
「何を唄えって言うのですか。」
「何、心配性なの。いろいろ考え過ぎて意見が出てなかったのじゃない。大丈夫よ、本当にダンに一曲唄わせるわけないじゃない。バフロッグの時に十分わかったから。あのひどい迷曲。」
思い出したくないものをえぐり出しに行くメム。
「え、そんなひどいんでっか。ニシキはんの唄声って。」
「そうね、聞いてみればわかるわよ。じゃあダン、バンナに一曲聞かせてやって。」
「いえいえ、今そんな話をする時じゃないでしょうが。」
話が大外にずれてしまっている。
「ふぅー、いえ、ここまで来たら実際は出たとこ勝負になるのだろうけどなと。どうやって、そのヘビースネークに対処して倒すか、いかに被害を抑えて倒していくかを考えてみたのですが、それであの作戦会議中もずっとそのことを考えていて……。」
「真面目ね。」
「真面目でんなあ。」
メムとバンナが次々にそう言い出す。
「そう言われてもですよ、潜伏して奇襲をかけるのが得意。奇襲といっても、2パターンあり、いきなり魔法を発動させて攻撃するか、一人に襲いかかり体を締め上げる攻撃をする。それに今回得た情報だと、大型化したヘビースネークがいるし。これ2匹や3匹まとめて相手となるとどうするんだ、って頭抱えますからね。」
「なーに言ってんのよ。この私がいるじゃない。必殺技を喰らわせてやるわよ、ラッシュコンボ・テンペストを。だから大舟に乗ったつもりで。」
「で、全力でその必殺技を3連発で連続で3匹のヘビースネークに発動できますか?。」
「ま、まあ、そこはノリと勢いと気合と根性でなんとかするわ……。」
俺の問いにメムが目を白黒させて答える。こりゃ大舟ところか泥舟な気もするが。
「大丈夫でっせ、ウチもいますさかいに。」
「あんまりバンナ様を巻き込みたくはないのだけど。」
「正直、このメムはんを見てると、うちでもなんとかなりそうな気もしますんで。」
「ちょっと、それはどういうことかしら。」
「そりゃ、言ったとおりのままでんな。気合いや根性言うてる時点であきませんやろ。」
「ちょっとはいい子かと思ったけど、やっぱり、今あなたとケリつけたほうがいいわね。」
「ふん、アンタの命日にしたるわ。」
おいおいおい、なんでこうなる。
「はいはいはい、わかったので、わかりました。バンナ様。でしたら、バンナ様にも戦いに参加してもらいます。」
こんなところでメムとやり合うくらいなら戦ってもらった方がいいか。
「ただし、一つ任務というか仕事を。戦闘中にも偵察をしてくれますか。」
「え、さっき言うたんと違うことになってまへんか?。」
バンナが矛盾を指摘し、メムがギロリと俺を睨みつける。
「いや、メム様の力は俺もよく知っています。でも戦闘中になればメム様の感知能力は落ちてしまうこともあるので、その状況になればバンナ様の上空偵察で戦闘中に接近する敵を監視してくれればなと考えてまして。」
「あー、なるほどね。ダンがそう言うのも納得ね。あのキャッチミーイフユーキャンの時か。」
メムは、特訓所での特訓で一時的に感知能力が落ちていたことを思い出したようで、納得はしてくれる。
「戦闘中にも警戒することができれば、なんとかなるかもしれませんから、そういう意味でバンナ様の力を借りることになるのですが。」
「じゃあ、状況によっては、その加勢に来るような敵を、ウチで相手してやってもよろしいでんな。」
「う、うーん。まあ危なくなったら逃げるなり何なりしてください。」
これは、なんとなくバンナにも言いくるめられた気がするが。ここまで言われてもはやダメとは言えないしな。
「じゃあ、私とバンナの役割は、まず、ダンと一緒に警戒する。敵が、この場合はヘビースネークが出たら私とダンで時間稼ぎの戦いをして3姉妹に加勢してもらう。その時にはバンナに他に敵が来ないか警戒してもらう。他の敵が来たらバンナは敵をあしらう。まあそういうことね。」
「メムはん、あしらうと言うよりは、ウチが単騎で遅滞戦闘を行うと言ってくれた方が……。」
メムのまとめ方にバンナが少々の不満をもらす。
「いいじゃない、そこは別に。で、ダンとしてはこのまとめ方で不満はないでしょ。」
「……あとは状況に応じてやるしかないか……。」
本当にどうなるかはわからないし、想定外があるかもしれない。
「ところで、イダーゴンの葉ってどんな感じのものかしらね。」
メムがそう言うのを聞いて俺はあることに気づいた。そのイダーゴンの葉について何も情報を得ようとしてなかったことに。
「ああ。あれは棘付きの大きな平たい厚ぼったい葉でんな。ヒューマーが採集する時は、まず葉についてる棘を落としてますな。ただウチも上空から見ただけなんで。」
バンナがそう言ってくれるが、俺は表情を硬直させたままになる。
「ねえ、ダン。なぜか表情が強張ってるけど……どうしたの?。」
「いや、あの、うーん……。」
「まさか、ここに来て、ぎっくり腰とか。」
「違います。イダーゴンの情報全く調べてなかったなあ、と。はっ。」
多分これは俺が不覚をとったな。言ってからそう気づくがもう遅いようだった。
「ふーん、ふーん……。イダーゴンの葉については何も調べていないし情報も集めていなかった、ということね。やーい、やーい、下手こいてる、下手こいてる。」
メムがしてやったりという表情と勝ち誇った態度で、俺に対してものすごい上から目線に急変する。
「まあ、仕方ないですよ。ヘビースネークのことを考えていたものですから。戦闘について考え込んでいてそっちの、イダーゴンの葉について考えることがなかっただけですから。」
俺の必死の言い訳も、
「へえー、そーなんだー、ふーん。えーここは素直に過ちを認めたら。もう、ちゃんとしてよね。そんなんじゃねー。」
メムのここぞとばかりの猛攻にさらされる。そして、バンナが申し訳なさそうに俺をチラリと見る。メムを抑えるのは無理と言いたそうである。さらに調子に乗るメムは、
「もー。ダンが黙っちゃって。そうでしょう、そうでしょう。完全に忘れ去っていたのね、イダーゴンの葉について考えが及ばなかったのね。本当戦闘バカなんだから。じゃあ私がイダーゴンの葉について知らなくて、ダンの集める情報を当てにしていても何の問題もないわね。……あれ、あれれ?。」
「もしかして……メム様もヘビースネークとの戦闘の方に気が向いていて、イダーゴンの情報は全く興味なかった、ということですよね。」
「メムはん、……ひどいでんな……。」
メムが調子に乗り過ぎてしまって口走った一言がブーメランのように刺さることになる。
「いや、いや。違うのよ。まあ、ダンの情報収集力とかを当てにしてたから、さっきああ言っちゃっただけよ。別に日頃の恨みつらみとかじゃないわよ。あれよ、恨みはないわよ。ダンに。」
「でも、つらみはあるってことかいな。」
バンナが冷静にメムにツッコミを入れる。
「まあ、いいですよ。もう。俺も情報収集に偏りがあったのは認めますから。」
そう言うとメムが全身を硬直させて、
「え、ダン。何か悪いものでも食べたのかしら。それとも……。」
「イダーゴンの葉については3姉妹から聞けばいいですし、元々採集は彼女たちがやることで話はしているのですから。」
俺がそう指摘すると、メムの表情がさらに強張る。
「まあ、明日からロトトロ山地に向かうのですからしっかり休みましょう。」
「はいな。」
「はーい……。」
メムの返事は重かった。




